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鈍色の封剣士  作者: 沙菩天介
第二章 異能の星
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第五話 光速術

「『星屑の剣流(スターダスト)』———ッッッ!!!」


クロスの渾身の剣技が、ジン目掛けて真っ直ぐに飛んでいった。

ジンは慌てることなく『黒滅斬』で相殺し、クロスに攻撃を仕掛ける。


剣型『流星』は炎と光の、主属性が二つある珍しい剣型だ。

カウンターにも特化していて、相手に攻撃を仕掛ける際にも高速で剣技を放てる。まさに攻守万全の剣型である。


そしてクロスの武器は、両手に剣を持つ『二刀流』となっている。

クロスは自分の剣士としてのあり方を見つめ直し、自分に合う武器を見つけ出したのだ。


「いい動きをするようになったじゃねえか」


「はあ…はあ…兄貴にはまだかないませんよ…」


クロスが疲れていることに気づき、ジンは剣を納めた。


「休憩するか。一睡もしてねえもんな」


そう、現在は日が上り始めるような時間帯。

クロスが「鍛えてください」と頼んでから、五時間ほどぶっ続けで練習していたのである。


だがクロスは、


「俺、まだやれます。兄貴に追いつくためにはこれくらいしないと」


やめようとしない。

先ほどから何度かジンは休憩を勧めているが、一向に休もうとしないのだ。


それはそうとして、ジンは先ほどからモヤモヤしていたことを口にした。


「なあ、お前が『兄貴』って言うと、俺かルシファーさんか分からねえんだけど」


「ジンさんのことですよ」


クロスはそう言うと、遠方に聳えるウエラルド城に視線を向けた。


「俺はもう、ここにいる間は兄のことを話しませんから」


これが、クロスなりの向き合い方なのだろう。

どうしても兄を意識してしまうのなら、いっそ忘れてしまえばいい。

次に再会したときに勝てるよう、今は彼を忘れて自分を高める必要があるのだ。


ジンはクロスの様子に口元を緩めると、一つ提案した。


「そうだ。お前は魔力運搬を完璧にしたいんだったよな?」


「え?ああ、はい。それも目標の一つです」


「ならいい人を紹介してやろう。魔力運搬のプロをな」





「へえ〜、ティリアちゃんの剣型って光が主属性なんだ!私と一緒だね」


「えへへ、副属性が水と風っていうのもなかなか使いやすいんだ〜。あ、クロス君と兄貴さんが来たよ!」


ティリアがこちらを見てきたので、ジンとクロスはしぶしぶそちらへ向かった。

今日の訓練が終わり、ジンはイリアを中庭に呼んでおいたのだ。


「ティリア呼んでねえのに…お前ら本当に仲良いよな、姉妹かって感じ。てかイリアとティリアって名前似てんじゃん。もういいよ姉妹で」


「兄貴、それは少し適当な気がしますけど」


ジンがヤケクソで放った言葉にクロスが苦笑し、意外そうにイリアの方を見た。

彼もまさか、魔力運搬のプロがイリアだとは思わなかったのだろう。


まあ言うよりは見せたほうが早い。

ジンは早速、イリアに魔力運搬をしてもらうことにした。


「じゃあ俺とイリアで戦うから、イリアの魔力運搬の力を肌で感じてくれ。立会人はお前ら二人ということで」


そう言うと、ジンは木剣を構えた。

イリアも構えると、戦意を集中させた。


やがて彼女は、目に見えない動きでジンに突進してきた。


その動きは、戦意を集中させたとしても追いきれない。

彼女の戦意解放力は40%なので、このスピードには他の理由があるということになる。


ジンはその突進を危ういところで交わすと、通り過ぎたはずのイリアが間もなくジンの背後に迫っていることに気づいた。


「速すぎる!」


クロスが驚愕の声を上げ、ティリアは無言でその光景を眺めていた。


これは当たり前のことだが、一つの物体目掛けて進んでいるのならば、その物体を通り過ぎた後には折り返しという動作が絶対に必要になる。

だがイリアの場合、通り過ぎた後にはもう背後に迫っているのだ。

これはつまり、折り返しという動作と接近という動作を一瞬で終わらせてしまっていることになる。


「ストップだイリア。そろそろ説明に入ろう」


「了解!それじゃあ二人とも、ジン君の話をよく聞いててね」


ジンの前にクロスとティリアが座り、説明を受けることとなった。


まず先ほどの超スピードの原理についてだ。


あれは『光速術ラピッドアーツ』とイリアが名付けたもので、イリアの魔力運搬の練習の賜物である。

イリアが剣技を出せなかったのは、当然魔力運搬がなかなか進まなかったからだ。

だが運搬が遅かったのには理由がある。


彼女は腕に魔力を運ぶ段階で、すでに完璧な魔力ルートを発掘していたのだ。

その発掘の作業がとても丁寧だったせいで、彼女は他の生徒やジンに遅れてしまった。

だがその発掘のセンスが、他の生徒よりずば抜けていた。センスもあってなおかつ丁寧だったのならば、言うまでもないだろう。


つまり、彼女はすでに最高濃度の剣技が放てるということだ。


光速術ラピッドアーツ』は、自分の足に純粋な光属性の魔力を運ぶことで超スピードを獲得することができる。

彼女はこの術を使って、訓練所内でもかなり優秀な成績をおさめている。


「そんなイリアから魔力運搬を指南して貰えば、上手くなると思わねえか?」


「完璧にはっていうのは少し難しいかもしれないけど、上手くなれるよう頑張ろうね」


クロスは少し考えたような仕草をして、やがて頷き頭を下げた。


「ご指導よろしくお願いします!」


「わ!そんな畏まらなくても…」


クロスの様子にイリアは慌てて両手を小刻みに振り、クロスに頭を上げるよう頼んでいる。

すると今まで無言だったティリアが、ふと手を挙げた。


「どうしたティリア?」


「いえ、『光速術(ラピッドアーツ)』はあたし達でも出来るのかな〜なんて思ったりして」


そんなティリアに、ジンとイリアは顔を見合わせた。

なるほど、確かにティリアとクロスは二人とも光属性が主属性だ。

『純光』でなければ駄目、というわけではないのであれば、ついでに『光速術ラピッドアーツ』を習得するのもいいかもしれない。


照れ臭そうに頭をぽりぽりとかくティリアに、イリアは微笑んだ。


「多分主属性が光なら出来ると思うよ〜。私と違って君たちは戦意解放力も高いから、『純光』のスピードにも追いつけるはず」


「本当!?」


答えを聞くなり、ティリアは飛び上がった。

光速術ラピッドアーツ』を習得したら、この二人はかなり化けるかもしれない。


「こりゃあ、剣交祭ピンチかもしれないぞ…」


新入生に、ビビり散らかすジンであった。





「それで、イリアに任せて君は『死線デッドライン』の特訓か。まったく呆れるね」


「ま、まあ、兄貴だって訓練生最強の地位は守りたいだろうからな。仕方ないさ」


はあ…とため息を吐いて、マルクは首を横に振った。

エリックもなんとも言えない表情でマルクの横に立ち、ジンをフォローする。


「エリックの言う通り、俺はこの立場を守らなきゃならねえ。じゃなきゃアゼルスに顔向け出来ねえよ」


ジンはそう言うと、再び剣技の開発に集中する。


イメージは、相手を掴む動きだ。

完全にがっしり掴むのではなく、『黒滅斬』を放てるだけの隙を生み出せる技。


その隙を生み出せるだけの、ギリギリのラインを狙う。


そして無意識のうちにジンの脳内に描かれていた動きは、アゼルスの『神氷刃イエロ・ラル』と同じものになっていた。

二方向から相手のガードを崩し、トドメを見舞う。

まさにやろうとしていることは、全く同じと言っても過言ではなかったのだ。


「剣技『神炎刃デッドライン』———ッッッ!!!」

《キャラクター紹介》


○クロス・メルティア

新入生で、ジンのルームメイト。

ジンと話し合って心の持ち方を変え、劣等感を克服した。

剣型は『流星』(主属性:光炎)


○ティリア・ファシー

戦いを好む新入生の少女。

剣型は『光流』(主属性:光、副属性:水風)

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