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23 ベルクガンズの三女傑(前篇)


 さて、ベルクガンズ王国に無事到着した私たちは、城をあげての大歓迎を受けることとなったのですが、その中心人物となったのは、アントニオさまの三人のお姉さま方でした。


「あらあらあら、こちらのお嬢さんが五人目の勇者ですのね」

 最初に出迎えて下さったのは第一王女のキャサリンさま。とてもおっとりした感じの美しい妙齢の女性です。


「ふっ、レオナルド殿下、ラファエロ殿下、ウィリアム殿下も無事の到着、ご苦労であった」

 第二王女エルデさまは、どこか男装の麗人っぽく凛々しい方です。少しエリザベスさんに雰囲気が似ているかもしれません。


「きゃは~ん、アントンちゃんが見染めたのがその子なのねなのね? きゃ~わいぃ~っ」

 第三王女ミュゼールさまはアントニオさまよりも年上のはずなのですが、なんだか可愛らしいお方です。


 聞けばベルクガンズの国王陛下は楽隠居状態で、王妃さまともども国の保養地帯でのんびり暮されているそうです。

 ご両親に代わって実質的にベルクガンズを切り盛りしているのがこのお姉さま方───人呼んで「ベルクガンズの三女傑」なのだそうです。

 なんか……すごいです。


「あ、姉貴たち、俺たちロートヴァルドから逃亡中だから、ちょっと自重してくれ……」


 いつも豪快なアントニオさまが、三人のお姉さま方に圧倒されています。

 なるほど、アントニオさまの女性の扱いが妙にお上手なのは、このお姉さま方の影響なのかもしれないと私は思いました。


「あら……でも『怪力勇者』って聞いていた割には、ずいぶん華奢なお嬢さんなのねえ。もっとこう、筋肉ムッキムキのマッチョ系女子だと思っていましたわ」


 うぅっ。ど、どこでそんな話を。


「私は『岩石勇者』と聞いていたから、てっきりアントンを上回るほどの、天を衝くような巨人系進撃系女子だとばかり」


 いえ、あの、その。


「ミュゼは『残虐勇者』って聞いてたから、もっとこう、目が爛々と血走って、常に生肉をくわえているような女の子だと思ってたよ~」


 いや、それどーゆうキャラ付けですか。


 ていうか、世間での私の風評って今いったいどういうことになっているのでしょうか。めぐりめぐって故郷のジクロア村に私の評判が伝わった時の反応が怖いです。


「いずれにせよ、今夜はもう遅い。話はあとにするとして、我がベルクガンズの晩餐に舌鼓を打ってもらいたい」

「マリアさんには後ほどゆっくりとお話を伺いたいですし」

「うちのお城のお風呂、でっかいんだよ~」


 は、はあ……なんというか、個性的なお姉さま方です。


 ・・・・・・・・・・・・。


「ほう、なるほど。魔王の影か……」


「はい。お恥ずかしながら、我が父王と大臣は我らの言葉を信じず、マリアを異端者呼ばわりする始末。私は国を離れ、マリア・マシュエスト嬢の身の安全を確保すべく、ベルクガンズ王国のご助力をお願いしたく、参上いたしました」

「それはよろしいのですけれど、ぶっちゃけ、あなたたちがこの国に逃げ込んだって言うのはもうロートヴァルドに知られているのかしら?」


 見た目いかにも上品な王女さまのキャサリンさまですが、なかなか堂に入った迫力に、レオンさまは息を飲みました。


「ルヴィナールとバルラヌスにも既に通達は行っているでしょう。我らがベルクガンズに逃げ込んだことが判明するのは、時間の問題かと」

「姉上、我が弟の見込んだ娘なれば、助力するのは道理。我がベルクガンズの総力を持って勇者王子どのたちを支援すべきでは」

「アントンちゃんを泣かせる奴は、誰だろうと許さないよ~ッ」

「泣かねえよ、ミュゼ姉!」


 まあまあ、とキャサリンさまは皆さまを制しました。


「たとえ皆さんがこの国にいると判明しても、我がベルクガンズはれっきとした王国連合の一翼を担う国。ロートヴァルドといえど無体なことはできないでしょう。あなたたちはしばらくここに滞在して、対策を考えましょう」


 晩餐のあと、あてがわれた部屋で一息ついていると、こんこんとノックの音がして、お姉さんとは思えない無邪気な笑顔の女性が私に抱きついてきました。


「マリアちゃ~ん、一緒にお風呂行こうよぉ~~~ッッッ!」

「ひえっ、ミュゼールさま?」

「武骨な男どもはいない、さぞや道中苦労なさっただろう。疲れを癒してくれ」

「女同士、ゆ~っくりお話、し・ま・しょ」


 ひえぇええええええええええ。


 なんでしょう、この迫力、押しの強さは。

 私は官吏に掴まった罪人のように両腕を抱えられ、ずるずるとベルクガンズ王城ご自慢の大浴場に連行されていったのです。


「ねえねえねえ、マリアちゃんってアントンちゃんともう付き合ってんの?」

「我が弟は少々がさつというか、不器用なところがある故、よろしく頼む」

「で、どこまで行ったの? ちゅーくらいはしたのよね当然! ちゅーくらいは?」

「あわわわわわわわわ…………」


 そんなこんなで、お姉さま方の質問攻めにすっかり混乱してしまった私なのでした。


 ええ、精霊の刻印もしっかり見られましたよ。とほほほほ……。



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