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鈍色の封剣士  作者: 沙菩天介
第五章 審判の偽炎
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第三話 黒い雷

「殺し屋…だと」


 目の前で微笑を浮かべる男に、ディルセイは動揺を隠せなかった。


 男は少年のような背丈で、小学生といったところだ。

 しかし彼の瞳は鋭く、まるで何度も修羅場を潜り抜けてきたような目をしている。

 黒いローブを着用していて、胸元からYシャツと青いネクタイが見えていた。


 なぜこの男に自分の正体がバレているのか、ディルセイは不思議でならなかった。

 そして何より、背後にいる友人への疑念が最大まで高まっていた。


「ルフ…お前さん、俺を嵌めやがったのか?」


 だとすれば、今まで異常に上層部の対応が早かったのも理解できる。

 殺し屋のディルセイが見つかったと言うことでわざとルフを会わせ、上層部の本部まで連れてきた。

 そして万が一暴れてもいいように、戦闘部員で無力化しようという作戦なのだろう。


 しかしディルセイの言葉にルフは口元を緩めると、やがて男に言った。


「グレイ、そんな勘違いされるような言葉を言うのはやめてくれ」


「すまないな、そんなつもりは無かったんだ」


 見た目に反して大人びた口調でグレイと呼ばれた男が謝罪した。


「僕たちは本気で人員の数に困っていたんだ。別に君をはめようなんて事はしないさ」


 呆気に取られるディルセイに、ルフは説明した。


「実は僕たち2人で、大体の事件は解決できたんだ」


「じゃあ、なんで人員に困ってんだ?」


「脱獄犯だよ」


 唐突に声のトーンを落としたルフに、ディルセイは息を呑んだ。


 脱獄、それは重大な罪だ。それを防ぐために、ほとんどの場合が死刑になる政策になっている。


 だがそれでも脱獄をしてしまう人間はいる。


 なぜなら、自分の力に自信があるからだ。

 当然高い戦闘力を持っているので、いくら戦闘部でも苦戦することだろう。

 そのため、他の仕事に回す手がなくなってしまうのだ。


「分かるかいディルセイ、僕たちが欲しがっていたのは『殺し専門の戦闘部』なんだ」


「殺し専門…」


 危険な脱獄犯を野放しにしておくわけにはいかない。

 だから一刻も早く捕まえるか、殺すかしなければならない。

 その点を考えると、確かに殺し専門の戦闘部は必要だ。


「それじゃあ早速お前の特技を見せてもらおうか」


「了解だ、どうすりゃいい?」


「まあまずは待て、今捜査部が頑張って探してるから…」


 グレイがそこまで言いかけると…


 《…戦闘部いる?たった今脱獄犯を発見したっぽい》


 気怠げな声がスピーカーから流れてきた。

 その声を聞いた瞬間2人とも立ち上がり、スピーカーの音を上げた。


「場所は?」


 《中央区第四通りの交差点、あの赤信号めっちゃ長いとこ》


「分かった、すぐに向かわせる」


 グレイはそう言うと、ディルセイの方を見た。


「仕事だぞディルセイ、ルフも一緒に行かせるから、こいつに特技を見せてやれ」


「おいおい早速実戦かよ…変わった試験だな」


 だがまあいい、その方がディルセイも慣れている。

 今まで強大な力を持つ人間を殺したことは何度もある。


 ディルセイは早速バイクに跨り、ルフを後部座席に座らせた。

 そしてヘルメットを彼に渡すと、ディルセイは猛スピードで道路を駆けて行った。



 ※



「犯人はどうやら武装型の機械を身につけているらしい。今のところまだ捜査部が包囲してくれているが、長くは持たないだろうね」


 近くにあったビルの外階段を駆け上りながら、ルフは現在の状況を伝えた。


 武装型の機械とはまた変わったものを出してきた。

 脱獄犯が自分で作ったのだろうか、物好きもいるものだ。


「それにしても、なぜ君はビルを上っているんだい?この上に犯人はいないよ」


「馬鹿野郎、いい加減気付け」


 ディルセイは先程バイクから取り出したギターケースを背負いながら言った。


「俺が音楽で犯人を殺すとでも?」


 やがて屋上にたどり着き、ディルセイは交差点に目を凝らした。

 確かにいる。武装した男性が物凄いスピードで捜査部の人間を薙ぎ倒しているのが見える。


「まさかとは思うがディルセイ、君もしかしてこの距離から…」


「そのまさかさ、俺はこの四年間ずっとこれを続けてきたんだぜ」


 そう言い、ディルセイはギターケースを開いた。

 中に入っているのは、太陽を反射して輝く鋼の狙撃銃スナイパーライフルだ。


 交差点までの距離は少なくとも2キロはある。

 この距離からディルセイは狙撃を行うつもりなのだ。


「当たるのかい?」


「まあ黙って見てろや」


 ディルセイはゆっくり銃を構え、スコープを覗いた。



 ※



「戦闘部はまだ来ないのか!」


 捜査部の巡査は苛立ちを感じているのか、交差点付近に停めたパトカーの中でで戦況を眺めながら貧乏ゆすりをしていた。


 今回の脱獄犯も相変わらず化け物だ。

 彼の纏うアーマーは、拳銃の弾を跳ね返す。

 おかげでまともに手出しができない状態だ。


 先ほどから犯人を拘束しようと頑張っているが、奴の間合いに入った途端に数メートルも吹き飛ばされてしまう。


「早くしてくれグレイ…」


 歯軋りをしながら脱獄犯を見やると、脱獄犯はどこか遠くの方を見つめて顔を顰めていた。

 巡査もその方向を見てみると、遥か遠くのビルの屋上に人影があった。


「まさか、あそこから狙撃するつもりか?」


 脱獄犯もそれに気づいたのか、やがて超スピードで捜査部を蹴散らし、慌てて走り出した。


「まずい、逃げられるぞ!」


 犯人のスピードは凄まじく、とてもパトカーで追いつけそうにはない。

 それに不規則な動きをしているので、屋上の狙撃手も流石に奴を撃ち抜くことは出来まい。


 そう思っていた。

 黒い雷が、脱獄犯の頭に直撃するまでは。

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