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あれから丁度一週間、調べによれば私は今日この屋敷から拐われるのだ。
「アルファティリエ…これは遠くから取り寄せた紅茶なの、無駄に砂糖を入れないでちょうだい」
「…はい、母上」
「…何です、その呼び方は?」
「…えっと?」
むしろ他にどう呼べと?母と呼ぶなってことか!?
「失礼いたしました、ライラ様?」
「…そいう意味ではなかったが、まぁいいでしょう。あの人や息子達が居ないときはそう呼びなさい。貴女は賢いからもうわかっているとは思うが、私は貴方が不快なの。本当なら一緒にお茶会だってしたくないわ。ただ…今回はあの人が"わざわざ"遠くからこの紅茶を取り寄せて、母と子の親睦を深めるよう言ったから仕方なくこの場を設けたわ。呉々も、勘違いしないでちょうだい」
母は…ライラ・ディー・バティスチは底凍えするような瞳と声で私との初めてのお茶会を開催した。沢山の花に囲まれた美しい庭に母と子揃っているところは、遠くから見る分とても美しい一枚の絵画にも見える。ただし、近づくにつれて温度がビックリするほど低くなっていくが…
「っ…わかり、ました。ライラ様…」
ここでショックを受けたかのように、俯きながらやっと絞り出したっというような声で答えると、彼女が満足したことが肌で感じ取れることができた。
《…流石だな。我にはそこまでは出来んわ》
ソルテから念話が飛んできた…ちなみに今はテーブルの横に堂々と寝そべっている。勿論、愛らしい猫の姿でだが…
《るーちゃんは天才だからね~♪ははっ、コロッと騙されてやんの!るーちゃん、殺っちゃていい?》
レインもとても愉しそうに念話を飛ばしてきたけど、どうやらちょっと大丈夫じゃないみたい。
《いや、待って!?大人しく捕まる予定なのに、いきなり計画を壊しちゃダメだって…全く…戻ってきたってことはもう頼んだことが終わったんだね?》
《ふふん♪もっちろん!バッチリだよ♪》
「…本当、不気味な子。長は孫娘がとても優秀な後継者だと絶賛していたが…只の贔屓か…お母様の目も衰えたものだ。そんな細腕でいったい何が出来るんだか…」
「……………」
《オーケー!じゃあ、打合せ通りに頼むよ二人とも!》
《ラジャー♪》
「ふん、どうやってあの石頭を篭絡したのです?やはり、その外見でかしら…私とあの人の子で間違いないのに、本当に誰にも似なかったわね…唯一同じだった白銀の髪だって白金色になってきたわ…」
「……………………………」
《待て…レインは呉々もキレるなよ?ルーナの計画を潰したら許さん…》
《はぁ?ソルテこそ足を引っ張んないでよね!あ、引っ張ろうにも出番が殆どないもんね~?ふふ……ざまぁ》
《キサマ……》
《私を介して喧嘩は止めてくれ…さて、そろそろテイラーが着く時間になる。レインはもう行っちゃって…流石にこれ以上は彼女にだってバレるよ…たぶん》
「…何か返事をしたらどうかしら?声を出すなとは言っていない…それとも意思表示かしら?」
「……………………………」
薬の取り替えも終わったし、後は役者が揃うだけ…
「アルファティリエ!返事なさい!」
「は、っはい!」
……気が付けば先程よりも鋭い視線で睨まれていた。もう、なんやねん!
ゆっくり顔をあげ、自分を睨む母を見つめ返す…うん、父上は何故こんな怖い人に惚れたんだろう?
しかしそこで丁度鈴が鳴り、客人が着いたことを知らせた…
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