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2話

恥ずかしさから公園を飛び出して帰路につく。

それにしてもさっきの女の子不思議だったな……

背景に桜を抱えて立つ姿はとても奇怪で幻想的だった。

カメラを持っていたら、筆者体として一枚取らせてと懇願していただろう。

家に帰ったらカメラを発掘しとこう。


アパートに着くと両手で持っていた荷物を左手に抱え込むと、ポケットを弄って財布を探す。

いつもの癖で財布の中に鍵を入れていたはずだ。

あれ、こっちじゃなかったけか?

荷物を右手に持ち替えて逆にポケットを探す。

……ない。


「最悪だ、どこかに落としてきたか」


なんてことだ、来たばかりの町で財布と鍵を一度に落とすなんて幸先が悪すぎる。

どこに落としてきた?少なくともたい焼き屋のところで財布はあった。

ということは公園か?ベンチに座った時にもしかしたら……


「しょうがない、今から取りに行くか」


踵を返して公園に戻ろうと、不意に袖を引っ張られる。

びっくりして後を振り向いくと、そこには先程公園で出会った少女が立っていた。


「えーと、君はさっき公園の……どうかしたの?」


表情一つ変えずに少女は視線を下に向ける。

つられて俺も下を見ると、俺の財布の端を摘んでもっていた。

……その扱いはどうなのでしょうか。


「もしかして、財布わざわざ届けてくれたの?」


俺の質問に対して少女はコクンと一回頷いた。


「そっか、わざわざありが――」


ぎゅ~


またなんか鳴った。


少女は何かを訴える目でこちらを見ている、もうたい焼きはないぞ?


「え、えーとお腹減ってるなら家に上がってく?引っ越してきたばかりで、まだ片付いてないんだけど」


少女はもう一度コクンと頷いた。

先程までとは違い表情が明るく見えた気もする。


ドアの鍵を開けて家に入る。整理していない部屋に女の子を招くのは不本意だが、誘ってしまったものはしょうがない。

電気を付けて明るいところで、改めて彼女をみる。

……公園ではあたりも暗く姿がしっかりと見えなかったが今は良く見える


服装は上が黒のパーカーで下が白のスカート、全体的に土で汚れていたり、木にでも引っ掛けたようなほころびが見てとれる。

髪型は黒髪で腰まで届くロング、髪はボサボサでここ2、3日は風呂に入って無いような感じがする。

だが公園で思った通りの綺麗な顔立ちをしていて、スタイルも良さそうな感じに見える。


家出少女か何かだろうか?


「コタツにでも入って待っててよ、簡単なものだけど直ぐに作ってくるから」


ついでに風呂にお湯入れておこう……別に他意はない。


さて、とは言ったものの、何を作ろうかな?

次のメシを炊いておいて正解だったな。

二人分作ると考えて、材料と手軽さからオムライス辺りが良いだろうか?


「オムライス作るけど、苦手なものとかある?」


少し声を大きくして問いかけてみる。

少女は首を横にふるふるとだけ振って応える。


どうやら大丈夫みたいだな。よし、そうと決まったらさっさと作るか。



----------------------------------



案外今日のオムライスはうまく出来た気がする。

チキンライスの味付けはいい感じの濃さで作ることが出来たし、卵をフワッフワッかつ上手く被せる事が出来たので大満足だ。


少女はお腹空いてるみたいだったし、先に食べててもらうか。俺の分もどうせ直ぐに完成するのだ。

ケチャップをジグザグにかけて、この自信作を先に少女の前に置く。


「ほれ、あんまり大層なもんじゃないけど」


そう言って少女の方をみると何故か困惑したような顔をしていた。

ああ、そうか。


「俺の分も直ぐにできるから、先に食べてていいよ?あとこれ」


少女は俺の手渡した、スプーンをぶんどってハムハムと食べ始めた。

俺の分も早く作らないと一緒に食べられないかなこれ?なんてな。


自分の分もすぐ作ったが、少女は半分食べ終わっていた。

こ、こいつ早い!ついそんなことを思いながら自分も食べ始める。すぐに少女は食べ終わり、俺のオムライスを見ている。


「た、食べる?」


いいの?とでも言いたげに一度首をかしげたあと、少女はすごい勢いで首を縦に降り、俺のオムライスを奪って食べ始めた。

……別に全部あげるつもりはなかったんだがな。


俺の分のオムライスも無くなったから、その間少女の事を見ていたが、本当に食べるの早いな、ここ最近本当に何も食っていなかったのか?

彼女は何者なのだろうか、気になる。


そうこう考えてる間に少女がオムライスを食べ終わり、満足そうな表情で後ろに倒れた。

食べた後直ぐに横になると牛になるぞ?でも、牛よりは猫って感じだけどな。


ほんの10分ほど前ぐらいには、2人分のオムライスがあったであろう空皿を洗い場に入れて、自分もコタツに入り直す。


「うまかったか?」


と聞くと少女は起き上がり2回首を縦に降った。顔が非常に満足そうな表情をしており、作った甲斐があるというものだ。

答えてくれるかは分からないけど、ダメ元で聞いてみようと思い尋ねてみた。


「君って、なに?」


それを聞くと少女は数秒考えた後に答えた。


「我輩は猫である」

「……え?、いやお前猫じゃねぇだろ?」


第一声がそれかよ?

まあ、猫に似てるようには感じたけど。


「名前はまだない」

「いやそれが一番気になるんだって!」

「生まれた場所も」

「わからないんだな、それはわかる」


少女は少しふてくされた顔をしながらこっちを見た、少しドキッとしたのは内緒だ…


「名前本当に無いの?」

「名前はまだない」

「それ、さっきも聞いたって!」

「マダ……ナイ?」

「いやそれ名前じゃなくね!?」


いくら猫嫌いでもそんな名前つける人いないだろ。

このまま君ってのも呼びにくいし、なんて呼ぶかなぁ


「ねぇ、名前は聞かないことにするからさ、なんて呼べばいい?」

「………」


少女は頭に指を当てて、3秒程度考えた後に、急にハッした表情を浮かべ、手を丸めて猫のポーズをしながら答えた。


「ミャア?」

「…ニャア?」

「ミャア」

「…ミャア?」

「ミャア」

「…ミヤ?」

「ミヤ」

「いや今お前言い換えなかった?」

「ミヤ!」

「じゃまぁ、ミヤでいっか」


本人がそれでいいって言うならそれでいいか。

あと、確認のために聞いておかないとな。


「ミヤは家に帰らなくていいのか?」


「……」


ミヤは口に出さずに首を縦に振った。

少し怪訝な表情をしていたようにもみえる。

これ以上触れるのは不味いか?名前も言いたくないくらいなのだから当然か。


「あ、風呂湧いたから入ってきたら?」


話題を変えるためにも入浴をすすめる。

第一汚れたままじゃミヤも居心地が悪いだろう。


首を縦に振ると、自分の衣服を心配しているような素振りを見せる。

あぁ、そっか。


「俺のジャージで良ければ用意するよ、下着は……まあ洗濯したあと、すぐに乾燥機掛けるから」


ミヤは頷くと、コタツから出て風呂場に向かった、そのあと2分後ぐらいして風呂のドアの開閉の音がしたので、着替え場に向かい一言確認を入れる。


「風呂入った?」


返事がないので、中に入り自分の寝間着として使っている中学校の頃の紺色のジャージとバスタオルを置き、ミヤの着ていた服を洗濯機に入れた、ちなみに下着は黒だった。

べ、別に変なことは考えてないんだからね!


それからミヤの風呂を覗こうという邪念を消すために15分程、何をしようかと考えてみた結果、布団を敷くことにした。


まぁ多分ミヤが泊まる事になるだろうし、女の子に寒い思いさせるわけにも行かないし、だからミヤの為の布団を用意して置こうと言うわけだ、決して変な意味ではない。


なんやかんやでミヤが風呂から上がった音がして、脱衣所のドアが空いたから、そっちの方を見るとミヤがいた。……バスタオル姿で。


「脱衣所にジャージ置いてあるからそれに着がえて!!」


ミヤは頷き、また脱衣所に入って行った

あいつバスタオル姿見られても表情一つ変わらねぇのかよ!?


それよりなんだあの太もも、スタイル良いのは見て分かってたけどあの太ももの肉付きは素晴らしい。

すべすべで透き通った白い肌、表面がパリッとしてるいい感じの張り具合、内腿の柔らかそうな感じ、膝枕してほしい…


おっと興奮してしまい、ミヤの太ももの直感的感想を述べてしまった、風呂入る前は太ももがスカートで隠れていたから見えなかったのか。

脱衣所のドアが開きジャージに身を包んだミヤが出て来た。

平常心を保とう…


「太ももフェチ?」

「人の心をよむなぁぁぁ!!」


平常心が崩れ去った瞬間であった…


「じゃ次は俺が風呂入って来るから、ミヤはドライヤーで髪でも乾かしといて」


ミヤはいつものごとく首を縦に降って答えた。

俺は脱衣所に向かい、服を脱いでから風呂に入った。体と頭を洗い湯船に浸かると今日一日分の疲れが全て出てくるかの様だった。


「今日は色々あったなぁ」


初めてこの部屋に来て、家具の配置を考えたりしていたら時間がなくなって、夕飯材料を買いにいったら、気のいいおばちゃんにたい焼きを勧められて、帰り道に綺麗な公園を見つけて、そこでたい焼き食べてたらミヤが現れて……


本当にあの少女は何者なんだろうか、猫?人間?家に帰らなくていいってどうゆう事だ?その辺風呂から上がったら聞かなきゃな。

ちょうどいい具合に体温が上がってきたので風呂から上がり、服をきてリビングに行くと、ミヤが布団で寝てた。


「ミヤ、相当疲れてたんだろうな」


そりゃそうかもな、服がボロボロになっててお腹も空いていたみたいだからな、ここで無理に起こすのも悪いし寝かせておくか。

聞きたいことは明日起きてからでも聞いてみよう。


落ち着いてよく見てみるとミヤって――


「かわいいな……」


はっ!無意識に声に出てしまった。

でもこの可愛さはなんだろうな、人に向ける可愛さよりペットに向ける可愛さに近いのだろうか…

まぁこれもまた明日にでも考えるか。


「じゃおやすみ」


そう言って電気を消してコタツに入るとすぐに意識は夢の世界へ沈み込んで行った。


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