幕間 信頼と疑念
満足いくまで嘔吐をした後、ジンたちはリビングのテーブルに集まった。
しかしラーナとティリアはしばらく安静にしておく必要があるので、今はいない。
集まった理由は、世界のカケラを手に入れたので、今後の方針について一応話し合っておくことになったからだ。
それに今回新しく判明したこともあるだろう。
「まずカケラについてだが、前回と同じく最下層の保管庫に入れておく」
「保管庫?そんなのあるのか?」
「ああ、国王がカケラのために用意した」
ジンの質問に答えると、エルドはフィクスを見た。
「異能が発現したらしいな。今のところ分かっている効果を教えてくれ」
それを聞いて、一同は苦笑した。
ガイナルとローズのように、異能の効果を隠しているメンバーもいるのだ。その中で手の内を明かすというのは不公平である。
それを感じ取ったのか、エルドはため息をついた。
「どうやら明かしたくないようだな。まだ覚醒を残したヒーロー気取りかは知らんが」
「兄貴だって、まだ明かしてねえじゃねえか」
「俺はお前たちがいつ裏切ってもいいようにしているだけだ」
エルドはそっけなくそういうと、カケラを手に持った。
「それでは引き続きレクトは魔窟の調査、それ以外のメンバーは前と同じ役割でガイナルの手伝いだ」
「了解」
これで、会議は解散となった。
※
「でもさ、ぶっちゃけお前らが異能隠してる理由ってなんなん?」
ウァルスがガイナルとローズに聞いた。
確かにそれはジンも気になる。
ホルスとレクトは流れで異能が判明したが、この2人の異能は分かっていない。
それを隠す理由なんて、気にならないはずがない。
「わ…私はただ言うタイミングがなかったってだけです…」
異能士団全員の視線にびっくりしたのか、ローズは慌てながら答えた。
なるほど、確かにローズの異能について聞いたことはなかった。
彼女が自分から異能を言う性格ではないため、当たり前と言えば当たり前なのかもしれない。
「俺は、団長と同じだ」
不意に放たれたガイナルの言葉に、皆しんとしてしまった。
つまり彼は、この中の誰が裏切ってもいいようにと秘密にしているらしい。
「こいつの異能は俺とエルドしか知らねえもんな。そりゃ誰が裏切っても安全だわ」
呑気に笑うウァルスに対して、クロスは怒りをあらわにして言った。
「もしかして互いのことを信用してないんですか?」
「え?いやいや、万が一のためだろ?な?」
ウァルスが慌てて首を横に振るが、ガイナルの首は動かない。
そんな彼を、ジンは責めることが出来なかった。
何故ならジン自身、異能士団を信用していないからだ。
ヴァルタイユの復讐を邪魔する者がいれば、躊躇なく始末するつもりである。
「まあまあ、考え方は人それぞれだし。時間をかけて打ち解けていけばいいよ」
フィクスがその場を宥めようとしたが、周りの空気は重いままだった。
※
「どこ行くつもりだよ」
馬に乗っているエルドに、ウァルスは言った。
この男は大体本部で訓練をしている。
だから外出をするというのが珍しいのだ。
「トアペトラに用がある」
「はは、まさか旅行にでも行くわけじゃないよなあ?」
「…ふん、馬鹿なことを言うな」
そう言うと、エルドは街のど真ん中を馬で疾走し始めた。
全く相変わらず自己中な剣聖様だ。
しかしトアペトラとは、一体何の用があるのだろうか。
あの国は中に浮いているため、魔窟があるとは考えにくい。
「もしかしたら異能者でもいたのかもな」
可能性はなくはない。
とりあえずエルドが帰ってくるまで、幹部であるウァルスとガイナルが彼の仕事をしよう。
「あれ、あいつ何やってたっけ」
何も仕事をしていない団長の怠惰っぷりに、改めて嘆息するウァルスであった。




