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第二十三話 : Stranger, Disengaged from

二話前から続く話の完結です。


※『紫色の朝』から読むと、話が判りやすくなるかもしれません。

 宜しければそちらから連続してお読み下さい。


 ではどうぞ!

 

 


 気付けばおれは、食堂に戻ってきていた。


 いつ施療院から出てきたのかも良く思い出せないし、いつ、このフランさん一家の食堂に帰って来たのかも定かではなかった。


 出る時にお祖父さんになにか理由を付けて院から出てきた、気がする。

 それもおぼろげにしか思い出せない。


 正直に言えば、外に出ては危険だとか、現に多くの人が倒れている『魔素侵蝕』の事だとかは、もうあまり気にしていなかったのだ。


 ここまで辿り着いたということは、今のところ問題無いのかな。

 今のところは。


 他人事ひとごとのような言い方だけれど、そう結論づけた。


 それよりも余程、別の事柄が頭の中を占めていた。

 他の事など考える余裕もなかったのだろう。


 これからどうするか、という事柄以外は。


 食堂のホールを彷徨さまよい、目当ての物、丁度良いサイズの雑巾を見つける。

 カウンターの下に置かれていた乾拭き用の雑巾。


 確か、フランさんは昨日これを使っていたハズだ。

 ……もうここには居ないから、本人には確認できないけど。


 そして、二階へと繋がっている階段のところへ行く。


 やはりまだそこは、ここを出た時の状態で放置されていた。

 床は水浸しになっていて、木の桶も転がったままだ。


 こぼれた水が階段の下に広がり既にかなり染みてしまっているのが、あの時から経った時間を感じさせる。


 とは言っても、まだ昼を若干回ったぐらいだろうか。

 なんだか時間の感覚が曖昧になってるな。

 いろんな事が連続して起こったからか?


 まだ木の床に染みこんでいない部分の水を拭き取りながら、そう思った。


 しかし、スグにそんな少量の水なんて拭き終わってしまう。

 雑巾が少し湿ったか湿らないかの程度で、もう後は水を吸ってしまった床だけが残される。

 この程度拭いたところで、なんの解決にもならない。


 そりゃそうだ。


 元々こんな事をするつもりでこっちに来たワケじゃないんだから。

 ふと思い付いたから試してみただけなんだから。


 手元の雑巾を見つめる。


 何をやってるんだ、おれは?


 お前は何がしたいんだ、ヒカリ?


 罪滅ぼしでもしたいのか。


 それとも、本当に意味のある行動だと思ってやっているのか。

 こんな事をしていても、どうにもならないのに。


 立ち上がり、手でつまんでいた雑巾を、立て直しておいた桶に放り込む。

 ちゃぽん、という音がして雑巾が水の中に沈んだ。

 まだ多少だが桶にも残っているのだ。

 あの人を魔素侵蝕に追いやったであろう水が。


 よくその水を見れば、なんとなく紫色のもやが見えるような気がした。

 本当になんとなくだけど。


 一応触らないように気を付けて、桶の取っ手を掴んで持ち上げる。

 まあ一応気を付けておかないとな。

 ここで倒れたら、誰も助けてくれる人なんて居ないだろうから。


 そして桶を運び食堂ホールの外に面した窓を開け、外に中身を捨てる。

 桶も外にやろうかと思ったがやめて、窓の下に置いた。


 窓をまた閉め直すついでに、他の戸締まりも確認しておく。

 密閉しておけば、ある程度は魔素も内側に入らないと言っていたのはエマさんだったか。

 まだ魔素については全然判らないけど、まあそういうモノなのだろう。


 一階の方の戸締まりはこんなものか。

 二階に行こう。


 しかし、二階側は意外……でもないか、窓はおおよそ全て閉まっていた。

 悪いと思いつつフランさん、お祖父さん、そしてお祖母さんの部屋を覗いてみたが、どれも閉まっていたのだ。


 もしかしたら起きてすぐに活動の場所が一階に移るから、いつも二階側は窓を開け放ったままにはしないのかもしれない。

 それか今日は換気しない日だったとか。


 そうして、嫌々ながらも自分の部屋に向かう。





 自室。


 部屋に戻り、荷物をまとめていた。


 シャベルとツルハシ。

 これは親方からタダ同然で譲って貰った物。


 革製のポーチ。

 行商人のマルカンさんから、ヘビ退治のお礼に貰った物だ。


 青いポーションの厚瓶。

 ライフポーション、語歌堂さんと再会した時に成り行きで貰った。

 これに関してはムリヤリ渡されたと言った方が正しいかもしれない。



 ――――おれの荷物は、これで終わりだった。



 あとは今着替えたパーカとジーンズくらいか。

 多少は異世界の糸で破けを縫い直されていたり、リングで補強されてはいるものの、こいつはまだ元の世界の姿を見せている。


 なんせ、異世界に来てから、この世界に飛ばされて来てから。


 まだ三日しか経っていないのだ。


 それは、『暮らした』などとはどう誤魔化しても呼べないような短い期間。

 持ち物などそうそう多くなるハズもない。


 そんな荷物整理など、すぐに終わってしまう。

 悩む時間も、すぐに終わってしまう。


 フランさんはおれに、逃げろと言った。


 受け取った布切れを取り出す。

 インクで書かれた文字は、残念な事にまだ消えてはいなかった。


 言葉にはされなかったが、この布を渡したことからも意味は明白だ。

 ここから逃げろ、以外のメッセージがこの『リズシールドの砦にて、保護して欲しい』と書かれた文面からは読み取れない。


 ……安全なのだろう、その砦、あるいは街は。


 フランさんは、安全なその街に逃げろと言ったのだろう。

 危険が充満したこの街から離脱して。


 そう言うなら別に、おれはこの街に居る理由よりも、外に出る理由の方が勝ってしまうのだ。

 おれには、異変を調査して、魔物と戦う理由なんて無いのだから。

 何も関わる理由なんてないよと、フランさんも言葉にせずとも伝えているのだから。


 ほら、これで外に避難す(逃げ)る上手い名目ができた。


 …………でも。


 おれはあくまでも『勇者』としてこの世界に喚ばれた。

 その実態はまあ、こんなヤツが召喚されちゃったけど。


 他の人が喚ばれたならもっと別の展開も有り得たかもしれないが、その代わりにおれがしゃしゃり出てきたと考えるならば、それについて責任を取る必要があると思う。


 勇者ならば、街を襲う怪異や村人を苦しめる魔物と戦わなければならない。

 どんなゲームでも当たり前の事実だ。


 だから、おれは勇者として戦うか、フランさんの『指示』通りに逃げるか選ばないと。


 どちらにせよ、危険ではある。


 ここでコマンド風に戦うを選ぶ。


 するとその先に待っているのは、魔素をまき散らした原因ともされている魔物との戦闘。

 一国の首都をこんな壊滅状態にまで追い込んだんだ、その強さはまあ、おれが挑めるようなものでは無いだろう。

 あっさり自分は斃れて、街はこのまま全滅してしまうかもしれない。


 また、逃げるを選んだとしよう。


 リズシールドという街におれが逃げる。

 もしかすると、他の冒険者の人達か、宮殿の騎士の人達が当の魔物を討伐してくれる可能性もある。というかその方が勝算は高い、確実に。

 おれ以外の勇者も、本当の勇者も三人も居ることだし。


 自分は一旦別の街に逃げて、こちらに戻ってくるだけでいい。

 とっても簡単な話だ。


 そして全てが元通りになったら戻ってくる。


 だが、それだとそもそも逃げる意味がない。


 逃げるっていうのは、『その場所に居たら危険だから離れる』というものだ。


 逆に、逃げなかった人達はどうなる?

 逃げることが出来なかった人達は?

 もし討伐が失敗してしまい、それっきりだったら?


 そんなのは小さな子だって判る話だ。


 あと、ここから別の街に移動する時におれが魔物に襲われたり侵蝕にやられたりしたら、それもアウトだ。


 どっちに進んでも行き詰まる考え。


 そうしてシャベルを背負い、ツルハシを腰に、ポーションを入れたポーチを反対の腰に付けて、荷物をまとめた。


 と、その時。


「わんっ!」


 吠え声が近くで聞こえた。


 ベッドの所を見ると犬がいる。

 フランさんの飼い犬、ジャネットだった。


「ジャネットさん!」

「うう!」


 ジャネットさんは今まで姿が見えなかったから、もうどこかに避難したものと思っていたが、そうか、ここに取り残されていたのか。

 情けないことに、このわんこにまで気を回すことができていなかった。

 危うくここに放置してしまえば、死なせていたかもしれない。


「ジャネットさん、ここに居たら危ないぞ。

 早くフランさんのいる所に避難しないと」


 その割には、吠え立てたりと焦った様子はあちらには無い。

 ベッドの上に座っているのも、おすわりの姿勢だし。


 しかもおれがうだうだと整理をしている間、ずっとこちらを見ていたのだろうか。


 つぶらな目で、じっとこっちを見つめる。

 おれの言葉への反応も特に示さず。


 あまりに反応が無いので、施療院の前まで抱えて行こうかと近寄った。

 あるいは、施療院と言われてもピンと来てないのかもと思ったのだ。


 だが、その必要はなかった。


「ジャネットさん?」


 戸惑うおれをよそに、わんこはベッドから降り、さっさと部屋の出口へ。

 そのままこちらを気にせず歩き去ら…………ずに、


 おれに後ろを向いたまま、立ち止まり。

 ふさふさの尻尾を立てて、ひょいと一度揺らした。


(…………?)


 なんだろう。

 ついて来い、という事だろうか。


 意図は判らなかったが、もう準備だけは終わっていたので、ジャネットさんの後ろに従って歩くことにした。

 案外意味なんてなく、挨拶程度のつもりだったのかもしれない。


 バルコニーの窓まで閉められた廊下に出て、階段を降りて一階へ。


 一体どこまで行くんだろうか。

 施療院に避難するとかかな?

 それならおれは院内には入れないから、入り口までは彼女を見送ろう。


 だが、ホールへと向かうことなく、ジャネットさんは横に曲がる。

 そっちは…………、厨房か?


 訝しく思いつつも、結局同行して誰も居ないキッチンへ。


「ジャネットさん、そっちに行っても何も、な――――」


 いや、結論から言えば、あった。

 立ち入った瞬間、視界に入ってきたのだ。



 ――――それは、パンだった。



 ――大きな、一人では食べきれないような大きさのパンがあった。



 誰も居ない、何も無いはずの厨房に忘れ去られたようにぽつんと置かれていたのは、巨大なフランスパンだった。

 昨日も、貰った。

 なんだかんだと言われ、押し付けられるような形で貰った物。


 ……そして、今日もきっと渡そうとするはずだった物。


 壁に背を付けて、そのまま床にしゃがみ込む。


 顔をうつむけ、パーカーの袖に押し当てる。


 前を向いていることが、もう出来なかったのだ。


 衝動のままに、ジャネットさんを気にする余裕もなく、おれは厨房の床にうずくまる姿勢になっていた。立ち上がることは出来なかった。


 ……そして、その衝動とは別にもう一つ、こみ上げてくるものがった。


 自分の中で何かがバチバチとぜるような、あるいは内側に熱を持った煙が渦を巻き、表面にまで満ちてくるような感覚。

 勝手に内から噴出して、体を突き動かそうとする『何か』。


 一体、おれはどこで見失っていたのだろう。


 どこかで内心、周りの状況に飲まれていたのか。

 余りに事態が多き過ぎたために、焦りが出ていたのか。

 どちらにせよ、そうなっていたことにようやく気付けた。


 『にげる』?


 そんな事、する必要も無い。


 『たたかう』?


 勇者として責任を取って魔物と戦う?


 そんなもん、他の誰かがやってくれる。

 言い方は悪いが語歌堂さんや優也なら、その破格のステータスでもって楽勝だろう。


 もう決めた。


 おれは、おれがしたい事をすると決めた。


 そしてそれが、叶うのなら。

 今したいことを一つ言って良いのなら。



 恩返しがしたい。



 二日間だけではあるけど、皇宮を出てからいろんなコトがあった。

 バザールしかり、ギルド、施療院、親方の工房、そしてこの食堂。


 どこに行ってもここの人達は、見ず知らずのおれに親身になってくれた。


 ――その親切に、おれはまだ、何も返せていないじゃないか!!


 そうだ。

 別にそこまで大したコトをしようとしているワケじゃない。

 そんな大げさな話があったとしたら、そっちの方はおれよりよっぽど強い、他三人の日本人に任せておきたい。


 これは、ただの恩返し。


 行くアテも無かった異国人(ストレンジャー)に親切にしてくれ、この二日間面倒を見てくれたお礼。


 それをただ、ちょっと言葉ではなく行動で返すだけだ。


 そこには。


 責任(タタカウ)も、逃走(ニゲル)も、強制(キョウセイ)も、義務(オシツケ)も、制限(セイゲン)も、重圧(プレッシャー)も、遁走(トンソウ)も、妥協(ダキョウ)も、従属(ジュウゾク)も、人任せ(ニゲミチ)も、そこには関係が無い。あってたまるか。


 思い至った途端、心が軽くなったような気がした。


 今までここまでは、周りの勧めに従ったり一つしか道がなかったから、選ぶことなく一本道を歩いてこれた。

 でも、これは違う。選択肢だ。

 それなら、おれは恩返しをしたいと思った。


 多分、それはきっと。


 おれのHP(エイチピー)の全部を失くしても惜しくないもので。


 命を懸けるのに、これ以上相応しいものは無いと言えるほどで。


 ……まあ、そもそも。


 『受けた恩はちゃんと相手に返しなさい』というのが我が明宮家の家訓の一つなのだ。

 これは妹のアカリが徹底させていた。


 なのにその恩をこんな所であだで渡してしまったらダメだろう。

 たとえこの先この世界で生き延び逃げ延びたところで、元の世界に帰って妹に合わせる顔がなくなってしまう。

 兄がそんなんじゃカッコ悪過ぎる。


 よし、決まったなら、後は行動あるのみだ。


 ようやくおれは立ち上がることが出来た。

 目の端を、リングの付いたパーカーの袖で拭う。


 ジャネットさんは厨房に来た時と同じ場所に居た。

 今までずっとこちらを見ていたのだろう。


 ……言葉を待っているようにも見える。


「おれ、ちょっと行ってくるよ」

「わんっ!」


 頼もしく相槌をもらう。


 そうだ。


 何が異常事態だ。

 何が魔素侵蝕(マソシンショク)だ!


 カタカナで小さく書いたら、マソソソソョソにしか見えないじゃんか!


 そんな情けないモノに足を竦まされてたまるかってんだ!


 おれの足は、まだ動けるのに!!

 おれの手は、まだ武器(シャベル)を掴めるのに!!


 ――――おれのHPは、まだ満タンで残っているのに!!


 特にかゆいワケでもないけど、頭を掻く。

 なんだか、ようやく調子が出てきたな。


「目標は、原因を見つけてこの街を元に戻すこと。

 場合によっては魔物と戦いになる。けど、そんなの草原でゼンノ草を取った時と大して変わらない。

 あと、……フランさんに怒られないようにすること」


 なんだか後者の方が大事な気がする。

 これでまた怒られたら、次はどんな事になってしまうかは想像も出来ないし。

 他はまあ、それに比べたら楽勝だろう。


 ステータスが低い?


 まあなんとかなるでしょ。


 まともな武器がない?


 シャベルが武器じゃないと申したか。


 本人の頭がゆるい。バグですか?


 仕様です。


「なんとなく行ける気がしてきた!!」

「わんっ!!」


 ジャネットさんも同調してくれる。

 おれがおバカな事に同意したワケではないと信じたい。


 そして、早くいけと急かすようにもう一鳴き。


 急かさずとも、別に気が変わったりしないって。


 フランスパンをむんずと掴み近くのデカい袋に入れて腰に提げてから、わんこに追い立てられるように厨房を出て、ホールへ。


 後は、飲み物でもあれば道中は食に困らないな。

 まあ、いざとなったらポーションを飲もう。

 語歌堂さんを見習おう。

 ……絶対、パンとポーションて合わないと思うんだけどなあ……。


 あとは魔素侵蝕か。


 まあ、こちらもなんとかなるでしょ。

 ここまで取り敢えずは無事で済んでるし。


 病は気からとも言うからね。


 そこ、バカは風邪をひかないとか言っちゃダメだ。

 自分でも思ったけど言っちゃダメだ。

 これでも一生懸命生きてるんだ。


 扉に手をかけたところで後ろを向くと、ジャネットさんは少し離れた所でおすわりしていた。


「どうした? 施療院の方にはいかないのか?」


 真っ直ぐこっちを見たまま、尻尾をぺたんと一度振る。


 見送り、といった感じかな?


 まあ、さっき戸締まりは確認したから、ここに居ても発症はしないだろうけど。


 きっとこのわんこなりの考えがあるのだろう。

 というか多分おれより賢いよこの犬。


 食堂に連れてきてくれた時の事を思い出しつつ、そう考える。

 あの時もこいつはおれを助けてくれた。

 食堂に、路頭に迷うおれを導いてくれた。


 ついでに果物を取られたことも思い出した。


 …………。


 ……助けてくれたんだよな…………?


 みるみる行く気力とかが減っていきそうだったので、おれは考えるのをやめた。


「まあ良いか、いってきます!!」

「わふん」


 おれは見送りを受けて、外に迷いなく飛び出した。


 そして空を見上げて、睨む。

 依然として歪なの色、紫色シイロに染まった空。


 あれをどうにかしなきゃ、この災害は終わらない。

 原因となる魔物を倒さなければ、あの空は紫色のままなのだから。


 そして、そいつを倒すまで……。

 もうここには戻れない。

 戻る気も無い。


 見てろよ。

 どんなヤツか知らないが、後悔させてやる。

 この勇者(ザコ)を先に潰さなかったことを、後悔させてやる。


 そしてまた、前に向き直った。



 人通りの全くない道を、歩き出す。



 それでも迷う心はもう無く、晴れやかな気分だった。



















 ガチャリ。



 そして扉を開ける。


 目の前には、へっへっとおれを見送ったジャネットさん。

 心なしか首を傾げている。


「ごめんジャネット、ちょっと書くものない?」


 ……。


「いややっぱり一人でこうね、メモも残さずに立ち去るのはちょっとこう、ね?」


 施療院からもだいぶ適当に出てきちゃったし!


 ほら、判るでしょ?

 と、迷いのない目でわんこを見つめる。



 ……………………。



 ………………。



 …………?



 がぶりゃっ。



 容赦なく噛み付かれた。

 ジャンプ噛み付きだった。



「やっぱり許してくれなかったか!!

 いだだただだっこんなに早く戻ってきてスミマセンでしたーー!? だからジャネットさんやめておれのワキ腹はビーフジャーキーじゃないから!」


 ぐいぐいぎりぎりと服が下に引っ張られる!


 犬一匹の体重が、おれのシャツとパーカーとスキンに!!


「よすんだっ、いや、やめて下さい!!

 このままではおれのパーカーがシャツもろとも分離し」



 ビリィィィィッ!



「グンマーーーーーーッ!!」



 おれは気付けば、日本最後の魔境の名前を叫んで地面に崩れ落ちていた。


 そしてやっぱりシャツの端が噛みちぎられてる!


 ついでにパーカーも巻き添えだ!


 その後、食堂のフローリングに大の字になる人間を尻目に、どこからともなくペンを持ってくるジャネット様。

 こちらが完全な服従スタイルで自分のパーカー(だったもの)に震える手でメモすると、それを咥えて走り去っていく。


 おれよりよっぽど迷いのない軽快な走りだった。


 食堂には、中央でうつ伏せになった不審者(ストレンジャー)が取り残される。




 ――こうして、おれの冒険は静かに始まりを告げたのだ――――。









 あ、HPを見たら半分くらいになってました。


 

ようやく物語が動き始めました。

後は登場人物紹介などを挟んでから、3章に突入です!


ご意見ご感想お待ちしております!

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