ゴールデンウィーク直前の物語
4月29日(火) 昭和の日
今日は特に予定がない。
なので今日はゴールデンウィーク中にやってこいと言われた、課題を終わらせようと思います。
まず、現代文から漢字の宿題だ。ひたすら漢字の練習をするだけ。つまんねぇ。
あーあ、誰かこねえかな。
ピンポーン
インターホンが鳴る。
なんというグッドタイミング。誰だこんなに空気の読める奴は?
「今、開けまーす」
俺は扉を開ける。そこにいたのは桜 美咲だった。
みなさんは覚えているだろうか。彼女は学校で1,2を争う美少女。黒髪の清楚な見た目の女の子だ。
そんな彼女がどうして俺の部屋なんかに。めっちゃ嬉しいんですけど。
「こんにちは。逢坂君。今大丈夫?」
「ああ、宿題やってたんだけどちょうど休憩しようと思ってたんだ」
「ええっ!もう宿題やってるんだ。逢坂君は真面目なんだね」
印象力が5上がった。久しぶりのステータスアップだな。
「それより今日はどうしたの?」
「遊びに来たの」
ものすごく良い笑顔で言われた。やっぱ可愛いいわ。
「そうなんだ。狭いとこだけど上がって」
「お邪魔しまーす」
俺は部屋にチェーンロックだけかけて部屋に戻る。
女子寮はどうか知らないが男子寮は一人暮らしするには少し広い。なので俺の部屋には本棚がたくさんある。
桜さんは俺がラノベとか趣味の本を入れている本棚を見ていた。
「わぁーすごい。『やはり僕はチートでした』も全巻そろってるし、それに『デートは日常系の侵略者』もある」
「桜さん詳しいね」
「私アニメとか漫画って大好きだし」
「へぇーどんなのが好きなの?」
「えーと『名探偵のごとく』とか『神のみぞ知るゲームパーク』とかかな」
「あれもおもしろいよね」
「そうそう主人公がとんでもない名探偵のくせに不幸によくあって、証拠がなかなか見つからないとことかすごい面白いの」
「確かに……俺はアニメで見たけど毎回そういうシーンあるけどなぜかあきないんだよな」
「あ、それすごい分かる」
俺はお茶を入れながら桜さんとアニメ談義を繰り広げる。
「はい、どうぞ」
俺は入れたてのお茶を渡す。
「ありがとう」
俺達はその後、たくさんの漫画やアニメの話に花を咲かせた。
友人が3人に増えました。よおし!ついに桜さんが友人となった。
桜さんが帰った後の午後3時。さて現代文の宿題は、何とか終わらせた。
次は英語か。これも教科書の丸写しなのか。キツいわ。
問題やる方がよっぽど楽だよ。
そして午後10時。ついに俺はやった。
俺は勝ったんだ。宿題という名の宿敵に勝った。かなりの強敵だった。
問題は簡単だったのだが、量が半端なかった。
だが後は遊ぶだけだ。ゴールデンウィークに1つの宿題もなし。
俺はその日は晩御飯を食べずお風呂にも入らずに爆睡してしまった。学力が5上がった。あれだけやって5かよ!
5月1日(木)
ついに5月に入った。かなり暖かくなり暑がりの人の中には半袖にしている人もちらほらいる。ゴールデンウィークまであと2日だ。
俺は飲み物を買いに食堂に置いてある自販機に行く。
「ねえ、零」
俺と同じく食堂に来ていた恵に話しかけられる。
「なんだ恵?つか久しぶりだな。やっぱり生徒会忙しいのか?」
「うん。すごく忙しい。でもゴールデンウィークは生徒会の仕事ないんだ。だからさ…どこかに遊びに行かない…?」
少し不安そうに聞いてくる恵。
「別にいいぜ。どうせ暇だったし」
「やった!約束だよ零」
俺が承諾すると恵は小さくガッツポーズをしている。喜んでもらえてなによりだ。
「分かってるよ」
「じゃあまた連絡するね」
「了解」
友達が4人に増えました。かなり増えてきたな。
5月2日(金)
いよいよ明日からゴールデンウィークだ。
俺は、明日からのゴールデンウィークに備え今日は日給のバイトをやる。
俺は家庭教師のバイトを選んだ。何でも風邪で1人欠員が出たらしい。
俺は今日教える子の家に来た。インターホンを押す。
ピンポーン。
「は~い」
若い女性の声がする。扉が開くと声から想像した通りの若い女性が出てくる。
「林の代わりに勉強を教えに来ました。逢坂です」
「あ~はいはい。聞いていますよ~」
俺は若い女性に家の中へ入れて貰う。なんかこの1文だけ見ると18禁展開になりそうだな。
実際はそんなことあり得ないんだけど。
「美咲~。家庭教師の人来たわよ~」
美咲?なんかものすごく聞き覚えのある名前なんですけど。
「今行くー」
そして聞き覚えのある声。あれ?もしかして……
ドタドタと足音が聞こえてくる。
「あれ?逢坂君?どうしたの?」
やっぱり桜さんだ。
「何~美咲~この子と知り合いなの~?」
「え、うん。同じクラスなんだ」
ですよねー。ただのクラスメイトですよねー。なんか分かってました。
恋人はないにしても友達とは言ってもいいんじゃないんですか。
「桜さん。実は俺が代わりの家庭教師なんだ」
「え、逢坂君就職してたの?」
「違う違う。バイトだよ。一日限定で」
俺は苦笑いしながら答える。
「そうなんだ。じゃあ今日はよろしくね先生❤」
桜さんはニッコリ微笑む。
やばい。可愛い。
「君、逢坂君って言ったっけ~?」
「はい。そうです」
「美咲のことよろしくね~」
そう言い名前も知らない若い女性は奥の部屋に入っていった。
「逢坂君ごめんね。お姉ちゃん迷惑かけなかった?」
「いや、ぜんぜん」
あの女性は桜さんのお姉さんだったのか。もしあの若さでお母さんとか言われてたらツッコミしたのに。
「よかった。なら私達も行こうか」
「え、どこに?」
「私の部屋だよ。勉強教えてくれるんでしょ先生」
まじか!桜さんの部屋に入れるとか、なんて最高の日なんだ。
俺は桜さんに案内され桜さんの部屋に足を踏み入れる。
「ここが桜さんの部屋か……」
なんて言うか机の上とかその周辺は女の子っぽいのに横を向くと本棚があり、その中には大量の漫画とラノベが入っていた。
「逢坂君あまり見ないで」
桜さんは少し恥ずかしそうにしている。ああ、バイト代が良いから勢いでこのバイトにしたけどこのバイト選んで良かった。
「それじゃあ桜さん。勉強を始めようか」
「はい。先生」
「教科書の17ページ開いて」
そこには足し算とかと掛け算が混ざった式が書かれている。
「まずは問1から順番にやろう」
「えーと、確か掛け算を先にやってから足し算なんだっけ?」
「そうだよ。カッコがなければ掛け算と割り算からやっていくんだ」
「なら5+4×3は17だね」
「正解。ここはバッチリ出来てるね」
さすが桜さん。賢いんだな。小学生レベルだけど。
「次は問2をやってみようか」
「えーと(3+4)×6は……あれ?どうやるんだっけ?」
「その問題はまずカッコの中から計算するんだ」
「じゃあまず3+4をやって7だから、7に6を掛けて答えは42でしょ?」
「正解。なら次は問3だね」
ああ、幸せだ。桜さんとこんな風に一緒に勉強出来るなんて。
「先生~この問題わからいよお~」
桜さんが俺に泣きついてくる。俺に!ここ重要。
「どこかな」
「この問題」
桜さんは問3の(4)の問題を指差す。
えーと何々。3×4+9÷3=か。
「この問題は先に掛け算と割り算をやるんだよ」
「3×4だから12と9÷3で3だよね。これを足すから12+3で15!やった!出来た!」
なんかすごい喜んでるな。実年齢32歳の俺からしたらよく分からん。おっとゲーム内では15歳か。
「逢坂君~。美咲~。休憩にしたら~?」
お姉さんがジュースとお菓子を持って来てくれる。
「そうだね。桜さんそろそろ休憩しようか」
「うん、そうしよう。お姉ちゃんのお菓子ってすごいおいしんだよ」
「それは楽しみだな」
俺達は勉強道具を片付け机の上にジュースとお菓子を置く。
そして一口食べてみる
「確かにうまいな」
「でしょ!お姉ちゃんの料理は絶品なのよ」
お菓子はどんどん減っていく。やめられない、止まらない。
あっという間にお菓子はなくなった。
「そろそろ帰らなくちゃいけないな」
時計を見ると午後7時だった。まあ学校が終わってからバイトでこの家にきたしな。
「えー」
いや「えー」って子供じゃないんだから。
「そうだ!逢坂君今日泊まっていきなよ。明日からゴールデンウィークだしさ」
な、なんだと。桜さんの家にお泊まりだと!?
「でもいいのか?ご両親とか反対するんじゃ……」
「大丈夫。私お姉ちゃんと2人暮らしだし、逢坂君はお姉ちゃんに気に入られてるし」
あれで気に入ってもらえてたんだ。
「ならお言葉に甘えようかな」
「それがいいよ」
「ならバイト完了の報告して荷物を取ったらまた来るよ」
「分かった。待ってるね」
俺は急いでバイト完了の報告して寮に戻って着替えなどのお泊まりセットを持って桜さんの家に舞い戻ってきた。途中雨が降りそうだったので、折りたたみ傘を鞄に入れておいた。
「逢坂君~美咲と一つ屋根の下だからって変なことしたら駄目よ~」
「や、やりませんよ!変なことなんて!」
「なら、大丈夫だね~。もうすぐ夕ご飯できるしちょっと待っていて~」
あんなに簡単に信じて貰えるということは少なくとも信頼はして貰ってるんだな。
とりあえず俺は桜さんの部屋に行く。
「速かったね、逢坂君」
「頑張って急いだからね」
「ふーん。逢坂君今日いくら稼いだの?」
俺はバイト代を確認する。
「28000円ですね」
財力が28000上がった。つかマジでバイト代が高いな。
「2人共~夕ご飯できたよ~」
お姉さんに呼ばれたので俺達はリビングに移動する。そこにはたくさんの料理が並べられていた。どれも美味そうだな。
俺はお姉さんの料理を堪能した。俺の料理とは比べものにならないくらい美味しかった。プロでやっていけそうだぞ。
「逢坂君、先にお風呂に入ってきていいよ」
そう言われたので先に入らせて貰う。入ってる途中で桜さんが入ってくるなどという淡い妄想は見事に砕かれたが、とても気持ち良かった。
俺は桜さんがお風呂に入っている間、寮から持ってきたラノベを読んでいた。2巻を読もうかと思ったところで桜さんがやって来た。
「逢坂君の部屋用意したからついてきて」
俺は桜さんが用意してくれた部屋に荷物を置き、桜さんの部屋に戻ってきた。
「ねぇ桜さん。なんで出会ったばかりの俺を泊めてくれたの?」
「逢坂君はいい人だし、漫画とかラノベの話ができる友達ができて嬉しかったんだ」
今、桜さんが俺の事友達って言った。良かった~。ちゃんと友達だと思われていた。
「そうなんだ。なら今からアニメ談義だね」
「そうだね。何の作品からいく?」
「まず『ダンジョンに出会いはあるはずだ』からでどう?」
「オッケー」
好きなキャラクターとか心に残った名ゼリフや名シーン、これからの展開の予想に最終回の妄想さらには人気作品のパロディーを互いに作ったりアニメ談義は多岐にわたった。
俺達のアニメ談義はそこから深夜まで続いた。
「もう午後11時だよ」
「ならそろそろ部屋に戻るわ」
そう言い俺は桜さんの用意してくれた部屋に戻った。
俺は今日の出来事を思い出しながらニヤニヤしていた。自分でもキモイと分かっているのだが、それても桜さんの家にお泊まりという展開は嬉しすぎた。
俺は布団をかぶりながら目を瞑る。
ウトウトし始めた頃に大きな音が鳴った。俺は飛び起き周りを見渡す。どうやら雷が落ちたようだ。俺はスマホで天候を確認する。
大型低気圧が上空にいるようだ。俺は明日の天候が気になり調べる。
良かった。明日の朝には晴れるそうだ。せっかくのゴールデンウィーク初日が大雨とか嫌だしな。
そんなことを考えていると扉がノックされる。
俺が扉を開けると桜さんが枕を持って立っていた。
「逢坂君、その……一緒に寝てもいいかな……雷が怖くて眠れないの」
ま、まさかの雷イベント!
説明しよう。雷イベントとは雷が苦手なヒロインが夜、雷が鳴ったときに一緒に寝ようと言ってくるイベントを俺が勝手にそう呼んでいるのである。
「ええ。良いですよ」
俺は桜さんを招き入れる。そして同じ布団で寝る。同じ布団で!
ここ重要だから2回言ったよ。
桜さんは5分も立たないうちに寝息を立て始めた。
俺はさすがに同じ布団はまずいと思い直し布団から出ようとしたが、桜さんが俺の腕を掴んでいて出ることが出来なかった。
いや、出来なかったという表現は正しくないな。正確には俺の腕を掴んでいている桜さんの胸が当たっていて誘惑に負けたのだ。
俺は無理矢理意識を眠りに落とす。寝るんだ。俺よ、寝てしまえ。
俺が眠りにつけたのは1時間後のことだった。
時刻は0時14分。既に5月3日になっている。
いよいよゴールデンウィークの始まりだ!
本来ならこのお話でゴールデンウィーク編をやる予定だったのですが、今回のお話が長くなったので次回にまわさせていただきました。