03
この学校は帰宅部が少ない。
そんな帰宅部な健太は、誰とも話さずただ黙々と帰るこの道が好きだった。
ただ今日は、そんな好きな帰り道で、周りを気にせず大きなため息をついた。
頭に、あの紙がはっきりと浮かんでくる。
夢なんてない。
考えなかったわけではない。
日本という国は、物心ついた時から何回も何回も、夢に付いて考える時間を与えられる。
それを全てサボるなんて、できっこない。
ただし健太は、何度も繰り返すこの時間の中で、いまだにその目的物を見つけられないでいた。
ないものはない。
健太の生きる人生に、そんな宝物は埋まっていないのだ。
住宅街を抜け、大通りに出る。
ここから駅まではひたすら一本道。
それなりに名のある商店街となっていて、歩いているだけで楽しいとテレビで特集を組まれることもある。
そんな商店街ですら、こんな日の健太には少し色あせて見えた。
ブーーーーという大きな音。
車のクラクションだ。
行方不明だった健太の意識が、グイと現実に引き戻される。
すると前から、思わず仰け反るような強い風が襲いかかってきた。
春一番。
健太はとっさにそう思った。
周りは皆足を止め、少し屈んで風をやり過ごそうとしている。
健太は目を前に向けると、視界の隅に不思議な動きを見つけた。
自由に身動きも取れないこの風の中、驚くほど軽やかな足取りで動き回る人影がある。
影の動きは、まるでバレエのように軽やかな踊りのようだ。
ほんの数秒優雅に舞った後、影はそのまま近くの建物に吸い込まれるように姿を消した。
風が止む。
健太は影を追って、その建物へ向かった。