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鈍色の封剣士  作者: 沙菩天介
第四章 異能士団
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第七話 極星

「攻撃系の剣技の開発がしたい?」


クロスからの突然の頼みがありフィクスは目を丸くした。

この少年が相談する相手といえば、ジンのイメージが強かったからだ。


「兄貴は自分の修行で忙しいみたいなので」


「なるほど、確かにそうだね」


異能士団に入ってから二日目だが、ジンはすでに昨日の段階から修行に手をつけていた。

仕事と食事と風呂以外は全て訓練に注ぐつもりだ。


しかし攻撃系の剣技とは驚いた。

確かこの少年は『星屑の剣流(スターダスト)』という攻撃系の剣技があったはずだ。

今はそっち方面ではなく、補助系統の剣技を開発するべきである。


「もしかして、決め手がない?」


「はい、大会ではずっと『星』を使っていたので、場外がないと通用しないんです」


そういえば、『星屑の剣流(スターダスト)』は威力は高いものの決め手には欠ける剣技だった。

ジンが扱う『黒滅斬』のように威力の高い剣技は確かに必要だ。


「分かった、僕でよければ手伝うよ」


「ありがとうございます!」





「威力の高い剣技…一般的に『必殺剣技』と呼ばれる剣技は、スタンダートであるが故に魔力運搬技術が試される。魔力を一本の棒のように収束させることで、より高い剣技が作れるんだ。それを踏まえて開発をしてみるのがいいんじゃないかな」


フィクスとクロスは、いつもの中庭で剣技の訓練をしていた。

ここにいるとなぜか落ち着く。やはり一年もここで特訓していたからだろうか。


「棒をイメージか…」


クロスは剣を前に突き出して目を閉じた。


彼の中に流れる魔力を感じる。

炎と光の魔力が同等の量だ。

これが彼の剣型『流星』らしい。


「なかなか珍しい組み合わせだな。いや、そうでもないか」


ふとルシファーが中庭に現れた。


「あ、ルシファーさん!」


「フィクス、もっと会いに来てくれてもいいというのに」


そういい、ルシファーはクロスを見た。


「兄貴…」


「クロス、剣交祭は見ていた。強くなったな」


ルシファーの言葉を聞くと、クロスは顔を輝かせた。

そう言えばジンの話だと、彼はルシファーを越えたいと言っていたらしい。


「今、2人で決闘をしてみては?」


フィクスの提案に、2人は揃って目を瞬かせた。

そして互いに顔を見合わせ、硬直した。


少し勝手だったかもしれない。

ここでクロスがルシファーに負ければ、再び距離が離れたことを実感し、無駄に落ち込む可能性がある。


しかし、クロスは覚悟ができていた。


「やろう、兄貴」


そんな弟の言葉に、ルシファーは頬を緩めた。





20時が過ぎ、星空のみが地上を照らす時間だ。

両者ともに向かい合い、柄に手を当てている。


「言っておくが手加減はしないぞ」


そういい、ルシファーは腰に刺した片手剣『魔剣トワイライト』を抜いた。

眩く美しく輝く漆黒の剣は、微かに燻る紫の炎を滾らせている。


クロスも頷き、腰の両側に刺した2本の剣を引き抜いた。

『新星リゲル』と『破星ベテルギウス』、両方とも本物の星であるかのようなエネルギーを感じさせる。


現在は闘技場を借りていて、ルールは剣交祭と同じ。

実はギャラリーもいる。


「やったれー!」


見れば、闘技場の観客席に異能士団が集まっている。

ウァルス、ホルス、ローズ、ラーナ、ティリアだ。

騎士団の面々がいないことに安堵したのか、ルシファーは胸を撫で下ろしている。


「負ける姿が見られたく無いなんて、兄貴らしくないな」


「ふっ、言うじゃないか。安心しろ、俺はそんなことを心配しているわけじゃない」


不敵な笑みを浮かべると、ルシファーは言った。


「お前が負ける姿を見せたく無いだけさッ!」



「——決闘開始!」



直後、ルシファーは跳ねるように動いた。

彼の戦意解放力は55%、あれほどの速さを出せるはずがない。


だが彼は長年培ってきた身体能力がある。

平民から貴族に成り上がった身だ。さぞジンよりも厳しいトレーニングをしてきたのだろう。


だがクロスには異能がある。


「はあっ!」


クロスが地に向けて手のひらを向けると、ルシファーの体はその方向に傾き、地に這いつくばった。

騎士として尊敬する人物が地を張っている姿は、フィクスにとっては見難いものだ。


しかし、ルシファーは『星』の効果をしっかり覚えていた。


「カウンター『暁光』———ッッッ!!!」


突然太陽のような明かりがクロスの目を眩まし、直後、クロスは謎の魔力物体によって囚われていた。

目はその物体によって塞がれ、今は何も見えないだろう。


「剣技と魔法を駆使したカウンター技『暁光』だ。闇と炎で光を再現し、その後拘束魔法で捉える。さあどうする?俺はお前を串刺しにすることもできるんだぞ」


珍しく満足げなルシファーは、剣先をクロスに向けている。

降参しろ、と言う意味なのだろう。


だがフィクスは、クロスの剣先にとてつもない濃度の魔力が凝縮され始めていることに気づいた。

ルシファーもそれに気付いたのか、クロスに向けて剣を振りかぶった。


だが遅い、光属性の剣技に速さで勝てるはずがない。


「剣技『極星アルティメテオ』———ッッッ!!!」


『新星リゲル』と『破星ベテルギウス』両方の剣先を合わせ、大きく振り下ろした。

星のエネルギーを思わせる二つの剣に、凝縮された魔力。

その剣技はまさに隕石そのものだった。


「『明星剣【頂】』———ッッ!!」


ルシファーは先程とは比べ物にならない魔力を用いてカウンター剣技を放った。

だが『極星アルティメテオ』は止まることを知らない。


やがてルシファーの体は押し出され、そのまま場外へと足がついてしまった。


「——!」


「勝者、クロス!」


フィクスの声に、観客席が湧き上がった。

ルシファーは悔しそうでもなく、心から嬉しそうにクロスを見ていた。

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