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魔王様に腰をしっかり捕まれ身動きが出来ない状態でソルテと向き合う…ソルテは私を視界に入れて目元が少し緩んで、腰にある手を見て固まり、魔王様を殺気の籠った視線で睨んだ。
「ギルバァートォ……」
ゾワッ…ソルテは恨みでもあるのか寒気がするほど低い声で魔王様の名前を呼んだ。あ、これは完全にキレてる…
「よう…久しぶりだなぁ?そんな目で見るなよ、照れるじゃねーか」
魔王様は実に楽しそうだ。ソルテが名前を知っている事から2人は知り合いって事はわかった…けれど私を巻き込まないで欲しい!切実に!
「…ふざけるな!その子を返せ!」
ソルテの周りがざわついた。一斉に私を見る瞳が複数。めんどくさい…これ、私も参戦しなきゃいけないのか?
「くっくっく…はっはっはははは!なんだ?この子供がそんなに大事なのか?何に対しても無頓着なお前が執着を持ったのがこんなガキとはなぁ!これは面白い!ルナ、どうやってこの男を籠絡したんだ?」
「キサマァ…ルーナの名前を気軽に呼ぶな。穢れる!」
っえええ!!?そこなの!?というか、
「呼んだくらいじゃ汚れないよ!困るわ!」
いい加減突っ込ませてもらう!私を挟んで喧嘩はやめてくれ!
「ルーナ!無事なのだな!?その男に何かされたか!?」
「…ああ、うん。大丈夫ナニモサレテナイヨ…」
お風呂に入れられたけどそれだけだ…それだけ…うん、知らない人に身体触られたのは…っう!あ、泣きそう。忘れたい…
「……っく!…やはりギルバァートォ!キサマ、何をした!?何故ルーナがそんな顔をしている!?」
「おいおい、冗談だろう?熱くなるとか、お前らしくもない。もっと冷静な男だろう?なぁ、"黒ノ王"?」
…"黒ノ王"?ソルテは有名人だったのか…何か周りの魔族達の雰囲気が変わった…まるで恐れるような?畏怖と渇望の眼差しでソルテを見ていた。女性陣に関しては最初から視線がハートだったものが、ギラギラしたハートに変わった…
「何と!黒ノ王様でしたか!」
「きゃー!黒ノ王様の人型が美しすぎるわぁ!」
「今度の会議には出席予定なのだろうか」
黄色い声と真面目な声を飛び交っている中私は思う、後でソルテに詳しく聞く必要があるな!
「はぁ、はぁ、早すぎっ、ソルテ~?るーちゃんの気配がしたって言ってたけ、ど……るーちゃん発見~♪また厄介な人に捕まったなぁ…そんな気はしてたんだけど」
レインは急いできたのか息が上がっていた。そして私を見つけ状況を直ぐに理解したようだ。
「レイン…もう一つの気配はお前だったか」
「ご機嫌麗しゅう、魔王様♪お久しぶりですね~?」
「レイン!貴様もその男と組むのなら、容赦はせんぞ!」
「あぁ、怖い怖い!別に心配しなくてもいいよ~だいたい、僕はるーちゃん大好きだからねっ!今更僕からるーちゃんを奪おうだなんて…ふふふ…いくら魔王陛下でも、許さないよ?」
最初の方は普通だったのに、最後の方はちょっと怖いぞ。笑顔なのに目が全然笑っていない。
「成る程な…返したくばついて来い」
魔王様は今度は私をお姫様抱っこして、席をたった。一瞬にして中庭らしきところに移動してしまって、驚いた。抱っこしたまま、噴水の縁に座った。
「お前はあの2人に何をしたんだ?」
「いや、別に大したことはしてないんだけど…そんなに変わってるの?」
「ああ、黒ノは特にな。レインは狂喜無しの戦闘態勢は初めて見たぞ」
「それは…私も初めて見たけど」
「あと、もう一つ…何故お前はこの領域で無事で居られるんだ?ここの魔素は人間に毒だ。数時間で身体を蝕み苦しむ筈だ。何故お前は無事なんだ?」
魔素が毒?…というか毒にしてはいつもより身体が軽いし、魔力も安定しているんだけどな。
「いや、知らんし。あと、いい加減離してくれたっていいんじゃない?」
「まぁ、待て。もう少しあいつらと遊ばせろ。俺は退屈なんだ」
程なくしてソルテとレインが着いたんだけど…
「グルルルル…何故まだルーナを抱えている!?放せ!」
「んふふ♪僕ですらあまり抱っこ出来ないのに…許すまじ!」
なんか、なんとなくだが、喧嘩の種にされるのって面白くない。
「なら、ここでこの俺と勝負するか?そしたら返してやってもいいぞ」
「その勝負、私が受ける」
「「「…は?」」」
さっきからずっと居るのに蚊帳の外なんて面白くない!なんかわからんが、私が原因なら、自分の身は自分で守れるわ!
「聞こえなかった?この私が勝負を受けてあげると言っているの…文句ある?」
6歳にして私は魔王様に勝負を挑み…完膚なきまでに倒してしまった。
「ックソ!何故だ!?」
「っふん!我が鍛えたからな!貴様ごときに負ける訳なかろう!」
「あれ?そういえば、最近はソルテも負けてるんじゃなかったっけ?」
「もう一回だ!お前、イカサマしてないだろうな!?」
「ふふふ…いいでしょう。私に勝ったら1回だけ何でも言うこと聞いてあげてもいいんですよ?負王様♪」
ガチンコ勝負?誰がするか!そんな負けることがわかる勝負なんて!生憎と負けず嫌いなものだから、確実に勝てる勝負をすることにした。
魔王城の庭で壮絶なカードゲームをやった。勝敗?もちろん、全勝した。




