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鈍色の封剣士  作者: 沙菩天介
第八章 記憶の囚人と復讐鬼
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第十話 剣交祭再び

 帰ってから数週間。

 異能士団はとある話題で盛り上がっていた。


 エルドが剣交祭を主催するという話だ。


 剣交祭は、ウエラルド王国訓練所の訓練生によって行われる大会だ。

 しかし今年は訓練生はいない。


 だからと言うわけではないが、エルドは異能士団内での大会を開くことにしたそうだ。

 観客も異能士団しかいない。


 大会を行う理由は、より仲間の異能を理解し、有効活用できるようにすること。

 団員内で戦い合うことによって、異能の弱点を暴いたり克服することができるようになるというのがこの大会の目的だ。


 優勝したものには、特別な修行ができる許可が降りると言う話である。

 討つべき敵がいるのならば、強くなりたいのは全団員共通だろう。


「激しい戦いになりそうだな」


 談話室で盛り上がる団員たちを眺めながら、ジンはつぶやいた。


 団員の異能は大体判明している。

 だからこそ思うのだ。


 最強クラスの異能を持つ者も何人かいる。

 剣交祭の時のようにはいかないだろう。


 だがジンは優勝しなければならない。

 ヴァルタイユに勝つには力が必要だ。


「談笑中の仲間を眺めていても、特に収穫はないと思う」


 ジンの元に歩いてきたのは、首にタオルをかけた上裸のアレクだ。

 プライベートでは大体上裸なので、ホルスあたりにいつもからかわれている。


「別にそう言うわけじゃないんだが…、アレクは何のために力が欲しいんだ?」


「…大会のことか」


 何か考え込むような仕草をした後、アレクはエマとオーラスを見た。


「あの二人と一緒に戦っていて分かった。俺は弱いんだって。実際魔物相手じゃなきゃほとんど役に立たない。だからせめてみんなと同じくらいには強くなりたい」


「じゃあ、特に目的はないんだな」


「目的は…母さんを探し出すことかな」


 それを聞いて、ジンは黒髪の女性を思い浮かべた。

 洞窟で助けてくれた命の恩人だ。


 アレクはその息子だという。

 できるだけ力になりたいところだが…


「今はライバルだからな。全力でやるぜ」


「ああ」


 握手を求めるジンの手を、アレクは握った。



 ※



「はーい、ワクワクドキドキのトーナメント発表〜!」


 ぱんぱんと手を叩くウァルスに、その場の全員が注目した。


「えー、明日、明後日、明明後日の剣交祭もどきに備えて、皆さんにトーナメント表を配ります。この表はエルドと幹部の三人で作りましたので、完璧すぎる編成になっていると思われます。それじゃ、順番に取りにきてくれぃ」


 そう言われ、団員たちは列になった。


「エルドは参加するのかしら」


「あいつはしねえだろ、仲間に異能明かすタチじゃねえし」


 ラーナとそんな会話をしていると、遠くの席にフィクスとクロスの姿を確認した。


 二人はひどく落ち込んだ様子で、お互いに向き合って俯いていた。


「はあ、情けないわね」


「いや、仕方ねえだろ。あいつらルシファーさんのことめっちゃ尊敬してたんだぞ」


 呆れたように嘆息するラーナに、ジンは眉を顰めた。


 ルシファーが騎士団を裏切り、ヴァルタイユに付いたのは王城内で知れ渡っている。

 騎士団では、すでに一般人へ情報を公開する準備が行われているそうだ。


 その報告を聞いて、フィクスとクロスはショックだったようだ。

 剣交祭もまともに参加できるかどうか不安だが…。


「多分心配しなくていいですよ」


 ラーナの後ろに並んでいたナリムが言った。


「きっと彼ら、ルシファー副団長を説得しようとしますから。そのためには力が必要ですしね」


「確かにな。あいつら死に物狂いで優勝取りにくるぞ」


 ルシファーは最強クラスの剣士だ。

 一度クロスに負けているとはいえ、あの戦いでは『極星アルティメテオ』の対策ができていればルシファーは負けなかった。


 次に会う時はヴァルタイユの協力もあって、こちらの戦力を十分把握している状態で戦うことになる。

 今のままでは勝てないだろう。


「おいジン、ちゃんと前見ろ」


 ディルセイに呼びかけられ、ジンは振り向いた。

 トーナメント表を受け取る順番が回ってきていたのだ。


「おっとすまん」


 慌ててウァルスからトーナメント表が書かれた紙を受け取り、内容を確認した。



 《第一回戦》



 フィクスvsホルス


 ラーナvsレクト


 ガイナルvsナリム


 ディルセイvsエマ


 アレクvsジン


 ルフvsティリア


 ウァルスvsオーラス


 ローズvsクロス




「これはまた…うーん」


 正直、ジンはホッとしていた。


 ジンの属性は闇属性ではない。

 だから相手がアレクだとしても、彼の強みに引っかかることはないのだ。


 問題は次の戦闘だ。

 トーナメント的に、次に戦うことになるのはティリアかルフだ。


 ティリアは以前よりグッと成長している。

 ジンの大量の魔力をコピーしてくれば、どんな技を見せてくるのか想像もつかない。


 そしてルフは炎を操る。

 これは炎属性使いであるジンにとって、かなり厄介な相手である。


「しかしそれ以上に…」


 2回戦目、もしローズとウァルスが勝てば、二人はぶつかる。

 そうなればもしかしたら、今度こそローズは殺されるかもしれない。


「安心しろジン」


 不意に名前を呼ばれ、ジンは身構えた。

 エルドだ。


「この大会では殺しは禁止。万が一団員が危険な素振りを見せれば俺が止める」


「お、おう…そうか」


 気に食わないが、エルドには誰も勝てない。

 これほどまでに立会人として頼もしい人はいないだろう。


「全員俺の話を聞け。ルールを説明する」


 エルドの呼びかけに、全員が振り向いた。


「勝利条件は三つ。相手を失神させる、相手を降参させる、そして相手に、『リカバリー』でなければ回復できないほどのダメージを与える。具体的には、骨折、多量出血、部位切断等だ。敗北条件は失神、降参、大怪我に加え、殺すことと、『リカバリー』の魔法を試合中に使った場合も反則負けだ。それ以外なら何をやっても構わん。試合外の時間に相手と交渉する、相手の武器を破壊する、他の団員が勝てるように手を回す等、好きにするがいい」


 言うだけ言って、エルドは去って行った。


「ってことで、明日までに体力を温存しとけよー」


 ウァルスの一言で、今日は解散となった。

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