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鈍色の封剣士  作者: 沙菩天介
第二章 異能の星
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第十六話 帰還

 クアランドの王都の風景は、ウエラルド王国と大きく違うことはなかった。

 だが街灯やその他の生活器具に使われている魔法という概念が、クアランド独自の風景を生み出していた。


 本当ならこの魔法大国の都市を散策して楽しみたいところだが、生憎ジン達には金も時間もない。

 帰りの分の食料を買って、剣を作って帰ろう。


「剣を作っている間に、クアランド側のギルドで非常食を買っておけば、時間効率が良さそうですね」


「そうだな、賛成だ。それじゃあ魔器屋に行こう」


 クロスの提案により、まずは魔器を作る店を探すことにした。


 魔器を作りにくる旅人が多いからか、魔器屋は門のすぐ近くにあった。

 しかし特に行列ができているというわけではない。武器屋だから当たり前ではあるが。


「おう!品を見にきたのか?」


 ジン達が店に入ると、背がやや小さめの中年の男が笑顔で出迎えてくれた。


「いや、魔剣を作って欲しくて」


「分かった、魔剣だな!ルーン石はあるか?」


「ああ、俺ら全員持ってる」


 そう言い、ジンは自分のルーン石を男に渡した。


 ジンのルーン石は上級炎属性魔法のルーン石だ。

 男は少しだけ目を見開くと承諾したように頷き、店の隣にある倉庫の扉を開けてこう言った。


「それじゃ、型を選んでくれ」


 ジン達に来るように言い、男はその奥へと進んでいった。


「おおー!」


 倉庫に入り、四人は目を輝かせた。


 巨大な倉庫の中には、様々な形の木製武器が無数に並んでいる。

 きっとこの中から型を選び、素材を使ってこの形の通りの武器に仕上げてくれるのだろう。


 四人はそれぞれ期待に胸を膨らませながら、倉庫の中を散策し始めた。



 ※



「まさかルーン石だけで4割もお金が余るなんて思わなかったよ〜」


 非常食を買い終えて、ジン達は今カフェでのんびりと過ごしていた。


 エイルスにルーン石を作ってもらったおかげで、剣を作っても4割の金は返ってきた。

 非常食を少し多めに買っても余ったので、今は四人で適当にカフェを借りてスイーツを堪能している。

 全くエイルスには頭が上がらない。


「でもザパースさんのお金こんなことに使っちゃっていいんですか?」


 ティリアが心配そうに聞くが…


「馬鹿、バレなきゃ良いんだよ」


「また〜、育ての親でしょ?」


「これが息子なりの愛ってやつだよ」


「兄貴の愛ってだいぶ歪んでますね」


 そもそも、ザパースと散々憎まれ口を叩き合ってきたのだ。

 今更愛がどうこうなど言うつもりはない。


「さて、そろそろ出来上がる時間じゃないか?」


「そうだね、行ってみようか」



 ※



 それからジン達は剣をもらって直ぐにウエラルドへと向かった。


 完成した魔剣は、魔力を漲らせて美しく輝いていた。


 ジンの『魔剣イグニス』は赤黒く光る刀身に、かすかに燻る炎属性の魔力が溢れ出ていた。

 ザパースの使っている『鋼の長剣』と同じくらいの長さだ。

 このリーチの長さが、カウンター剣技をさらに強化することだろう。


 イリアの『輝線剣』は、白金の刃を光属性の魔力が包み込み、眩い光を放っている。

 他の剣よりも比較的軽く、『純光』の力を存分に発揮出来そうな性能に出来上がった。

 彼女の扱う『神速の輝線(スペクトルブレード)』のスピードも大きく上昇するはずだ。


 クロスの『新星リゲル』は青白く光り、埋め込められた光属性のルーン石は余すことなく魔力を滾らせている。

星屑の剣流(スターダスト)』によって降り注ぐ流星群の攻撃性能、スピードを格段にアップさせるだろう。

 また、もう片方の剣『破星ベテルギウス』は火属性のルーン石によって、今にも爆発しそうなガスエネルギーを思わせるほどの魔力が秘められている。

 今後彼が開発していくであろうカウンター剣技を、より頑丈なものにしてくれるはずだ。


 ティリアの『光流剣』は、黄金がふんだんに使われた豪華な剣だ。

 光属性魔力が循環するこの剣は一般的な剣の重さなので、『正義』による身体強化に臨機応変に対応できるだろう。

 まさに汎用的な武器として仕上がっている。


 四人はそれぞれの武器を手に取り、夢中になってその剣を観察した。

 魅力的な、かつ自分に合った剣が手に入ったのだ。育ち盛りの剣士達には興奮ものである。


 王都内では剣技を使うわけにいかないので、帰りの森の中で木に向けて剣技を放った。

 カウンター剣技はまだ試せていないが、『黒滅斬』を打った時の手応えは確実に上がっていた。


「お疲れ様でした!」


 星が輝き、月が円を描く美しい夜、ウエラルドのギルド受付に手を振ってもらいジン達は訓練所に向かった。

 訓練生の皆は驚くだろう、ジン達がパワーアップして帰ってきたことを。


「今ならマルクさんに勝てる気がします!」


「おうおう、その意気だぜ。そのまんま剣域も覚えちまおう」


「む、無茶言わないでくださいよ!」


「でもクロス、その剣決闘じゃ使えないよ」


「え、あ、そっか…」


 そんな会話をしながら、気づけば訓練所の正門に着いていた。

 今ならまだ、皆に剣技を披露できるだろう。


 すると…


「ジン!逃げろ!」


 どういうわけか、いち早く訓練所内部から出てきたエリックとマルクが血相を変えて走ってきた。

 その瞬間だった。



「……『零槍・月華』」



 突如、訓練所を巨大な水色の氷が包み込んだ。


 氷の高さは20m以上、訓練所は謎の攻撃によって完全に外の世界から隔離されてしまった。

 何が起きたのか理解できないままだったが、何かしらの脅威が迫っていることは感じていた。


 そして———


「あ?」


 ———窓から見えるのは、鮮血。

 それも窓を覆い尽くすほどに大量の血だ。

 それがほぼ全ての窓にかかっている。


「なんだ…?」


 そして屋上、月背後に佇む男に視線をやった。

 黒い紳士用のコート、中折れ帽、そして嗤う声。


「おかえり『星』『正義』、君たちを待っていた」


 男は屋上の死体を地に向けて蹴飛ばすと、やがてその上に着地した。


「初めまして、僕はヴァルタイユ・ミラ・バルザイド。訳あって異能者を殺している者だ」


 口元に嗤いを浮かべ、ヴァルタイユは名乗った。

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