一般的なプロローグ
俺はごく普通の学生である。幸いイジメとかには会っていない。
まぁあいつらは俺のことをいない奴として扱い、俺もあいつらと無関係という割り切った関係なだけであるけれど。お互いがお互いに無関心ならばイジメなどには発展しないといういい例ではなかろうか?
今日もいつも通りに学校に行き、役に立つのかどうか分からん授業を受け、一人の家で飯食って寝るという決まりきったサイクルを繰り返すだけである。
いつもどおり余裕を持って改札を通り、満員ともスカスカとも言い難い微妙なラインの電車の吊革に手をかけ、財布とスマホをスリから守りながら10分ほど揺られ、目的の駅につき、そのまま学校へと向かう。
道中もたまに一人で寄るカラオケ店、ゲーセン以外とくに目ぼしいものもなく、何事もなく学校にたどり着き、いつも通り誰にも挨拶されず、挨拶せずに教室の一番廊下側の後ろの席に着席する。
無論、俺が教室に入ってきてもチラリとこちらを見る生徒が数人いるだけで、その後興味を失ったように元の会話に戻った。
(あー。今日の晩飯何にしようかなぁ)
まだ昼食も取っていないのに晩飯のことを考えながら、退屈な時間を過ごす。
(暇だな。本でも持ってくるか)
読書が趣味、とは言ってもかなり適当な本のチョイスである。たまに全く興味がなくても100円コーナーで適当に選んだのを買ったりとか、そんなことをしているうちに本棚がそろそろ一杯になりそうなことを思い出し、そろそろ読まない本の処分を検討をし始めた頃、ホームルームが始まった。
「今日は───なので───に気をつけるように」
もちろんまともに聞いている生徒など少ない。どうせ今日は何もない、至って平凡な平日であるのは誰の目で見ても明らかだからである。
「以上、これでホームルームを終了します。各自、気合を入れて取り組むように」
(そんな毎日気合入れてたら気合の方がもたねぇよ)
内心グチグチといいながらも、先生が出て行くのを待つ。そう、いつも通りに。
しかし、今日はそのいつもが覆された日だった。
床が、閃光を放ち、目をつむった直後、俺の意識はそのままブラックアウトした。
しばらく──一分かも、一日かもわからないほど──の間を置いて、目を覚ますと、そこはいつもの教室だった。
ただし違うのは、何人かのクラスメートがいなくなっているということと、手と頭しか動かないことだ。口はもちろん動かないし、足も動かない。
机上に目を向けると、何やら数字の書かれたB5用紙と、鉛筆と、消しゴムであった。
B5用紙には、身体、容姿、能力という3つの欄と一つ離れて余りという欄があり、それぞれの欄にはいくらかの数字が振り分けられている。
50、10、0、そして340という数字であった。どういう数値かはわからないが、まぁ、これがそれなりに重要な選択になるであろう、ということは理解できた。
とりあえず、適当に均等に振ってはいけないと思い、思考にふけっているうちに、他の人間は何人も消えていっている。
前の黒板を見てみると、そこには、徐々に時間が減っていく、タイマーのようなものが見えた。その数値は、残り、凡そ一分。それに言いようもない恐怖と、焦燥感を覚え、余りの欄の340をすべて能力に割り振った。それが終わった時、他の人間は全ていなくなっていた。
そして、俺の体も消えていっていることも、理解できた。指が消え、鉛筆と消しゴムが地面に落ちる。そして、さほど時間のたたないうちに、視界が消え、意識も途絶えた。
久々に地の文をそこそこ書いた気がする。