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鈍色の封剣士  作者: 沙菩天介
第二章 異能の星
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第十五話 洞窟の魔法使い

 ふと目を開けると、天井に散りばめられた無数の宝石が目に映った。

 初めて見る光景に一瞬動揺し、ジンは記憶を辿った。


 旅の途中洞窟に閉じ込められ、突然現れた魔物に吹き飛ばされた。

 そこから記憶がない。


 そうだ、イリアやクロス達は無事だろうか。

 ジンははっとして身体を起こすと、周囲を見回した。


 何もない、と言えば語弊があるが、机と椅子とその他の小物しかない部屋だった。

 小物のほとんどは多種多様な宝石で、それらを研究するために使うと思われる道具がいくつか整理されて置かれている。


 ジンはベッドに寝ていたようで、蟻にやられたはずの怪我も無くなっていた。

 この部屋の主が治してくれたのかもしれない。


「この洞窟に誰か住んでるってのかよ…」


 とにかく三人の安否の確認が大事だ。

 ジンは急いでベッドから降りると、入り口のドアを開けて隣の部屋に突入した。


「あ!ジン君!」


 部屋の状況を確認するよりも速く、イリアがジンの元に駆け寄ってきた。


「大丈夫?どこか悪いところとか…」


「大丈夫だ、全部治ってる」


「よかったあ…」


「おや、目が覚めたのか」


 イリアがホッと胸を撫で下ろすその側で、ゆっくりと立ち上がった人物がいた。


 背の高い女性だった。

 髪は真っ黒で、膝ほどまである長い髪を結ばずに流している。

 黒いローブを見にまとうその姿は、魔法使い然とした雰囲気を醸し出している。

 そして彼女の瞳は魅入るほど美しく、穏やかな海を想像させる。


「はじめまして、私の名前はエイルス・ネオプトル。魔法学校の教師だ」


「ど、どうも、俺はジン・デルフ・エスパーダです」


 エイルスが差し出した手を、ジンは戸惑いながらも握った。


「よかった、握ってもらえなかったらどうしようかと思ったよ」


「何でですか」


「次代の剣聖が私の手を握ってくれないとなると、クアランドで問題になったかもしれない」


 そんなエイルスの言葉に、ジンは苦笑した。


 剣聖というウエラルド上層の人間が、同じく魔法学校教師という上層の人間と握手をしないとなれば、国同士の信頼に問題があることになってしまう。

 自分が剣聖になるとは思っていないが、国境を越えた関係というものに肩身の狭さを感じた。


「エイルスさんが助けてくれたんですよね、ありがとうございます」


「いいや、困っている者を助けるのは当然のことだ」


 エイルスは定型文で返すと台所に入っていった。


 部屋は先程の部屋と変わらず洞窟を掘って作ったような部屋になっている。

 部屋の中央には大きなダイニングテーブルがあり、六つほどの椅子に囲まれている。

 それ以外には特に何もなく、台所が設けられている程度だ。


「ほら、空腹に困っていたんだろう」


 そう言って、エイルスはパンと水を用意してくれた。


 何から何までやってもらって申し訳ない気分だったが、出されたものを食べないのも失礼だというのがザパース流だ。

 ジンはエイルスに礼を言い、パンに食らいついた。


 エイルスはその様子を確認すると、自分も席についた。


「さて、君達は確か『魔器』を作りに行く途中だったね」


「はい、出来れば道を教えて欲しいです」


 クロスが何食わぬ顔で言った。

 少し遠慮というものを学んだ方がいいと思う。

 だが、


「ジン、君は少し緊張しすぎだ。君達はこれから少しの間私の世話になるのだから、リラックスしておいた方がいい。魔法使いは時間を惜しむと聞くが、現在真面目に研究に打ち込んでいるのは国王と英雄ゼウス程度のものだろう」


 エイルスはジンが思っていることを特に気にしていないようだった。

 なんと寛大な人なのだ。


「それで、『魔器』を作るための金が足りないと言っていたね」


「いや、流石にお金を貰うわけにはいかないっすよ!」


「ああ、私もそのつもりはない。ただ、『魔器』の代金を減らす裏技を教えてやろうと思ってね」


 エイルスは立ち上がると、部屋の入り口の扉を開けた。


「ついてきてほしい」



 ※



「これは…」


 エイルスに連れられ、目的地にたどり着いた四人は絶句した。

 巨大な空洞に、色とりどりの宝石が散りばめられているのだ。


「ここにはほぼ全ての属性の『魔石』が生えている。魔石は『ルーン石』を作る触媒となるものだ。君たちが自分に合う属性の魔石を私の元へ持ってきて、私がルーン石を作ってあげよう」


「つまり、ルーン石を予め作っておくことで、その分のお金を消費せずに済むというわけですね」


 エイルスの提案に、ティリアが納得したように頷いた。


『ルーン石』は魔器を作る場合に使われるが、一般的には『魔法が使えない人が魔法を使う手段』だ。


 例えば下級炎属性魔法『フレア』を使える魔法使いがいるとしよう。

 その魔法使いが自分の魔力をある程度使って『フレア』のルーン石を作り、そのルーン石の中には魔法使いの魔力と『フレア』の術式が組み込まれる。

 そうするとこのルーン石は、中に入った魔力の分だけ『フレア』を放つことが出来る道具になるのだ。


 兵士や騎士団の間でも、クアランドから取り寄せたルーン石は重宝されている。


 ジンは魔法のことを詳しくは知らないが、全属性の魔法を使える魔法使いはそうそういないらしいので、このエイルスという人物は凄い魔法使いなのだということを実感した。



「エイルスさん、複数の属性を剣に組み込むことって出来ますか?」


 唐突に、ティリアが質問した、


 なるほど、ティリアの『光流』は主属性は光だが、副属性が風と水というように二つある。

 二つの属性が組み込まれた剣を使えば、さらなる剣技の強化が期待できそうだ。

 だが、そうもいかないようである。


「知っての通り、ルーン石を埋め込めば埋め込むほどその剣は重くなる。超高速が特徴の光属性なら、ルーン石は一つに絞ることを勧めよう」


「わかりました!」


 質問が終わると、ティリアは早々に魔石を探すために空洞の方へ歩いていった。

 ジンも魔石を選ばねばなるまい。


 剣を作る時は普通に考えて、主属性の属性を重視する。

 だがジンの『黒炎』は主属性が不明だ。

 勇者が作ったと言われているので、何故だか通常の方法では調べることができないらしい。


 なのでジンは副属性の炎属性の魔石を選んだ。

 それも出来るだけ美しく、濃い魔力を感じる魔石を。


 他の三人も選び終わったようで、エイルスにすでに魔石を渡していた。

 ジンの魔石をエイルスに渡すと、彼女はここで待っているよう言った。

 そして先程の住処へと向かった。



 ※



「クアランドの王都は、すでにこの場所から見えるだろう?あそこが旅のゴールだ」


 エイルスが指さした方向には、確かに王都らしきものがあった。


 四人はエイルスからルーン石を受け取ると、礼を言って洞窟を出た。

 ようやくクアランドの王都にたどり着く。魔器が手に入る。


 窮地から脱出した安心と、自身の剣への希望を抱き、ジン達は王都へと向かう。

《キャラクター紹介》


○エイルス・ネオプトル

クアランド魔法学校の教師。

洞窟で遭難したジン達を援助する。

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