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第五話 : 裸と王様

プロットになぞって作ろうとしてるのに、徐々に話が変化の術にかかってしまう不思議……。

 


 前回のあらすじ。


 おれは裸だった。





 一瞬驚いた表情になるが、パトリック皇帝はすぐさま持ち直し、元の厳しい顔つきに戻った。さすがは皇帝である。

 トラブルに臨機応変に対処する柔軟さが必要なんだろうな。

 でもちょっとあの驚いた顔、誰かに似ていたな。

 ……そうだ!

 最初来た時にお姫様もあんな表情だった。さすがは親子である。

 顔つきが似ているんだろうな。


 さらにおれが皇帝、そしてその娘さんと二代に渡って出会いざまに驚愕させたという事実におれ自身が愕然とした。さすがはおれである。

 もう、うっかり八兵衛とかそういうレベルじゃないんだろうな。


 でも前にいらっしゃる皇帝も何事も無かったかのように進めようとしているため、おれもそれに乗っかることにした。

 たぶんこの場には謝るような隙も、弁解するような空気も無いからな。


 具体的には、できうる限りのキリッとした顔をして、前を見据えた。

 開き直ったとも言う。

 他の三人もそれぞれに真面目な表情で立っていた。軽い雰囲気の優也ですらこればっかりは口を閉じている。


 皇帝がゆっくりと口を開く。



「それでは、『謁見の儀』を行う!」



 遂に始まった。

 思えば、中々にハードな体験をしてきたな。

 これでまだ数時間しか経っていないなんて嘘みたいだ。


 ……え、ホントに数時間しか経ってないの!?

 嘘でしょ!?


 ……ひとまずここは真剣に聞こう。

 今おれは、自分の置かれている状況を知らなさすぎるのだ。

 あとヘタな動きをするとあの牢屋に戻されておっさんと再びランデブーする羽目になる、という理由もある。


「まずは最初に言っておこう。

 勇者達よ、こうして会うことが出来て私は嬉しいぞ。

 代々この国を守ってきた先代の皇帝達も、勇者がこうして現れるのを見た者は殆ど居ないのだからな。この天佑てんゆうに感謝したい」


 そう言ってなんとなく人の良さそうな笑みを少しだけ浮かべる皇帝。

 もしかすると、そこまで厳しい人では無いのかもしれない。


「だが、嬉しがってばかりもいられないのだ」


 きりっと顔を引き締める。


「――――この国に、危機が迫っている。貴殿ら勇者が呼び出されたのも、それに依るものだ。

 勇者達よ…………国を、否、この世界を救って欲しい!」


 続けざまに言う。

 皇帝は真剣な目をしていた。その目で、「世界を救って欲しい」と言ったのだ。


「こちらの都合で勝手だ、という事は重々承知している。

 それでも頼む。世界を『侵攻』から救って欲しい。……大臣、状況の説明を」


 皇帝の傍らに居た、先程扉を開いておれ達を呼んだ最初の文官よりも幾段か服装の豪華な人物が進み出る。

 パトリック皇帝の言う大臣の一人か、そこら辺の位の人物なのだろう、おれら四人の視線は彼に集中した。


 そして、その眼鏡を掛けた彼が話を引き継ぐ。


「ここからの説明はわたくし、センティリアル帝国・書記官のリベリオールが、儀式に則り務めさせて戴きます」


 ペンのような筆と平たいボード(たぶん、筆記用具のセットなのだろう)を見ながら、こちらを向いて彼は話す。

 あまり抑揚のない話し方だ。


 ところであれ、日本では見たことのないようなペンだがどうやって出来てるんだろうか。少し気になる。

 ……いやいや! 話を集中して聞かないと。


「勇者様方が召喚されてきた今いる場所、次にお越し戴いた理由または置かれている状況、最後に我々からの要望とそれを実行するための手段をお伝えします」


 話はすらすらと、流暢に続く。


「ではまず、この場所の話を。

 もう気付いておられるかとは思いますが、今勇者様方が居られるのは元の場所ではありません。――元の世界では無い、と言った方が伝わりやすいでしょうか。元居た世界で突然地面に円陣が出来たでしょう。

 あれは魔法陣の一種、転移魔法陣テンイマホウジンと言まして、この世界とそちらの世界を繋ぐものです。

 つまり、魔法陣を通して、あなた方は異世界に召喚されて来たという事です」


 私達からすればあなた方が居られた世界の方が異世界なのでしょうけれど、それはあまり意味の無い話ですね、と、彼は付け加えた。

 そして眼鏡をくいっと指で引き上げ、仕切り直す。


「それから、この世界の事です。

 この世界の名は、『エリネヴァス』と私達の言葉で呼ばれています。そのエリネヴァスにある一つの大陸がここ、『エウラシア』大陸。そしてエウラシア大陸のほぼ中央にある国がこの『センティリアル帝国』です。

 あなた方は今、センティリアル帝国の首都センティリア、その政府施設であるところの『皇宮こうきゅう』にられます」


 うわ、固有名詞が沢山出てきた!?

 おお落ち着けおれ! 一つずつ整理するんだ!!


 まず地球からエリネヴァスって世界の大陸に来てて、だから日本じゃなくてセンティリア帝国っていう国に居るんだな? それで、その帝国の首都の宮殿がここか。


 よし理解できた!

 ファンタジー系のゲームで鍛えられた頭なら楽勝だった。

 ゲームで鍛えられた脳、つまり本物のゲーム脳である。まがい物のゲーム脳とは違うのだよ!!


 ……また思考があさっての方向に駆け出していた。


「次に、勇者様方にエリネヴァスにお越し戴いた理由をお話しましょう」


 おれが真剣な表情の裏でそんなことを考えている等とはつゆ知らず、リベリオールさんは抑揚なく続ける。


「このエリネヴァスでは、千年に一度の回数で、凶暴なモンスター、言い換えるなら魔物が活発に活動すると言われているのです。

 それは文献にも残っており、過去の三度みたびにおいて魔物の活発化があったと記録されています。文献によると通常では考えられないほどの魔物が発生し、それがこの世界を脅かしたようです。

 過去に都市や国が滅亡したケースも少なく無く、その脅威の苛烈さからこの魔物の活発化は『侵攻シンコウ』と呼ばれるようになりました」


 『侵攻』。今までのわらわらと出てきた固有名詞に比べれば、いやにシンプルな名前だ。


 それだけに、不吉な雰囲気がその言葉にはあった。


「我々の先祖方も勿論、手をこまねいていたわけではありません。過去の王・皇帝達は軍を組織し、装備を整え、冒険者――要は傭兵の様なものです――を揃え、『侵攻』に対抗しようとしました。

 ですが、その抵抗は魔物の大量の群れを前にして、多くはついえてしまったのです。人々は『侵攻』を前にして無力でした」


 過去の事だとは言うが、彼の話には妙に迫るものがある。

 おれ達の四人も騎士の二人も、前に立つ大臣や皇帝ですら、静かに話を聞き続けている。

 それが儀式だからか、それとも…………。


「最初に『侵攻』に対面したと言われる数千年前の人々も当時なりに持てる限りの力で戦いましたが、ついにあわや滅亡、というところまで追い詰められました。

 しかし、後に皇女と呼ばれる当時の巫女、センティリア様がいにしえの魔法によって転移魔法陣を使い、三人の人間をこのエリネヴァスに喚び出しました。

 そしてその三人は人間の者とは思えない、この世界の有史に連なる英雄たちが霞むほどの圧倒的な力を持って『侵攻』を食い止め、果ては押し返してしまったのです。

 彼らは英雄、勇者と崇め奉られ、彼らを呼び出したセンティリア様を中心とした王家が作られました。それこそがセンティリアル帝国であり、宮殿は魔法陣がある場所を保護するようにして建てられています。一階の魔法陣です」


 最後まで一気に言い終えて、彼はまた手にしたボードに目を落とした。


 …………すごいな。


 まさか異世界に来て歴史を勉強するとか思わなかったけど、凄い話だ。


 つまり、初代皇帝が勇者といって地球の人(?)を呼び出して世界的なピンチをなんとか収め、その人達が出てきた魔法陣をずっと、話からするに三千年以上守り続けていたってことか。


 完全に世界遺産だ。

 ……その感想もおかしい気がするけど。


「その後、千年毎に『侵攻』が発生するたびに、当代の皇帝方は勇者を召喚し、魔物から世界を救って戴くよう依頼してきました。

 時によって人数はまちまちですが、記録では初代が三人、『侵攻』の二回目が八人、三回目が五人召喚されたようです。人数が変わる理由は判りません。

 ですが明らかなことは、勇者を召喚しなければ世界が滅びかねない、ということです」


 そしておれ達の方を真っ直ぐ見た。


「今また最後の『侵攻』から千年が経ち、魔物の活発化が始まる気配が増しているそうです。いずれ、いや必ずまた『侵攻』が始まるでしょう。それに対向するため、我々は戦わなければなりません。

 ――――勇者様方、私からもどうかご助力をお願い致します」


 言い終わり、辺りがシーンと静かになる。


 国の重鎮たちと相対する異国の服装をした四人の人間。


 きっと非常に絵になるシーンなのだろう。


 でもおれは見逃さない。

 リベリオールさんが本から顔を上げた時、おれを見たことを。

 正確に言えば、おれの羽織ったマントの内側を見てしまったことを。

 そして、最近よく見る驚きの表情を彼も浮かべていたことを。


 おれは泣きそうになった。


 と、そこで横から声がした。優也ユウヤだ。


「で、結局、勇者のオレ達は何をすりゃいーんですかね?

 そこが判んないのに、そんなに話されてもなー……」

「はい、それは次の話す内容です」


 優也は残念ながら話の中身をそこまで気にしていなかったらしい。

 横を見ると、優也は完全に飽きたという表情だった。

 奥に見える平野くんなんてもう既にどっか別の方向を向いている。


 真剣に聞いていたのは恐らく語歌堂さんと、時たま適当な事を考えているのを見逃して貰えればおれくらいなものだろう。


「では、次に移りましょう。こちらからの皆さんへの用件、それに皆さんの取り得る手段です」


 何事もなかったかのように平然としたリベリオールさんが続けた。クールなお人だ。

 手にしたボードの中央をトントンと人差し指で叩き、言うべきことを確かめてから話す。


「私共があなた方にしてもらいたい事は1つだけ、先程も申し上げました通り、『侵攻』の危機から救ってもらう事です。

 そしてそのために、皆さんには通称『勇者補正ゆうしゃほせい』とでも言うべき能力が備わっています。これは初代皇女センティリアル様の加護、魔法陣に刻まれ、召喚によって発動する能力だと言われているものです」


 ……なん、だって?


「補正には、確認出来る限り幾つかの超常の力が貴方あなた方には備わっているようです。

 その力は順に『言語能力補助』『全能力値強化』『成長速度加速』『アイテムボックス』『ステータス・アイ』『魔法陣による蘇生』となっています。

 前半の3種はそれぞれそのままの意味で、言語能力補助は異世界間のヒト同士の会話を成り立たせるための補助機能のようです。

 『アイテムボックス』とは、勇者の持つバッグ等の中の1つを使用者が登録しておくことで、そのバッグを本来の内容量に関わらず一定の容量まで物を収納することが出来るようになります。

 『魔法陣による蘇生』は、こちらもそのまま『致命的な傷を負った時、宮殿にある転移魔法陣に自動的に戻されて蘇生される』という事です。」


 ちょ、ちょっと待て!


 補正の内容がとんでもないことになってないか!?

 聞いた感じ他のこの世界の人と比べてべらぼうに優遇されているんじゃ?

 『全能力値強化』や『成長速度加速』なんて、なんて俺TUEEEEEEEEな響きなんだろうか。


 他の補正だって負けていない。

 なんでも物を入れられる『アイテムボックス』だって、要はゲームで言うところの「アイテム欄」だろう。ゲームの種類によっては尋常じゃないほどの中身を入れられたけれども、ここでもそんな感じなのか……?


 極めつけは『蘇生』だ。

 プレイヤーキャラが死亡したり、致命傷を負ったらセーブした所からやり直したり、ある場所に戻されて復活する、という設定はよく見かけるけど、この異世界の『勇者』は本当にそんなシステムだって言うのか……!?


「『ステータス・アイ』に関しましては…………皆さん、右目に意識を集中してみて下さい」


 使って試して見てくれ、と言うことらしい。

 右目に意識を集中……させると、どうなるんだ?

 他の三人も思い思いに試しているようだ。おれもやってみよう。


 右目を意識する。むむむ……。


 と。


 視界に突然、文字が浮かび上がった!


「うおお!? すげえ!!」


 優也が驚いたように叫ぶ。

 おれもびっくりした。

 いきなり、視界の右下の方に、自分の名前「アケミヤ ヒカリ」とその下に幾つかの数値が表示されたのだ。

 また、それとは別に右上には、幾つかのアイコンのようなものが置いてあった。

 妙にデジタルっぽい表示。スマートフォンのアプリのアイコン、と言えばそれに近いだろうか。


「見えましたか? 私は持っていませんので判りかねますが、それが『ステータス・アイ』であるとのことです。

 主な機能としては、自分と登録した仲間の状態(ステータス)を理解し、今いる場所を実際の地図を見ること無く確認でき、アイテムボックスの中身を把握することが出来る、とされています」


 つまり、アイコンを選択するとそれに対応した情報が開く……ってことかな。

 アイコンにはそれぞれに地図の形や袋の形など、幾つかの種類があるようだ。


「おもしれー、オレのステータスって今こんなんなのかー。

 お? ……下に『適正』とかって出てるけど?」

「はい。それは我々も自分たちの数値は別の手段で確認することは出来ますが、ご自身が装備するのに適した武器や防具、後ほど説明します魔法、技能(スキル)の適正の事であると思われます」

「なるほどなぁ。おっと、『剣』と『槍』に『S』って出てるんだけど!」

「なんと……! 素晴らしいですね、適正はEからAまで、最後にSとランクが上がっていき、それはそのまま、表示された武器を持てば非常に高い力を発揮できるということです。

 一般の兵士になる者ならCかB程度、皇宮の熟練の騎士たちでも二つの武器に最高の適正が付いている者など居りませんよ? この大陸を探しても数人も居ないかと……」

「やっぱりこれこそ勇者ってカンジ? すげぇ!」


 ニヤニヤしつつ優也が嬉しそうに言う。

 優也の言っているステータスを聞いてリベリオールさんも饒舌になり、興奮を隠せないようだ。


 それだけ、勇者の得る適正というやつが大きいのだろう。

 と、優也が隣の語歌堂さんに聞く。


「なあ、ミキちゃんはどんなん?」


 黙ってステータス・アイを見ていたであろう語歌堂さんが顔を上げた。


「ふむ…………。私は武器の適正は一つ、『弓』にSと出ているだけだな」

「なんだ、そりゃ残念だったなー。でも大丈夫! オレがミキちゃんを守っ」

「だが、下の『魔法』の欄に『火』『水』『風』『土』がそれぞれ『A』と表示されている」


 すると、リベリオールさんがまたもや驚いて、今度は語歌堂さんをまじまじと見る。


「なんと! 全ての属性に適正があるなんて……! そんな、バカな!?」


 語歌堂さんに詰め寄る勢いで言い募る、が、すぐに気を取り直して言い直す。


「……大変失礼しました。

 こちらも後で詳しく説明致しますが、魔法の属性は通常一つのみ、才能に恵まれた方でも親和性のある二つの属性までが適正を得られるものでしたので……」


 へえ、そうなのか。おれはおっさんの話を思い出した。

 属性は四角形に例えられる、と言っていたな。火が水と対角に、風が土と対角に、というあれだ。


「すると、語歌堂様の『属性』はどうなっているのでしょうか?」

「『属性』と言うと?」

「恐らくステータスの中に表示されていると思われます」

「ん……、あった。『風』と出ているな」

「なるほど……。それでも『土』の属性にまで適正があるとは、流石は勇者様、と言うべきなのでしょうね」


 やっぱり語歌堂さんも優也と同じくらい尋常でない能力を持っていたようだ。


 しかしそうなると、がぜん気になってくるのは自分の事。

 他の人達の話を聞いていたおれも、自身の能力値ステータスが気になった。


 ここに来るまで、それはもういろいろな事があった。


 痴漢(疑惑)のため槍で思いっきり殴られ、投獄され、おっさんにキノコを食べさせられそうになり(比喩ではない)、手錠をかけられたまま宮殿を市中引き回しの刑(不慮の事故によるもの)に処された。


 ……えっ、私の扱い、ひどすぎ……?


 じゃなくて!!


 自分に運がないのは日本にいた頃から割と諦めていたが、ここは違う。

 異世界なのだ。


 きっと異世界ならば違う。

 勇者ならば違う。


 思い出せば、ヨシヒコも以前に言っていた。「勇者になってチートな能力で無双してえ!」と。

 あの時はなんかまた横の変な人が適当な事言い出したよ、くらいな感想しか持っていなかったが、まさか自分がその勇者になってしまうとは思わなかった。

 そして、『チートな能力』というのなら、一緒に召喚された他の三人の人達のうち、既に二人は人生勝ち組の出来レースじゃん、とも言えるほどの稀有な才能を得たらしい。

 今リベリオールさんから話しかけられているのをスルーしてずっと自分のステータスを見ている平野くんだって、恐らく、いや確実に強力な力を手に入れたのだろう。

 俯きがちの顔の口元、ちょっと口角が上がって笑ったように見えたので間違いない。


 そうなると。


 そうなると、次はおれの番だろう。

 おれも、正にRPGの勇者のような能力を得てしまったのかもしれない!


 いやー困るなーそんなのでも貰っちゃったんなら仕方ないかなー、べっべつに、勇者になりたくてなったワケじゃないんだから! カン違いしないでよね!

 ……なんだか思考が良く判らないツンデレになってしまった。

 要は自分自身、かなり興奮しているのである。


 そしておれは、はやる気持ちで視界の右上にあるアイコンのうち、袋のマークが描かれたアイコンを意識した。

 アイの画面が上から徐々に切り替わって、上の方に『アイテムボックス』と表示される。


 あっ間違えた、これはアイテムボックスの表示か!?


 まあすぐに前の画面に戻れば良い話だよな、

 ――――と、思った時。



 ビビィーッ!



 頭の中で変な音が鳴った。

 クイズ番組で不正回だった時のような、ブザーっぽい音だ。


「えっ?」


 『ステータス・アイ』が前の画面に戻る。

 しかし、白と緑っぽい色で見えていた表示が赤色になっていた。


 ……こころなしかステータス・アイの画面の文字がブルブル震えてないか? なんだこれ? 何か変なコトしたか? してないよな?


 …………そして。



 ――――ボンッ!!



 ステータス・アイが爆発した。



「うおっ、まぶしっ!?」

「大丈夫ですか!?」


 前の方にいたリベリオールさんがおれに声を掛けてくる気配。

 目の前が眩しくなったのも僅かな時間の事で、すぐおれの視界は元に戻る。


「だ、大丈夫です」


 おれは答えた。

 表示したままだったアイは消えてしまっている。


「それなら良いのですが……。

 ところで、貴方の能力値はどうなっていましたか?」

「ちょっと待って下さい、すぐ開き直しますから……」


 開き直す? と首を傾げた感じになるリベリオールさんを横目に、おれはアイを表示。

 アイは意識すると無事にまた右目の方に現れた、のだが。


 アイコンが無くなっていた。


 正確には、一つのアイコンを除いて他にもあったアイコンが消えていた。


(え、えぇぇええええーー!?)


 おかしい。

 何が起こったのか判らないが、さっきの爆発の前後でアイコンが消えてしまった!

 蒸発した!!


 取り敢えず残った一つのアイコン、文書ファイルの様なマークが描かれたアイコンを選択して、開く。

 すると、上から徐々におれのステータスらしきものが表示された。

 良かった。他のはいきなり消えてしまったが、自分の能力は見ることが出来たみたいだ。

 いや、他のが消えたのは確実におかしいと思うけど。


 おれの事をあまり気にしていなかった優也が、まだ語歌堂さんに話しかけていた。


「ちなみに、ミキちゃんは『LV(レベル)』とか『HP(ヒットポイント)』とか『MP(マジックポイント)』とかってどーなってる?」

「うむ、レベルは1だが、HPは80、MPは180位あるな。『SP(スキルポイント)』という値も150はあるようだ」

「へぇー。オレはHPなら200超えてたぜ?」

「人によって個人差があるのだな。ゲーム風に考えるなら、私は後衛寄りの能力なのだろう」


 語歌堂さん、武士っぽい感じなのにゲーム風とか言うと違和感あるな……。と思いつつおれのステータスをじっくり見てみる。


 そこには、こうあった。



 ----------------


 名前:アケミヤ ヒカリ 


 LV:1


 HP:15

 SP: 5

 MP: 3


 種族:ヒト(異世界)

 性別:男

 属性:

 職業:


 装備適正:

 魔法適正:『火』E 『水』E 『風』E 『土』E


 称号:『異世界人』『元囚人』『不運』


 能力値

 STR(攻撃力):7

 VIT(守備力):7

 INT(魔法攻撃力):7

 RES(魔法防御力):7

 SEN(命中・感覚):7

 AGI(速度):7

 LUC(運勢):0(固定)


 ----------------





 ………………………………。


 ……………………。


 …………。



 ……職業すらないの?

 

 

他の勇者の能力値も後ほど公開。


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