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今回で一段落です!
通されたのは母の作業部屋だった。母は父が居ない間はよくこの部屋で"何か"をしているのだ…私が部屋に入ると母は無感情にただ視線を寄越した
「…アルファティリエ、あなたには私の母の伯爵領に行っていただきます。準備など必要ありません。ただ、彼らが帰るときは一緒に着いきなさい」
ぅおーい、それはパパの許可得ていないだろう!?てか、もう決定事項なのか!?思った以上に早いよ!まだ何も準備してないよー!
「………えっと」
「わかったわね?…さぁ、もう出てらっしゃい。もう用はないわ」
「っなんで?」
せめて理由くらい知りたいものだ。少し勇気を出して彼女に聞いてみたら、その瞳が揺れたのが見てとれた。
「……いずれわかる」
彼女はそれだけ言って、もう私の方を見向きもしなかった。ただ、何となく何かを必死に堪えているような様子が伝わってきた…
「………わかった」
ここに居ても仕方ない。とりあえず、朝食だな!そう思って私を部屋を出ることにした。
部屋に戻ったらヴァネッサが既に戻っていて、私の離乳食が用意出来ていた…
ああ、早く普通のご飯が食べたい!流石にミルクのみはなくなったけれど、食事に関してはまだまだ赤ん坊が食べるものしか用意してくれない…いや、確かにまだ1歳しかないから当たり前だけど…
「……」
工夫はしてくれているんだけど、何だかダイエットしているみたいだ。
「っもう!マリーったらルーナ様を何処に連れていったの?心配したじゃない!」
「奥様がお呼びだったので連れていきました」
ヴァネッサが頬をぷくっと膨らせながらマリーに詰め寄ったけれど、彼女は特に気にした様子もなく平坦と答えた。これもいつもの光景だ…
この二人には結構な温度差があるが、ヴァネッサはあまり気にしていない…いや、たぶん気づいていないだろうな…
「えっそうだったの?奥様が呼ぶとか珍しい!何だったの?」
「少し話をしただけです。それでは、仕事がありますので失礼致します」
マリーは用件は終わったとばかりに早々に私の部屋を退室していった。
「あっ!…まって、ってもう行っちゃったか…」
なんか、ファイト!!仲が悪いって訳ではないけれど、何だろう?ちょっとヴァネッサが避けられている気がするのは、気のせいじゃないと思う…
「ま、いっか!さぁ、ルーナ様!ご飯にしましょうね♪」
でもまぁ、彼女が元気ならそれでいいかと思う!
その後は食事も終わり、父や兄達が訪ねてきた。みんな昨日の事を心配してくれたり、誉めてくれたりして、基本的にいつも通り平和な時間を過ごした。
数日後、いよいよこの屋敷を出る日になったんだが…
「私のルーナは何処にもやらん!」
案の定パパは反対をした。というか、話していなかったのか?!
「あなた…昨日は賛成してくれたでしょう?この子のためだって言ったじゃない…」
「っだが!やっぱり寂しいじゃないか!次に会うのが早くて半年後など!」
ああ、なるほどね。私も正直寂しい、けれどここで私も行きたくないなんて言ったらめんどくさいことになるのが目に見えているから、ちょっと母に協力しよう
「おばあちゃん、おうちたのしみ!」
それを聞いた父がガーンって音が聞こえてきそうなくらいショックを受けたようだ…パパ、ごめん!
「っぐ!ルーナが楽しみにしているなら仕方ない。私も我慢する…ルーナ、気を付けて行ってきなさい。愛しているぞ…私の可愛い天使」
最後にいつも通り額と頬にキスをしてくれて、馬車まで運んでくれた。
「貴方も大袈裟ねぇ…別に今生の別れじゃないんだから」
「お義母様、ルーナを頼みましたよ。何かあれば直ぐに連絡してください。いえ、やっぱり毎日どんな様子か教えてください!それから…」
「ああ、もう!わかったわ!出来るだけ様子を手紙で書きますわ!それで問題ないわね!」
父はまだ言い足りないかのような様子だったけれど、出発を遅れてしまうと泊まる予定の宿まで着くのが遅れてしまうだろう。
「いってきます!」
馬車の窓から乗り出して元気よく手を振ったら父が泣きそうな顔で繰り返してくれた!母は複雑そうな顔で手を繰り返した。それにはちょっとだけ驚いた!
「うふふ♪ああ、本当に楽しみですわ!ルーナちゃんも楽しみで良かった!あなたは将来私達"ディー"一族の長になるのよ!」
「"でぃー"?」
一族の長って伯爵領を継ぐって事だろうか?
「ええ、そうよ!みっちり訓練はするから安心してね!あなたは素質があるからきっと大丈夫よ!」
祖母は次から次へとどんなに私を待っていたかとか、これで分家から選ばなくて良いだのと色々話してくれたけれど…わかったのは、これから行くところでは何かの訓練をされるのと、今までの生活ががらりと変わることは確かだった…
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