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お出かけの物語 桜 美咲編

 5月3日(土) 憲法記念日


 俺が起きたとき、そこはいつもの寮の天井ではなかった。そして横を見ると、桜さんがスヤスヤと眠っていた。


 これは一体どういう状況なんだ!?

 

 俺は必死に記憶を探っていく。

 思い出した。

 確か桜さんの家に泊まる事になって、ここは桜さんが用意してくれた部屋で、昨日は雷が凄くて、桜さんが一緒に寝たいって言ってきたんだ。


 俺はスマホで時間を確認する。まだ朝の5時だった。

 5時間しか寝てないじゃん。


 しかし目が覚めてしまったんだ。桜さんの寝顔を見てとこう。


 え、目が覚めたなら起きろって?無理なんだよ。

 桜さんに腕掴まれて動けないんだよ。


 俺は桜さんの寝顔を見続けた。ふわぁ

 眠たくなってきた。まだ5時だしひと眠りするか。


 おやすみ


 ◇


「逢…君……て」


 なんか桜さんの声がする。夢の中まで桜さんが出てくるとは。


「逢坂君起きてってば」


 やけにはっきりした声だな。


「逢坂君!起きて!」


 俺は飛び起きる。夢じゃなかったのか。


「やっと起きたね。おはよう逢坂君」


「お、おはよう」


 俺は挨拶をしながらも時計を見る。

 時刻は7時28分だった。あれから2時間も寝てたのか。


「もう朝ご飯出来てるよ」


「ありがとう。いただくよ」


 俺はリビングに行き用意してくれた朝ご飯を食べる。


 朝ご飯はご飯と味噌汁と卵焼きと焼き魚という和食だった。

 朝はいつもトーストを食べている俺からしたら珍しい朝ご飯だった。

 これも桜さんのお姉さんが作ってくれたのか、昨日の夕ご飯と同じく美味しかった。


「逢坂君今日って何か予定ある?」


 俺は恵からの連絡が無いことを確認する。


「いや、特にないな」


「だったら一緒にどこかに出かけない?」


「いいよ。出かけよう」


 即答だった。


 俺がそう答えると桜さんはすごく嬉しそうにしてくれた。

 

 俺は借りていた部屋で着替え出かける準備をする。


「桜さん。どこに行く?」


「とりあえず逢坂君は私の事名前で呼ぼうか」


 ええっ!ハードル高くない?しかもいきなりだな。展開に追いつけん。


「み、み、美咲さん」


「さんもつけちゃ駄目」


 ちょっと無茶ぶりだな。


「ええっ!?」


「あの生徒会に入った子は呼び捨てで呼んでたのに……」


「うっ」


 恵といるところを見られてたのか。それで何か格差を感じちゃったと。


「私もこれから零君って呼ぶから」


「み、美咲。これで良いのか?」


「うん!」


 美咲は笑顔を浮かべる。これで良かったのだろうけどほとんどの男子を敵にまわしたな。学校に行くのが嫌になってきた。


 コミュ力が10上がった。印象力が5下がった。まあこれは仕方が無いな。


 ◇


 俺達は現在、電車の中にいる。今まで俺も知らなかったのだがどうやらここは大阪が舞台になっているらしい。その割には言語が標準の日本語にされているので、関西弁を喋っている人がほとんどいない。本当に大阪なのか?


 でも大阪が舞台って珍しいよね。


 天王寺で下車し超有名なアニメグッズを売っている店に来た。女の子と遊びに行くのにアニメ専門店ってどうよ?

 何かが間違っている気がする。


 ともかくその店でラノベの新刊などをチェックする。めぼしい本はなかった。残念だ。


 美咲は本こそ買っていなかったが、下敷きやクリアファイルなどの実用品を買っていた。

 

 俺達は次に近くのショッピングモールに来ていた。まず服を見に行く。美咲はいろいろと試着している。

 そんな中俺が気になった服は白いワンピースだ。清楚な容姿と合わさってどこかのご令嬢に見える。

 

 その服は俺が買ってプレゼントした。3000円と意外に安かった。

 こうもっと5000円!とかかと思った。


 美咲は俺がプレゼントした服をそのまま着てくれた。すっごい似合ってるな。


「どう?零君」


「すっごく似合ってるよ。お金持ちのお嬢様みたいだ」


「そうかな…」


 美咲は恥ずかしそうに頬を染めてそれでも嬉しそうにはにかむ。


「じゃあ次は零君の服だね」


「えっ?俺は良いよ」


「だ~め」


 俺は美咲に男性服の売り場に連れて行かれる。


「えーと零君に似合いそうな奴は?っと」

 

 美咲は一生懸命俺の服を選んでくれている。


「これかな」


 美咲は一着の服を持ってくる。俺は試着室で試着してみる。


 美咲の選んでくれた服は白のデニムにベージュの長ズボンだった。

 俺にはこの服の良さは分からないけど、俺が選ぶのよりは良い気がする。


 俺はこの服を買う事にする。上下合わせて6000円した。

 高いわー。これで9000円も使っちゃったよ。


 俺も買ったばかりの服を着る。


「良い感じだよ零君」


 美咲がそう言うのだから大丈夫だろ。大丈夫だと信じたい。


「そろそろお昼時だしご飯食べにいかない?」


 俺は不安を払拭するために話を変える。


「そうだね。何を食べようか?」


 うーん。俺、美咲の好き嫌いとか知らないしな。とりあえず近くのファミレスに入るか。


「ファミレスとかどう?」


「そうだね。ファミレスならいろいろな物があるから安心だね」


 というわけで俺達はファミレスにやって来た。

 ゴールデンウィークの昼時なのでかなり人が多い。


 10分くらい待ちようやく中に入る事が出来た。


 俺はハンバーグ定食を頼んだ。ハンバーグ専門店には負けるが、ファミレスでも美味しいし値段も手頃なので好きだ。


 美咲はパスタを頼んでいた。確かに定番ではあるな。


「注文も済んだしドリンクバーに行かない?」


「うん。いくいく」


 俺達はドリンクバーに向かったのだが、そこには俺の後輩こと三上 颯がいた。


「あれ?先輩、奇遇ですね」


「三上か。久しぶりだな」


「あれ?後輩君って呼ばないんですか?」


「ここでは同級生だからな」


「なるほど。なら僕も逢坂と呼ばせてもらいますね」


後輩にいきなり呼び捨てにされた……


「ああ」


 俺と三上が話しているのを見て、美咲が話し掛けてくる。


「零君。この人零君の知り合い?」


「ああ。同じ学年の三上だよ」


「初めまして。三上 颯です」


 俺の紹介に合わせて、三上が自己紹介をする。


「初めまして。零君とクラスメイトの桜 美咲です」


「そうなんだ。で、逢坂は桜さんと付き合ってるの?」


「ブフォ!?」


 三上に突然そんなことを聞かれむせる。


「べ、別に付き合ってねえよ」


「そ、そうだよ。私が零君と付き合ってるだなんて」


 俺と美咲は同時に反論する。


「でも息ぴったりじゃん」


 三上の言葉に俺と美咲は顔を真っ赤にしてしまう。


「冗談だよ。逢坂」


 くっ。コイツ現実で俺が後輩君と呼んでいたのを根に持っているのか?


「それより三上は何やってんだよ」


「僕はバイトだったんだけど、早く来すぎて暇だったからドリンクバーで時間を潰してたんだよ」


 ドリンクバーで時間を潰すって、友達いないのか。


「なあ、三上。お前って友達いないのか?」


「は、はぁ!?別にいるし!今日はたまたまみんな都合が悪かっただけだし!」


 物凄い慌てっぷりだな。もしかして図星か。ならこれで形成逆転だな。


「ならさ今度、三上の友達も誘ってどこかに遊びに行こうぜ」


「えっ。それはちょっと……ほら僕の友達忙しいから」


 コイツ友達いないボッチ確定だわ。心優しい俺は気付かない振りをしてやろう。


「そっか、残念だな。今度友達が遊べる時があったら連絡してくれ」


「お、おう」


 三上は引きつった笑顔を浮かべる。嘘なんかつくからそうなるんだよ。


「ねぇ、零君。」


 三上と別れた後、美咲が小声で話し掛けてくる。


「どうした。美咲」


「多分なんだけど。三上君って友達いないんじゃないのかな」


 美咲にも気づかれてんぞ~三上。どうすんだ。


「そうなのか?」


 俺はここでも知らない振りをする。情報はどこから漏れるか分からないからな。


「多分…零君に遊びに行こうって誘われたときもの凄く動揺してたし、連絡してくれって言ってたときも顔が引きつってたし」


 これ三上が聞いてたらとんでもないことになりそうだ。もの凄く的確に痛いとこついてるし。


「三上が友達いないとしてどうしろと言うんだ?」


「別に……ただ零君って友達多そうだから誰か紹介してあげられないかなって」


「美咲、悪いんだか俺もそんなに友達いないぞ」


「え、でも零君優しいし運動や勉強も出来るのに」


 運動や勉強が出来るのはただ単純にこの世界のレベルが低いのであって、決して俺が凄いわけではないんだよ。


 これはすぺて愛さんのお陰なんだよ。


「俺は人付き合いが苦手だから、勉強や運動をやってただけなんだよ」


 俺はもっともらしい嘘でごまかす。


「そうなんだ。でももう1人じゃないよね。生徒会の子とか私がいるし」


「ああ、そうだな」


 そう考えると不思議だな。ゲームの中だからかこんな美少女と普通に話が出来るんだよな。現実だと絶対挙動不審になるぞ。警察に通報されるレベルだぞ。


「じゃ零君。次どこ行く?」


「そうだな……ボウリングとか行ってみるか?」


「ボウリングか……私一度もやったことないな」


 意外だな。友達とかに誘われてそうなのに。


「なら俺が教えるよ。あまり上手くないかもしれないけど…」


「ありがとう、零君」


 俺達はボウリングだけでなく卓球場やバッティングセンター、カラオケなどが出来る店に来た。


 まず俺達はボウリングを楽しむ。


「ストライーク♪」


 ピンが全て倒れる。またか。


 美咲はあっという間に上手くなり俺を追い越してしまった。


 俺のスコアは基本8本くらいでたまにスペアやストライクが出る感じだ。

 対する美咲は始めこそガーターやミスを連発していたが、いまやほとんどがストライクでたまにスペアや1、2本残る。


 強すぎだろ!?運動が中学生レベルならなんとかなると思っていたのに!


 結局俺の惨敗でボウリングは幕を閉じた。もう2度と行きたくないね。


 次はバッティングセンターにやって来た。こちらは野球部に入っているということもあり快音を響かせる。美咲もヒット性の当たりを次々飛ばしている。


 俺は調子にのって160km/hのところで打つ。美咲は打ち終えたようで、俺のバッティングを見ている。


 1球目──バットに当てるがボテボテのゴロ


2球目──空振り


 3球目──ヒット性の当たりを飛ばす


 4球目──これもヒット性の当たり


 5球目──完璧に捉えた打球はホームランとなる。


「やった!!ホームランだ!」


「零君凄い!」


 運動能力が10上がった。おお~結構上がったな。


 美咲はまるで自分のことのように喜んでくれた。

 

 俺はホームランを打った景品を貰う。景品は5年ほど前まで活躍していた、堺選手のサイン入りバットだった。


 これ売ったらどれぐらいの値段になるのだろうか。私気になります。


 俺はバットを大事に抱える。いや、まさか打てるとは思ってなかったな。


「次はどこに行く?」


 俺は物凄い上機嫌で美咲に聞く。


「私、卓球やってみたい」


「なら次は卓球場だな」


 俺達は卓球場に行く。そこは誰もいなくて貸し切り状態になっていた。


「よし、いくよ零君。てやっ」


 美咲がサーブを打つ。


 俺は軽く打ち返す。


 美咲がスマッシュを打ってくる。


 なんで初めてやった奴がそんな簡単にスマッシュ打てんだよ。


 俺はなんとかブロックする。球は高い弧を描き美咲のコートに落ちる。


「いっけー!」


 美咲は渾身のスマッシュを打つ。球は俺の側の台の隅っこにきまる。コース良すぎるだろ。卓球部でもやっていけそうなんだけど。


 俺は懸命に手をのばすが届かない。


「やったー」


 俺達はその後、交互に点を取り合い10対9で美咲のマッチポイント。


 俺は回転をかけたサーブを打つ。球はカーブをしコートの隅に落ちるが、美咲は難なく追いつき打ち返される。


 俺は球にラケットを当てるが、美咲のコートには入らず飛んでいく。


 美咲の勝ちだ。くっ!ボウリングに続いてまた負けた。


「また私の勝ちだね」


「あと1点取ったら追いつけたんだけどな」


 俺は負け惜しみを言いながら帰る準備をする。そしてそこから少し歩き、電車に乗る。


「あ~楽しかった。零君また来ようね」


「そうだな。次は負けないからな」


「返り討ちにしてあげる」


 俺達は電車の中でそんなことを話していた。


 俺達はまた来ようと約束をして俺達が通う学校の最寄り駅で別れる。


 俺は寮に帰ってきた。1日ぶりだが少しだけ懐かしく感じる。


 俺は荷物を片づけ、ご飯を食べ風呂に入って寝る。今日は遊び疲れたのでぐっすりだ。


 明日はどんなことがあるのだろう。俺は期待に胸を膨らませた。


 でも今日はお金を使いすぎた。残金が3万あっのに1万5千円になっている。


 これから気を付けよう。恵と遊びに行くときも俺が払うことになるのだろうし。




活動報告に短編を書いてみました。

お暇な方は読んでいってください。

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