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鈍色の封剣士  作者: 沙菩天介
第五章 審判の偽炎
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第一話 空中都市トアペトラ

 トアペトラは、ドーナツ状の貯水池を境に二つの地区に分かれている。


 高層ビルやマンション、住宅地などが密集する中心区は、巨大な貯水池に囲まれた大都市だ。

 多くの若者が中心区で暮らすことに憧れ、田舎でも学校を卒業したら真っ先に移住してくる。


 そして会社も無数に存在するので、仕事も探せばすぐに見つかる。

 住み込みの仕事も少なくはない、そのためホームレスは都会には存在しない。


 逆に貯水池から外された田舎では、都会ほど職業がない。

 地域の店や工場、学校の教師などだ。

 大都市では警察による完璧な治安維持が行われているため、ヤクザの大半は田舎にいるらしい。


 その中心部、巨大な貯水池に囲まれた大都市のうちの一つの高速道路で、タクシーが走っていた。

 高速道路は、都市と田舎のそれぞれにあるものと、都市と田舎をつなぐものがある。

 今タクシーが走っているのは、都市と田舎をつなぐ方の高速道路だ。


 そしてそのタクシーの中で、黒目黒髪の青年が頬杖をついて窓の外を眺めていた。

 かつてジンの前に現れ、馬車を貸してくれた青年だ。


 名はディルセイ・テロード、彼はウエラルドでとある調査を二年間続け、トアペトラに帰ってきたところだ。


「懐かしのトアペトラ!やっと帰ってきたぜ!」


 拳を掲げるディルセイの嬉しそうな声に、タクシーの運転手は笑った。

 それと同時に、少し疑問を抱いたような顔をした。


「戦闘部だったんですよね、犯人の調査をするのは捜査部の仕事だとは思うんですが…」


「ああ、今回は上は当てにならないってえのがルフの考えでよ。俺たちの独断での捜査だ」


 今回得た情報は、今後のトアペトラの運命を左右する鍵になる。

 来るべき決戦に向けて、仲間達は準備をしてくれていることだろう。


(それにしても、ほんと忙しかったよなあ…。ルフ)


 そんなことを考えながら、ディルセイは二年前の事に思いを馳せた。



 ※



 早朝、いつものように飯を食い、歯を磨いている途中のことだった。


 《『殺し屋』という職業が判明し、昨晩それらを仕切っていた人物が逮捕されました。バーク・イーグル容疑者は…》


「はあああああ!?何やっちゃってんのあの親父!?」


 とある男が逮捕されたニュースを見て、ディルセイは頭を掻いて発狂した。

 彼は小さなアパートに住んでいるので、彼の一声のおかげで遅刻を免れた人物もいることだろう。

 まあ大半の住人は迷惑がっているだろうが。


「クソッ!これからどうするよ!」


 バーク・イーグル、3人ほどの殺し屋の依頼と給料の管理をしていた人物だ。

 何故ディルセイがそのことに頭を悩ませているのか、答えは簡単。


 ディルセイ・テロードは殺し屋だ。

 16歳で高校を卒業してから四年間、ずっとそれで飯を食ってきた。


 しかしそんな生活も今日で終わり。これからはちゃんとした仕事につき、日光の下で暮らさなくてはならない。

 それも、元殺し屋だと言うことがバレたら終わりの生活だ。


「仕方ねえ、まずは中心区に行くか。あそこなら仕事くらい大量に落っこちてるべ」


 そのためには引っ越しの準備をしなくては。

 万が一の時のために、貯金は大量にある。殺し屋をやっていたのだからかなりの大金だ。


「これくらいあればマンションくらい住めるよな。流石に1人で戸建て買うってのは気が引けるし」


 そうと決まれば中心区へ一走りだ。

 今のうちに住む場所を確保し、早々に仕事探しに取り組まなければ。


 早速ディルセイはアパートを飛び出し、バイクにまたがった。



 ※



 何日か経ち、ディルセイは無事にマンションを手に入れた。

 しかし職業が見つからない。性に合うものがないのだ。


「なんせ殺し屋なんかやってりゃよ…事務なんかできる訳ねえ。やっぱ田舎で工場にでも行っとくべきだったかな…でも田舎じゃ満足に給料も…」


 ぶつぶつと呟きながら、ディルセイは喫茶店に入っていった。

 腹が減ったので、ここで適当に時間を潰しつつ、パソコンで職業を調べようと思ったのだ。


「そういやここ、学生の頃よく来てたな」


 学生の頃は、姉1人と弟3人の姉弟とよくつるんでいた(弟と言っているが、次男とディルセイは同い年)。

 この喫茶店でバカみたいに騒ぎ、帰りは自販機の前で暇を潰した。皆家に帰りたくないのは同じらしい。

 弟のうち2人はバイクを持っていなかったので、1人をディルセイのバイクに乗せて走り回った。


 今となっては迷惑でしかない行為に、ディルセイは苦笑した。

 それでもあの頃は楽しかった。特に一緒にバイクに乗った三男は仲が良かったのを思い出す。


「おや、その後ろ姿はディルセイかい?」


 不意に背後から声がかかった。

 ディルセイが振り向くと、そこには爽やかな笑みを浮かべた美青年が佇んでいた。


 年齢はディルセイと同じくらい。金髪で燃えるような山吹色の目をしている。

 着用しているのはYシャツに灰色のベスト、そして襟元が毛皮で出来ているベージュのコートだ。


 そして彼には見覚えがあった。


「お…お前さん」


「久しぶりだねディルセイ」


 一番仲の良かった三男、ルフ・ウィアン・マンセルがそこにいた。

《キャラクター紹介》


○ディルセイ・テロード

トアペトラに住む黒目黒髪の青年。

元殺し屋で、仕事を探している途中。


○ルフ・ウィアン・マンセル

金髪で山吹色の目をした青年。

学生時代のディルセイの親友。

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