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鈍色の封剣士  作者: 沙菩天介
第四章 異能士団
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幕間 信頼と疑念

 満足いくまで嘔吐をした後、ジンたちはリビングのテーブルに集まった。

 しかしラーナとティリアはしばらく安静にしておく必要があるので、今はいない。


 集まった理由は、世界のカケラを手に入れたので、今後の方針について一応話し合っておくことになったからだ。

 それに今回新しく判明したこともあるだろう。


「まずカケラについてだが、前回と同じく最下層の保管庫に入れておく」


「保管庫?そんなのあるのか?」


「ああ、国王がカケラのために用意した」


 ジンの質問に答えると、エルドはフィクスを見た。


「異能が発現したらしいな。今のところ分かっている効果を教えてくれ」


 それを聞いて、一同は苦笑した。

 ガイナルとローズのように、異能の効果を隠しているメンバーもいるのだ。その中で手の内を明かすというのは不公平である。


 それを感じ取ったのか、エルドはため息をついた。


「どうやら明かしたくないようだな。まだ覚醒を残したヒーロー気取りかは知らんが」


「兄貴だって、まだ明かしてねえじゃねえか」


「俺はお前たちがいつ裏切ってもいいようにしているだけだ」


 エルドはそっけなくそういうと、カケラを手に持った。


「それでは引き続きレクトは魔窟の調査、それ以外のメンバーは前と同じ役割でガイナルの手伝いだ」


「了解」


 これで、会議は解散となった。



 ※



「でもさ、ぶっちゃけお前らが異能隠してる理由ってなんなん?」


 ウァルスがガイナルとローズに聞いた。


 確かにそれはジンも気になる。

 ホルスとレクトは流れで異能が判明したが、この2人の異能は分かっていない。


 それを隠す理由なんて、気にならないはずがない。


「わ…私はただ言うタイミングがなかったってだけです…」


 異能士団全員の視線にびっくりしたのか、ローズは慌てながら答えた。

 なるほど、確かにローズの異能について聞いたことはなかった。

 彼女が自分から異能を言う性格ではないため、当たり前と言えば当たり前なのかもしれない。


「俺は、団長と同じだ」


 不意に放たれたガイナルの言葉に、皆しんとしてしまった。

 つまり彼は、この中の誰が裏切ってもいいようにと秘密にしているらしい。


「こいつの異能は俺とエルドしか知らねえもんな。そりゃ誰が裏切っても安全だわ」


 呑気に笑うウァルスに対して、クロスは怒りをあらわにして言った。


「もしかして互いのことを信用してないんですか?」


「え?いやいや、万が一のためだろ?な?」


 ウァルスが慌てて首を横に振るが、ガイナルの首は動かない。

 そんな彼を、ジンは責めることが出来なかった。


 何故ならジン自身、異能士団を信用していないからだ。

 ヴァルタイユの復讐を邪魔する者がいれば、躊躇なく始末するつもりである。


「まあまあ、考え方は人それぞれだし。時間をかけて打ち解けていけばいいよ」


 フィクスがその場を宥めようとしたが、周りの空気は重いままだった。



 ※



「どこ行くつもりだよ」


 馬に乗っているエルドに、ウァルスは言った。


 この男は大体本部で訓練をしている。

 だから外出をするというのが珍しいのだ。


「トアペトラに用がある」


「はは、まさか旅行にでも行くわけじゃないよなあ?」


「…ふん、馬鹿なことを言うな」


 そう言うと、エルドは街のど真ん中を馬で疾走し始めた。

 全く相変わらず自己中な剣聖様だ。


 しかしトアペトラとは、一体何の用があるのだろうか。

 あの国は中に浮いているため、魔窟があるとは考えにくい。


「もしかしたら異能者でもいたのかもな」


 可能性はなくはない。

 とりあえずエルドが帰ってくるまで、幹部であるウァルスとガイナルが彼の仕事をしよう。


「あれ、あいつ何やってたっけ」


 何も仕事をしていない団長の怠惰っぷりに、改めて嘆息するウァルスであった。

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