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鈍色の封剣士  作者: 沙菩天介
第八章 記憶の囚人と復讐鬼
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第一話 曖昧

「お前らなんで一緒にいんの?」


 アレク達が入所した次の日、ウァルス、フィクス、ディルセイ、ホルス、オーラスが一緒にカードで遊んでいるのを見て、ジンは眉を顰めた。


 料理の当番は初期メンバーのウァルス組、訓練所事件直後に入所したジン組、それ以降に入所したディルセイ組に分かれていたはずだ。

 これほどまでごちゃごちゃなメンバーが、昼間から一緒に遊べるわけがない。


「新人のエマって人いたでしょ?彼女が魔法科学…みたいなのが得意みたいで。ウァルスが使ってた騎士を召喚する魔法を、機械を使ってもっと複雑にしたんだって。僕もよくわからないけど」


「つまりなんだ、もう料理しなくていいのか?」


「うん、エマが作った機械が全部やってくれるよ。ジンも一緒に遊ぶ?トランプっていう道具でさ…」


 フィクスが説明をしている側で、ジンは少しだけ口元を歪めた。


 それは朗報だ。

 料理をする時間がなくなるのならば、ジンが修行に励める時間も長くなる。


「じゃあ礼を言わねえとな。エマって人はどこにいんだ」


「研究室があるらしいぜい。俺たちもあんま場所知らねえから、自分で行きなー」


「そうか」


 ウァルスの言葉に頷き、ジンはその場を後にした。


 そしてジンがいなくなって数秒後、オーラスが不思議そうに首を傾げた。


「彼は復讐鬼でしょ?僕はもっとエルド団長みたいに冷たいのかと思ってたけど、意外と仲間意識強いんだね」


 しかしその場の誰もが、苦い顔をしている。


「うん?違うのかい」


「あいつはただ団長と同じになりたくねえだけだよ。だから無理にでも仲間を意識してるやつだって思われたいのさ」


 ホルスが考え込むような顔をして言った。


「あいつのことは、異能士団でも問題になってる。あいつの復讐に対する態度にも、いろんな意見があるんだ」


「例えば?」


「例えば俺やウァルス、レクト、ガイナルやルフなんかは、あいつの考えを肯定してる。恋人を目の前で残虐に殺されれば、綺麗事なんて言ってらんねえだろ。俺はあいつに同情してる」


 なんだか辛気臭い空気になってきたので、フィクスが居づらそうにもじもじしてる。


「じゃあそこの可愛い青髪の少女…」


「…男です」


「これは失礼、僕はてっきりボクっ娘的なやつかと思ったよ。それで君やディルセイなんかは名前上がってなかったけど、彼の復讐を否定しているのかな?」


 ディルセイは黙り込んでいるので、フィクスが答えることにした。


「僕はジンと幼い頃からずっと一緒だった。だからイリアのことをどう思っていたのかも分かってるつもりだ。だからジンに復讐はさせてあげたい…けど…」


「けど?」


「最近考えが変わってさ。クロスとティリアの気持ちになって考えてみたんだ。このまま堕ちていくジンを僕たちが肯定して、クロスやティリアはどう思うんだろうって」


 クロスとティリアはジンやイリアのことを慕っていた。

 そんな憧れの存在であるジンが、同じく憧れの存在であったイリアの死を悲しみ、自分たちのそばを離れてしまう。

 そしてそんなジンのことを、周りは肯定する。


 クロスとティリアにとってそれは悪夢でしかない。


 だからフィクスは変えたいのだ、ジンの心を。

 彼が復讐鬼でなくなれば、事が良い方向へと向かう。


 ジンの心の成長にもつながるだろう。


「なるほど、それでディルセイは?」


「俺は簡単だよ」


 ディルセイは寂しそうに笑って言った。


「ただ師匠バークの遺言が忘れられねえだけだ」



 ※



「エマって人はいるか?」


「はい」


 機械で埋め尽くされた部屋を見て、ジンは顔を顰めた。

 トアペトラに行った事がないジンにとっては、少し刺激が強かったようだ。


「なんですか?」


「あ、いや、料理する機械について礼を言おうと思ってな。ありがとう」


「なるほど」


 エマはそういうと、椅子から立ち上がってジンの方を見た。


「挨拶はしに来ないのに、なぜ礼だけはしに来たんでしょうか」


「…どういうことだよ」


「いえ、なんとも曖昧な人だなと思いまして。もう退室してもらって結構ですよ」


 そう言われたので、ジンは渋々退室した。

 まさか礼を言って怒られるとは思っていなかったので、流石のジンも少し面食らっていた。


 曖昧、その言葉が特に引っかかっていた。

 気にすべき言葉でもないだろうに。


「ジン」


 不意に呼びかけられ、ジンは呼ばれた方向を見た。


 レクトだ。


「帰ってたのか」


「…まさか最初に君に会うとは思わなかったよ…。よければみんなを集めてくれる?」


「というと?」


 レクトは満面の笑みで言った。


「やっと魔窟を見つけたんだ」

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