16
恐怖のランニングが終わり、ソルテは魔法でカマキリと蜘蛛をもとの大きさに戻した。
「少し休憩したら次は武器の扱い方を教える…得意なものはあるか?」
「いや…わかんない…そんなに扱ったことはないし…強いて言えばナイフくらいしか使ってない」
「そうか…なら先ずはナイフの扱いからだ」
「はーい」
ソルテが鍛えてくれる事になって、最初は喜んでいたけど…甘かった!虫のことがあってからもう2度と彼の質問には油断しないと心に誓ったくらい!
だが今までシルフや他の精霊の力を借りながらやってきたことも多かったから、自分の力で出来るようになるのは魅力的だ!
それに…師匠は厳しそうだけれど、視ているだけで癒される!だって猫だよ?今は本来の大きさに戻っていて、休んでいる間は寄りかかっても文句は言ってこない…最高だ!
「ねぇ、ソルテ。何でこの森に来たの?」
「…何となくだ」
「ふーん…そっかぁ。でも来てくれて良かった…私はソルテと出逢えて嬉しいから!」
仲良くなるためには素直でいることが大切だ!これからずっと一緒にいる以上信頼関係は早く築かなければならないだろう…それに、"騙す相手以外には誠実であれ"と何処かで聞いたことがある。
「…お前こそ我が本当に怖くないのか?」
「お前じゃない、"ルーナ"」
「…ルーナは我が怖くないのか?」
「うん!…あぁ、でも最初はちょっと怖かったかも!でも今は怖くない!」
「そうか…恐かったのに何故契約を結ぼうとしたのだ?」
「だって、ソルテは猫だったし…可愛かったし…今も可愛いし、毛並み最高だし!欲しいって思ったんだもん!」
「…そ、そうか」
ソルテはそれ以来何だかソワソワしていて照れているようだった。ゴロゴロと喉までならして大変可愛いらしい!
休憩も終わり次はナイフを使った戦い方を教えてくれるかと思っていたら、今日はまだ教えないらしい。先ずは森にいる動物を狩ってこいとの事だ…私の実力を見たいらしい
私はいつものように高いところに登ってからターゲットを探す…視力には結構自信があるからちょうどいい獲物を探してみたけれど、見つけたのは鹿や猪くらいだった。
「獲物は何でもいい~?」
「ああ。どのようなスタイルで戦うのかが知りたいからな」
それなら…一番近くにいる猪を狙うことにした。
先ずは気配を消してから迅速にけれど慎重に獲物に近付くこと…身体が小さいのと力がまだ足りないため、木に登って重力の力も借りて猪の首の後ろに狙いを付けて体重をかけて刺す…
「プギャアアアア!!!!!!」
ナイフは根本まで差し込めたけれど、一撃で倒せることは出来なかった。素早くナイフを抜き隠れる。
「プギャァアアア!!プギィアアアアア!!!!!!!」
猪は苦しみながら暴れ始めた。その為傷が更に開いて血が沢山出てくる…前の自分はこんな場面を見られなかった。何せ血が大の苦手で見るだけで気絶しそうだった…今は何も感じない…それが時々怖くなる。
猪がだいぶ弱ったのを見てもう一度狙いをつける。今度はさっきよりも力を入れて上から首を切断する勢いで切りつける!
「プギャアアアアアアアアアアアア!!!!!」
猪は断末魔をあげながら死んだ。
実は殺したのが初めてだった…確かに暗殺者として育てられてはいるけれど、今までは家の家畜が殺されるところだけ見せられていた。死に慣れる為だと言われていたけれど、自分の手で始末したことはなかった。
「…終わったよ」
「そうだな…まぁ…概ね良しとしよう。しばらくの目標は一撃で倒すことだな」
「…うん」
「最初から完璧に出来るとは思っていない。そんなに落ち込まなくていい…お前は人間にしてはいい線行っているからな」
「…うん…あ、ルーナだよ!」
「…反応するところはそこか!やっぱり変な奴だ」
「えへへ♪それほどでも~」
「褒めてない………今日はここまでだ」
「え?まだお昼過ぎだよ?まだいける!」
「飽きた…腹も減ったしな。続きはまた明日だ」
………あぁ、猫ってマイペースだったのを忘れていた。
「…わかった。じゃあ、先に帰っているから夜までには帰ってきてね!絶対だよ?」
ずっと一緒にいるのも窮屈だろうと思っての提案だったが、逆に物凄く驚いたように見られた…
「ほう…では夜にまた会おう我が小さな主よ」
かなり心配だけれど、先ずは自分から信じないといけないと思ったのだから目を離すことにした。大丈夫…きっとソルテは戻ってくる!
今度はシルフの助けなしで急いで屋敷に戻ることにした。そういえば、スラム街の子供達はどうしているんだろう?帰りに彼らに会ってから屋敷に帰ることにしよう。
読んでくださりありがとうございます!ブックマークや評価をしていただけると作者のやる気が上がります(笑)よろしくお願いいたします!