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鈍色の封剣士  作者: 沙菩天介
第八章 記憶の囚人と復讐鬼
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第六話 無慈悲

 黒い斬撃が、ジンとフィクスの胴体を掠める。

 黒騎士の猛攻は勢いを増す一方だ。


 しかし二人は、騎士のある癖を見つけていた。


 この騎士は剣の腕に自信がある。

 だから全ての攻撃を剣で受け止めているのである。


 ならば、それごと打ち砕けばいい。


「アバドン!」


 《ああ》


 力の悪魔の気を纏い、フィクスは正面から騎士に向かっていった。

 この状態ならば、相手のガードを貫通させることができる。


「『雷神・豪剣』———ッッッ!!!」


 フィクスが放った雷の斬撃は、何に邪魔されることのなく突き進んでいった。

 それは騎士の頭部を真っ直ぐに狙っていて…


「…甘い」


 直後、身を翻した騎士によって、フィクスの剣技は後方の壁へ激突した。


「そんな…!」


 間違いない、この騎士はフィクスの剣技の威力を見切っていた。

 攻撃を剣で受ける癖があるにも関わらず、見て、判断してからかわしたのだ。


 しかし勝機が回ってきた。

 注意を完全にフィクスへ向けることができた。


「『極星アルティメテオ』———ッッッ!!!」


 油断なくフィクスを見据える黒騎士の背後に回り込んだジンの、必殺の剣技が放たれた。


『黒滅斬』に劣る剣撃だとしても、その威力は絶大だ。

 剣で攻撃をガードできても、背中で必殺剣技を受け止めることはできまい。


 はずだった。


「…『シールドオーラ』」


 絶対的な魔法の防壁、それは力の悪魔による攻撃以外はほぼ全て無効化できる。

 当然未完成のジンの剣技が、壁を貫通することはできなかった。


「…手の内は全て明かしたようだな…。ならば捕らえさせてもらおう…」


 そう呟き、黒騎士は剣を振り下ろした。


 性格には、()()()()()()()()()


「…ッ!」


 重力操作だ。

 重力操作によって、黒騎士は地面に這いつくばった。


「フィクスさん!ジンさん!」


 クロスの呼び声とともにパイプ地帯の入り口から走ってきたのは、ウァルス組の三人だ。

 そしてその後ろには、オーラスたちもついてきている。


「お前らお手柄だな。よくやった」


 ウァルスが手をパチパチと叩くと、黒騎士に向かって歩み寄った。


「なあ魔物さんよ、俺たちはこの先にある欠片を取りに来ただけなんだ。あんたが大人しくそれを渡してくれるってんなら、俺たちは誰にも危害は加えないぜい」


「…知らぬ…ようだな…。聖石を失った後の魔窟のことを…」


「なんて?」


 眉を顰めるウァルスを、黒騎士は睨みあげた。


「…ゆっくりと崩れてゆくのだ…。だから住民たちはここを去らねばならない…。だが外に出ればどうだ…。昔外に派遣された魔物は一人を除いて全員殺された…、私を除いてな…!」


 ゆっくりと、騎士は重力に逆らって立ち上がり始めた。

 骨と金属が軋む音が聞こえるが、それでも体を持ち上げ続けた。


「私たちに残された道は…!侵入者を一人残らず排除すること以外に———」


「———もう良い、ギリアスよ」


 ゆっくりと剣を持ち上げる黒騎士ギリアスを、老人の声が止めた。


 魔物だ。顔が埋まるほどの量の髭を携えている。

 おそらくこの魔窟の長だろう。

 そして彼の後ろには、4体の魔物が護衛として待機していた。


「陛下…」


「わしが話をつける、おぬしは下がっておれ」


 そう言われ、ギリアスは渋々引き下がった。

 クロスが異能を解いていたのだろう。


「一応わしは、世界の仕組みについての知識は持っておる。さて、どう話し合ったものか」


「どうしようもないね、おじいさん」


 顎に手を添えて考え込む魔物の長に、ウァルスは無慈悲に言った。


「仮にあんたらの居場所を外に作ったとしても無駄だね。世界の欠片を全部集めて、世界を救ったとする。そしたら世界からは、魔物が大量に減る。もしあんたらが減る側の魔物だったら?禁忌の魔法が使われた世界であることが前提で生きてるあんたらだ。多分全員消え去るだろうぜい」


「……そうか…」


 信じられないと言った表情の長だったが、やがて納得したように頷いた。

 そして覚悟を決めたような表情になった。


「来るべき時が来たら、聖石をおぬしらに渡そう」


「来るべき時?」


「ああ、おぬしらが世界を救うときじゃ。その時まで、せめてわしらを生かしておいてくれんか」


 それを聞いて、ウァルスは手を打った。

 確かにそれなら彼らの寿命を伸ばすことができる。


 だが、そう思わない剣士がいたようだ。


「話になんねえな」


 ぼとり、という音を立てて、長の首が地面に落ちた。


 ジンの剣によって首を切られたのだ。


「え、お前何やってんの?」


 キョトンとするウァルスの背後から、弾丸が護衛目掛けて飛んでいった。

 弾丸を複数込められるモードだったのだろう。四人の護衛は一瞬で絶命した。


「え、お前ら何やってんの?」


「何やってんだはこっちのセリフだよ、お前さん」


 いつの間にか来ていたディルセイは、狙撃銃を肩に担いで言った。


「組織がここを攻めてきたら終わりだ。さっさと回収しなきゃなんねえだろ」


「あとはあの騎士の魔物だな」


 唖然とするギリアスに向けて、ジンとディルセイは武器を構えた。


「…貴様ら…よくも…」


 ギリアスの周りに、膨大な魔力が集まり始めた。

 まだ余力があったというのか。


 関係ない。この場には異能士団のほぼ全員が集結している。

 仮に強化されたとしても、全員でかかれば勝てる相手だろう。


 だが、ジンの予想を遥かに上回る形で、危機が訪れた。


「元気、してたかぁ?」


 そんな一言とともに、ギリアスの周囲が爆風に巻き込まれた。


 正確には斬撃だ。

 それによって周囲の壁が破壊され、砂煙によって様子が見えなくなってしまった。


 だがその砂煙すら、斬撃は切り裂いた。


「…ッ!お前!」


 団員たちの反応にケタケタ笑うと、やがて男は前に歩み出た。


「また血、見せてくれんだろ?」


 赤髪の剣士、リオはニンマリと笑った。

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