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鈍色の封剣士  作者: 沙菩天介
第四章 異能士団
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第十二話 強襲

 熱い、まるで自分の体が炎でできているかのようだ。

 いや、本当に炎で出来ているのだろう。自分の手を見ればわかる。


 熱さが身体中に染み渡るが、それでも頭は冴え切っていた。

 まだ構えていないのに、まるで構えている時のような感覚。


「『ダーク』」


 紳士服が放った魔法がラーナに向かって飛んできた。

 あれを交わさなければ追撃が来る。しかも交わしたとして追撃は防げない。


 だが、今のラーナにはその全てを見切れるほどの集中力がある。


「『陽炎プロミネンス』」


 身体中の炎が刃へと姿を変え、飛来した闇の球を切り刻んだ。

 そして追撃を行なった剣士の首をも落としてしまった。


 その繊細な刃の動きは全て、この数年でラーナが鍛え上げてきたカウンターの集中力によるものだ。

 常時集中力が高くなるのならば、カウンター後の隙もなくなる。

 まさにラーナのための力だ。


 そういえば、異能士団本部にあった異能の本で、炎を纏った人間の絵を見たことがある。

 確かその番号は18、これは『太陽』の異能だ。


「『太陽』…この国の王族の異能にぴったりじゃない」


 剣型『純炎』のことを考えて不敵に笑うと、ラーナはもう1人の紳士服に襲いかかった。


 彼はラーナの攻撃を防ぎ、反撃と言わんばかりに剣を薙いだ。

 それも全てカウンターの範囲内、ラーナの『陽炎プロミネンス』が襲いかかる。


 まさにカウンターの極致、ラーナが相手にしていた2人の剣士は瞬く間に倒れた。


「やりましたね!」


 ティリアもどうにか倒したらしく、ガッツポーズをしてみせた。

 ラーナも胸に手を当て、先程の声に感謝した。


 だが彼女達には、戦闘の休息は与えられないようだった。


「最初に会った奴が女ってちょっとキモくね?女好きみたいで」


 紳士服に身を包んだ男が1人で現れた。

 先程の戦いを見ていなかったのだろうか。度胸があるのか。


 それとも、それをねじ伏せられるだけの力があるのか。


 男は両刃剣を二つ取り出した。

 その剣には血がこびり付き、とても切れそうにないなまくらだ。


「自分の血、見てみるか?」


 男はそういうと、2人に襲いかかった。

 中折帽からは、()()をのぞかせながら。


 ※



 凄まじい猛攻だ。

 魔法が組み合わさった攻撃の防ぎ方はルシファーのおかげで慣れてはいるが、それが3人ともなれば話は別である。


 紳士服の剣士達はもれなくルーン石を大量に保持していて、剣と魔法を交互に使ってくる。

 捌けなくはないが、防戦一方といった感じだ。


「はあっ!」


 クロスは重力操作で、敵をもう一方の敵に投げて攻撃をするなど工夫しているが、それもいつまで持つことだろう。


「『風神・暴風剣』———ッッッ!」


 一度相手と距離を取るために風属性の剣技で敵を2人吹き飛ばし、1人の紳士服の胴体を貫いた。


 そして追ってきた剣士にも同じように剣で貫き、剣を構えた。

 だがもう1人が見当たらない。


「『ドレイン』」


「——ッ!」


 耳元で囁かれ、直後身体中の魔力がものすごい勢いで吸収されていった。

 だんだん力が抜けていく。足腰にも力が入らず、フィクスはそのまま倒れてしまった。


「はあ…ッ、はあ…ッ」


 息が荒くなっている。どうやら体力も吸収できる魔法だったらしい。


 油断していた、まさかこれほど強力な魔法のルーン石を持っていたとは。

 敵には相当強力な魔法使いがいるのかもしれない。


「まだ…死ねない…ッ」


 身をよじり、振り下ろされた剣を交わそうとした。

 しかし避けきれず、脇腹に刺さった。


「がッ…くぅ…」


 苦痛にうめき声をあげたが、また振り下ろされた剣に気付き、再び身を捩った。

 今度こそは交わせたが、これがいつまで持つだろうか。


 反撃の手立てはない。このままではここで朽ちるだけだ。


「何覚悟してるんだ、僕」


 以前それで、ラーナに助けてもらった。

 その命を無駄にすることは出来ない。


 それにまだやるべきことがたくさんあるではないか。


 《いいわあ、愛を感じる》


 その声で、フィクスの体力と魔力が急激に回復した。


「な、何が…?」


 《ほおら交わして!》


 どことなく低いが甲高い、男のような声だ。

 オネエといった感じである。


 それはそうとして、この剣士をどうにかしなければ。


 フィクスは戻った体力で起き上がり、剣を構えた。

 魔力も回復しているのがわかる。このオネエの力だろうか。


 紳士服の剣士はこちらを見据えると、三つのルーン石を宙に放った。

 魔法を複数放つつもりだ。


 《次は僕の力を使ってみないか》


 先程のオネエはどこへいったのか、爽やかな青年のような声に変わった。

 その瞬間、青い線がフィクスの元へ引かれた。


 《予測線だ、これを見て交わすといい》


 声がそういった瞬間、その線に沿って魔法が放たれた。


 フィクスはそれを交わし、紳士服との距離を詰める。

 今度はこちらの番だ。


「『シールドオーラ』」


 しかし紳士服は防御魔法を唱え、フィクスの攻撃を防いでしまった。

 これでは剣技で一度破壊してから攻撃しなければならない。

 その間に相手がまた別の方法でフィクスを倒しにくるかもしれない。


 《ならば、我が力を使え》


 今度はどすの利いた重い声が囁き、力が流れ込んできた。


 《今ならば壁を貫通して剣撃を与えることが出来よう》


「『雷神・豪剣』———ッッッ!!!」


 言われた通りにフィクスは必殺剣技を繰り出した。


 本来ならば『シールドオーラ』に跳ね返されるはずの一撃が、難なく魔法を貫いて紳士服の胴体に巨大な切り傷を与えた。


 唖然とするフィクスの前で、紳士服は倒れた。


「フィクスさん、大丈夫ですか!」


「ありがとう、大丈夫だよ」


 駆け寄ってきたクロスに、フィクスは笑ってみせた。


 先程の力、あれは間違いなく異能の力だ。

 本部にあった本の絵の中に、三つの僕を操る人間が描かれていた。


 番号は15、『悪魔』の異能だ。


(それぞれの力を使っている時、他の力は使えなかった。工夫して戦う必要があるな…)


 新たな自分の力について考えながら、フィクスはクロスと共に先へ進んだ。



 ※



「『炎域・黒傷の型』」


 ジンが剣域を展開すると、巨大な黒い円がジンを中心に展開された。

 剣域は継続的に紳士服達にダメージを与え、彼らは炎の中で踊り狂いながら焼死していく。

 やがてジンの周りは死体のみとなった。


「組織も大したことねえな」


 鼻を鳴らすと、ジンは角を曲がった。


 そこには金色に輝く宝石のようなものが宙に浮いていた。

 魔力濃度が異常に濃い、これは間違いなく世界のカケラだ。


「ジン!」


 ジンとはまた別の道から、フィクスとクロスが現れた。


「早速みんなに報告しよう」


「そうだな」


 2人は怪我をしていたが、無事に組織を倒せたようだ。

 あとは全員に報告して脱出し、レクトに本部まで連れていって貰えばこの任務は達成できるだろう。


「世界のカケラを発見、今から上に剣技を打ち上げる」


 ジンは通信石でそう言うと、クロスに向かって頷いた。

 この中では彼の剣技が一番見えやすいだろう。


「『極星アルティメテオ』!」


 真上に向かってクロスは剣技を放った。

 これで皆が集まることができるはずだ。


「ん?なんだこの音」


 耳をすませば、何やら物を破壊する音が聞こえる。

 その音はどんどんこちらに近づいてくる。


 ホルスの異能だろうか、などと呑気なことを考えていると。


「こんちわあああああああッッッ!!!!!」


 奇妙な掛け声とともに、紳士服の男が壁を破って突入してきた。

 その両手には剣ではなく、ラーナとティリアをぶら下げていた。


 2人の頭は血まみれだ、おそらく彼女達の頭を壁にぶつけながら進んできたのだろう。

 戦意結界を使っていたのか、顔が潰れていると言うことはなかった。

 しかし先程壁を破壊した時の衝撃で、もうすでに気を失っている。


「てめえ…ッ」


 ジンはその男の顔を見据えた。


「あれ、聞いてた人数と違うけど…まあ誰だって間違いはあるよな!」


 陽気な声でそう言うと、男はラーナとティリアを放り投げた。

 そしてどこからともなく両刃剣を二つ取り出し、それを前に突き出した。


「お前らまとめて、血まみれにしてやんよ!」


 赤髪の剣士、リオは満面の笑みでそう叫んだ。

《キャラクター紹介》


○ラーナ・アーサー・ウエラルド

ウエラルド王国の姫君で、異能士団の一員。

剣型は『純炎』(主属性:炎)、戦意解放力は20%、『太陽』の異能を持つ。


○フィクス・エルレド

ジンの幼馴染で、異能士団の一員。

剣型は『嵐』(主属性:雷、副属性:風)、戦意解放力は80%、『悪魔』の異能を持つ。


○リオ

組織の幹部であり、ヴァルタイユに次ぐ戦闘力を持つ。

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