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任務が終わり少し浮かれすぎたのかもしれない…何処を向いても人がいっぱいで、匂いや気配を探すのも大変だ。本気で発信器なるものを作ろうと決心したのは言うまでもない。
「ソルテー?レイン~?」
呼び掛けても周りの雑音で聞こえるはずもなく、仕方ないからこのままお店などを回って宿屋に帰れば会えるんじゃないかと思い当たる。
さすが王都と言うべきか…食材や魔道具など種類も豊富で面白いものが沢山ある!仕事はいつも一人で受けることも多く、他領では目立たずに行動していたせいで商店街などにも興味を持てなかった。今回は仲間が居るからこその寄り道なのだが、結局は仲間とはぐれ一人で行動する事になってしまった…
アイテム袋の性能には驚いた。食事を中に入れるといつ出しても、入れたときと同じ状態で取り出すことができる!アイテムボックスには携帯食を入れることはあっても、出来立てなどの料理は入れたことがなかったからね!
「すみませーん、これはいくらですか?」
「おっと、そのアイテム袋でしたら30リラでございます」
「ふむ…」
思った以上に高いな…買って中の術などをじっくりと調べ、アイテムボックスの改善で使いたかったけれど結構なお値段だ。余裕があるとはいえ今のところ必要ないと思うと別に今は要らないか。自分で作るのも楽しそうだし…他にも素材なども豊富でそちらは遠慮なく買い物した!龍の鱗や爪など珍しいし中々手に入りづらいのだ。値段はかなり高かったけれど、良いものを買った!
お店を見て回っていると、時々路地裏に入っていく人々を見かけた。買い物も終わっていたし、興味本意で覗いたら奴隷市場に入ってしまった…何より驚いたのが人間に混ざって獣人が居たことだ。というか、獣人は魔族じゃないのか?ここに来て一番の発見である。
「おい、ここはオメェのようなガキが来るとこじゃねぇ!さっさと消えな!」
……まさか周りにではなく檻に入っている男の人に言われるとは思わなかったよ。髪も延び放題で顔がよくわからないし、着ているものはだいぶ汚れていて臭いも酷い…ただ、灰色の前髪から少し見えた紫色の瞳は他の奴隷達のように死んでいなかった。むしろギラギラしていた。それが何となく気を惹いて欲しいと思った。
「すみませーん!この人いくらですか?」
「あ"ぁ?…坊主、コレは手が掛かる。あっちのガキの方が大人しくて遊べるぞ」
「この人がいい!いくら?」
「…ッチ…忠告はしたからな!300リラだ」
…ふむ、思った以上に安いんだな。この世界に奴隷が居るのは分かっていたけど、人の命って意外と安いんだな。まぁ、暗殺業をやっている私が言うことじゃないけれど…
「買います」
お金を渡し、契約書にサインをする。最後に、奴隷の首輪に掛かっている術に血を一滴垂らして終わり。首輪にはもし逃げてしまったら、飼い主が命じるだけで爆発する仕込みだ。大抵のものはこれが怖くて逃げられない。何ともたちの悪い魔道具だ。
「…ガキ、どいうつもりだ?…あ"ぁ?」
…う、うーん?奴隷ってもっと主に対して腰が低いものだと思っていたけど…コイツ態度でかいな…生き生きし過ぎじゃなね?
「ガキじゃない、マスターと呼んでください。貴方、いい筋肉をしていますが前は何をやっていたのですか?」
「っは!テメェに教えること何てねぇよ!」
さて、買ったはいいけど…この様子じゃソルテ達に会わせたら…会わせたら……あ、やばい。絶対怒られる!というか返してこいと言われるのが目に見えている!
「生きたいのなら口の聞き方を間違えるな。あと、テメェじゃない。まずは礼儀を教えるところからになりそうだね…」
じゃないとあの二人に確実に殺される…
「礼儀だぁ?そんなもの、何の役に立つってんだ!俺は誰にも屈するつもりはねぇ!従順な奴が欲しいなら人選を間違えたんだな!嫌なら他のにしやがれ!」
本当にこの人元気だな。あと、臭い。風呂に入ってもらって髭も剃って髪も切ろう!
「まぁ、いいや。まずはその臭いを落としてからだな。ついてきなさい」
「はぁ?!聞いてなかったのかよ!?俺は従わねぇって言ってるだろうが!」
「はいはい。元気なのはもうわかっているから…自分の状況をもうちょっと理解しようね?もう貴方はボクが買ったのだから言うことを聞くしかないの。というか、その格好恥ずかしくないの?臭いよ?」
「っぐ……痛いところを突きやがって…後悔しても知らねぇぜ!」
こうして私気の迷いで人生初の奴隷市場で、態度のでかい奴隷を手に入れた。
その後は何とか宿に帰り、部屋を変更した。さすがに今日会ったばかりの人と一緒に寝られないからね!ベッドが二つある部屋に変更した。部屋には浴室が無かったから、即席で空間魔法で作った。共用の浴室に連れていったら周りが嫌そうな顔をしたからだ。
「さぁ、脱いで。身体は自分で洗ってくださいね?これを使ってください。あと、お風呂にも入って、髪の毛はこれで洗って下さいね。外で待っていますから…あぁ、服はここに捨てて。新しいのを持ってきます」
「……お、おう」
アイテムボックスから色々出していたら何故か大人しくなった。凄く驚いている様子だが、今更どうしたんだろう?
「何ですか?気になることがあるなら、後にしてください。臭いを落とした後に聞きます。あ、あとコレ…髭も剃ってください」
「……おう」
よし、後は服だけ…ちょっくら買ってくるか。部屋にいつもの結界を張り、逃がさないよう新たな術も上乗せする。
一番近くにあった衣服のお店に入り、店員にサイズを伝え上下黒の服と物持ちが良さそうなブーツとベルトを買った。
宿に近づいたらソルテとレインが居てすぐに気がついてくれた。というか、一緒だったのか…
「るーちゃん!探したよぉ!」
「まったく…こやつのお守りは疲れたぞ」
「聞き捨てならないね、僕がいなかったら困ってたのはソルテでしょうが!」
「まぁまぁ、合流できてよかったよ。明日ははぐれないようにしようね。夕飯は食べてきた?私は宿で食べようかと思っているんだけど」
「まだだよ~!るーちゃん探しててそれどころじゃなかったし…って、るーちゃんは探してくれてなかったのね」
「いや、だって宿で会えると思ったし…結果オーライ?」
「…む…ルーナ、部屋を変更したのか?」
どうやって切りだそう…まぁ、見せてからでいいか!そういえばまだ名前聞いてなかったな…
「…あれ?部屋に人の気配がする!」
「……………」
「……ルーナ?」
「っ!帰ってきたか!」
部屋に入ったら浴室に居た彼にも帰ってきたことがわかったらしい…水の音が聞こえたからお風呂に入ってくれていたのだろう。それよりも…
「……ふふ…るーちゃん、何で野郎が部屋に居るのか説明してくれるよね?」
「………」
うぅ…レインはニッコリ笑っているのに目が怖いし、ソルテは無言の圧力をかけてくる…
「…拾った」
「「返してこい!」」
うん、そう言うと思ったから言いづらかったんだよ!
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