第十五話 : 弓道少女とシャベル男2
校正する時間が……。
後で軽く手直しするやも知れませぬ……。
「で、何か言うことは?」
「ありません」
「……時間は?」
「ありませ」
「時間は?」
「まだ余裕であります」
「宜しい」
おれの前で静かに頷く弓道着姿の少女。
どっかりと胡座をかいて草むらに座り込んでいる。
おれなんかよりよっぽど華奢なハズなのに、その体からはジャガイモも素足で逃げ出すような重々しいオーラが漂っていた。
「逃げようとした時点で、良い話では無いというのは判るが……」
「はい」
下を向いて、もそもそと返事をする。
草原の大地は暖かく、こんな緊迫した状況でもヘタすると眠気を誘われてしまいそうだ。
さすがにそんな空気では無いけど。
「それでも、話してしまった方が楽になるかもしれないぞ?」
「容疑者に刑事が言うセリフじゃないの、それ?」
「似たようなものだろう?」
どこが違うんだ? という顔をされた。
それはちょっとヒドイんじゃないかな!
確かに都合が悪くなって全力で逃げようとはしたけれど!!
……あれ、割と合ってる。
納得の容疑者扱いだった。
「判った、話すよ」
「宜しい。私だけ身辺状況をキミに赤裸々に話す、というのも変だからな。
キミも私に話してようやくおあいこ、だ」
まあ、向こうから情報を得るだけ得てこちらはだんまりして秘匿、なーんてのはかなりダメな対応だろう。
おれも正直に周りで起こった事を話すべきだな。
フェアトレードだ。
言葉の使い方が正しいかどうかは知らない。
「あ、でもその前に」
「む? ここでこれ以上言い訳するのは男らしくないぞ」
「いやあ、男らしいのはむしろ語歌堂さんのほ」
「何か言ったかな?」
「言ってません」
抑揚なく言われてすぐに言葉を引っ込める。
言葉はナイフって本当だったんだね……。
「そうじゃなくてですね」
そして遂に敬語を使うおれ。
でもこの状況なら誰でも敬語を使うだろう。間違いなく。
おれは、目の前で胡座を組んだ黒髪ポニーテールの少女、語歌堂さんに若干距離を取りつつ告げる。
距離を取ると言っても芋虫のように身体をくねらせる事しか出来ないのが困った所だ。
あと、草が口に入りそうでイヤだ。
「拘束、解除してもらえないかな?」
「……あっ」
相手の視線がおれの足元、突き立った矢の方へ向かう。
どうやら彼女は、おれが地面でシャクトリムシの如くうつ伏せになっている理由を普通に忘れていたようだった。
まさかこちらが言い出さなかったらこのまま会話がずっと進んでいたのかと思うと、空恐ろしいものがある。
せめておれの前で胡座を組んだ時に気付いて欲しかったな……。
そしてようやくセルフ土下寝から解放された。
「さて、これで良いだろう?」
「寛大なお心遣い、感謝します」
「その口調、なんだか似合わないからやめていいぞ……?」
また丁寧な言葉遣いが似合わないって言われた!!
でもおれもだいぶ面倒臭くなっていたため、その言葉に便乗して普通の話し方に戻す。
決して傷付いたワケではない。決して。
「ただ、川原に戻ってくる必要は無かったんじゃないの?」
語歌堂さんの弓のスキル、『影縫い』を解除してもらった後、おれ達は再びさっきの焚き火跡の所までバックしてきた。
すごろくで言うところの『スタートにもどる』だ。
あのマスを思い付いた人は相当な意地の悪い性格の人だろう。
おかげでおれは複数人ですごろくをやると、最後までゴールに辿り着けない。悪魔か。
もしくは単におれの運が悪いのか。
おれのせいなのか。
私が悪魔だ。
デフォルトでボンビーに取り憑かれているのだろうか。
そんなのイヤなのねん。
でもまあ、大きな石の上に座れるという利点はあるけれども、別段戻る必要は無い気がする。
直接街に向かいつつ話しても良いんだし。
その方が時間短縮になると思うんだけどなあ。
「意味はある」
「あるんだ……」
断言された。
そして、真顔で語る。
「こうして焚き火を囲んで話した方が、ぐっとゲームの世界に来た感じがするだろう?」
「そんな理由!? しかもゲームって!!」
間違いない、やっぱり彼女は隠れゲーマーだった!
微妙に言葉の端々からゲーム慣れ(?)した雰囲気が出ていたのだ。召喚された後の儀式の時も話の流れにすぐ順応してたし。
スタンド使いはお互いの存在が判るのと同じ理屈である。
おれがじっとりとした疑惑の目で相手を見ると、向こうはそれに気付いてビクッとなった。
「な、なんだ!?
弓道部にも入っている私がテレビの前で寝転がってゲームしてるのはやっぱりおかしく見えるのか?」
突然のカミングアウト。
いや、そこまで具体的に考えてはいなかったけど。
ていうか今、恐ろしい勢いで墓穴を掘ってったな。
外から見たイメージとは異なる、という自覚があったのか、語歌堂さんは若干顔を赤らめて言う。
ついでに恥ずかしさの誤魔化しから、座っている石をぺしぺしと叩いている。
ちょっと和む仕草だ。
厳しい一辺倒の性格の持ち主かと思ったらそうでもないようだ。
弓道部所属っていうのは凄くしっくりくるけどな。
「良いんじゃない? おれの妹だって空手部に入ってたけどよくバイオハ○ードとかやってるよ」
「そ、そうなのか。私はそれよりもショッピングモールでカメラマンが戦うゾンビゲーの方が……。
じゃなくて! 私の事はどうでもいい!」
さあ話せ早く洗いざらい吐けと躍起になって催促してくる語歌堂さん。
もうヤケになっているような感もあるが気にしない。
二重の意味で意外にフランクだった彼女に毒気を抜かれたのかどうかは知らないが。
まあ話しても良いかな、という気になった。
同じ世界から来た同郷人でもあるし、そもそもずっと隠し通せるとも思ってはいなかったからな。
いつかはバレる事ではあると思っていたことだ。
二日と保たなかったのはこの際置いておく。
「じゃあちょっと長くなるけど、どこから話そうかな……」
おれは、かくかくしかじかと話し始めた――――。
そして、きっかり十秒後。
「――――という訳なんだ」
「いや、キミは『かくかくしかじか』としか言ってないぞ?」
「……伝わらないかな?」
「八文字で伝わってたまるか!
見苦しいぞ、ほら早く仕切りなおすんだ」
怒られた。
いや、なんか良く考えたら凄い説明しづらい話なんだよ!!
装備の件とかは特に。
仕方ない、探り探りで言葉を選ぼう。
おれは話し始めた。テイク2である。
「それで、今は農場に来ていたんだ」
なんとか話し終えた。
どこを端折ればいいか判断が付かなかったのでもう一切合財を話してしまった。
プライバシーなどどこかへ放り出した捨て身の自白である。
まあ最低限要らない所、例えば今朝の、おれイン・ザ井戸の件などはさすがに喋らなかったけれど。当たり前だ。
自分の中で考えながら口に出して話したせいで、時間もだいぶ掛かってしまった。
具体的な時間にしておよそ10分ほど。
ゆで時間3分のカップ麺が三個と一個の途中までは作れる計算だ。
なぜ最後の一つを生煮えのままにしたのかは謎に包まれている。
それでもきちんと相手に伝わっているかは怪しいのが頭の痛い所だが……。
語歌堂さんは把握出来ただろうか。
「……なるほどな」
「え、今の説明で判っちゃったの!?」
どうしてそうなったのか、おれ自身半分くらい判ってないのに!
「……ちょっとおれに判りやすく説明してもらってもいい?」
「何故話した方のキミが把握出来ていないんだ!?」
それでも、まあ良い私がまとめてみようと言われた。
神妙に聞く態勢になる。
石の上で正座しようとしたがやっぱりやめた。
「つまりキミは、城を追い出された後すぐに果物売りのバイトをさせられ、その報酬としてもらった果物を犬に奪われて追いかけられたら食堂で昼食を世話になり、世話になった食堂の主人に冒険者として登録する事を勧められて――――」
ながっ。
「なるほど判ったよ!」
「……途中から聞いていなかったな?」
いや、そんな事は無い!
ちょっと途中から目が虚ろになっていただけだ。
虚ろになった上で、ああ今日もいい天気だなあとか考えていただけだ。
でもまあ、そのまとめを聞いて思った事は。
「いや、ただ、どうしてこうなったのかが今いち納得出来てないっていう……」
その時はそうするしかない、と一本道だと考えて行動しているハズなのに、後々考えてみると首を傾げたくなる部分が多すぎて……。
まるで深夜の公園で妹と一緒に、全裸で砂場に埋まった父親を掘り起こしているような気分になった。
あれ首まで砂に埋もれてたけど、一体どうやって埋まったんだろうか。
「それは私が聞きたいよ……」
語歌堂さんも同じ意見のようだった。
「キミも苦労していたというのは伝わったが……。まあそれはいい」
「……?」
一拍間が空く。
何か疑問でもあるのだろうか。
大丈夫、おれも疑問な点しかないからね。
「私が聞きたいのは、何故アケミヤ君が城を追い出される事になったのか、という事だ。
あの皇子に問い詰められた以外にも理由があるのだろう? そうでなければあの場は抗議するなりなんなりで、一先ず切り抜けられたはずだ」
「………」
「明宮君?」
「ああ、その事か……」
いきなり核心を突いてくるなあ。
でも……。
ここまで話してしまったし、それもついでに自供してしまっても良いだろう。
言った後の事は後で考えよう。
全部話してしまおう。
世界はそれをヤケと呼ぶんだぜ。
「それを説明するには、こいつを見てもらった方が早いかな」
元の世界ならケータイをしまっていた方のジーンズのポケットから、金属のプレートを取り出す。
名刺大のサイズのそれは、午前の陽を受けてキラリと光った。
まるでギルド係員のメガネさんの逆光メガネのようだ。
その例えはどうかと思わなくもない。
「それは……?」
「これ? ギルドで貰った、ステータス・カードって言うんだけどね」
メガネさんに言われた通りの機能を説明する。
対象者の能力値を望むなら表示する機能があること。
許可すれば他人が使用しても同様の機能を発揮すること。
「ほほう……」
「判った?」
さすがの理解力だ。
きっと国語のテストの読解文とか得意だったに違いない。
ちなみにおれは中学の時に「『あたかも』を使って一文を作りなさい」という国語の問題がどーしても判らず、苦し紛れに「隣のモヒカンがやられた。私も三秒後にはホアタァかも知れない」と書いて提出してしまった。
もちろんバツを賜り、あたかもトキのように怒った先生に秘孔を突かれそうになったのは良い思い出だ。
そんなおれを見て、不敵に笑う語歌堂さんが言った。
「理解したぞ。つまり、私とキミのステータスを比較して優劣を決め、キミが勝っていたらこの件に関しては一切聞くな、という事だな?」
「何その好戦的な理由! 違うわ!!」
想像の斜め上を回転斬りで飛んでいく理解の仕方だった!
なぜ真っ先に勝負事に繋がるんだ。
運動系の部活に入るとそんな思考回路になってしまうのだろうか。
なんだか説明するよりも試した方が早そうだ。
おれは自分の頭の方へカードを近付けた。
「む? 何をしているんだ?」
「うん。ちょっとおれのステータスを見て欲しいんだ」
そしてカードを前に差し出す。
語歌堂さんも身を乗り出して覗き込んだ。
----------------
名前:アケミヤ ヒカリ
LV:??
HP:????
SP:????
MP:????
種??:????
性別:男
属性:????
職業:????
装備適正:????????????????????
魔法適正:『????』?? 『????』?? 『????』?? 『????』??
称号:????????????????
能力値
ST??:????
????T:????
I????:????
R??S:????
??????:????
??????:????
LUC運勢:0(固定)
----------------
「……読めないのだが」
「文字化けしてる! すっかり忘れてた!」
「なんでキミまで驚いてるんだ!?」
ワイズマンの表示と同じ感覚で見ちゃったけど、こっちは役に立たないんだった!
どうやらこの文字化けは一時的なものでは無いようだ。永続トラップ型の文字化けだ。
ガッカリな事実がここにきて判明した。
しかしこれ、そうするとカード自体が不良品なんじゃ……?
その事を考えたのはおれだけではないようで、
「もしかしたらそのカード、壊れているのでは?
ちょっと貸してもらえないか?」
と、反対側からカードを覗いていた少女に提案された。
一も二もなく渡す。
「額の方に近付けて、ステータスを表示しろ表示しろ……って意識してみて」
「成る程な。……お、何か出て来たぞ」
語歌堂さんが髪をかき上げて額に当てると、すぐにカードは反応を示した。
大体おれの文字化けステータスを表示するのと同じ位の時間で反応したな。
とするとやっぱり壊れて……?
「おや? 私のは普通に表示されてるな」
えっ。
「み、見せて!」
「別に構わないが、……なんだか自分の能力値を見られるというのは恥ずかしいものがあるな……」
微妙にもじもじされる。
だが、おれに気にする余裕は無い。
語歌堂さんの様子を見るに、パラメータは正しく表示された。
即ちこのカードが壊れてないという証明だ。
そんな、そうするとおれの値が表示されない理由は……?
彼女が手に持っているカードを覗き込んでみた。
----------------
名前:ゴカドウ ミキ
LV:2
HP: 94
SP:158
MP:190
種族:ヒト(異世界)
性別:女
属性:風
職業:勇者
装備適正:『弓』S
魔法適正:『火』A 『水』A 『風』A 『土』A
称号:『異世界人』『召喚された勇者』『生真面目』
能力値
STR:124
VIT:70
INT:68
RES:55
SEN:79
AGI:41
LUC:48
----------------
………。
あれ、変だな?
文字化けはしていないけれど、数値がおかしなコトになってない!?
「もしかしたらキミのステータスの方が上かも知れないが……」
恥ずかしそうに言う。
どうやら彼女の持つステータス・アイで示される数値と同じ、つまりこの値で合っているらしい。
大丈夫、恥ずかしがることはないよ。
VITだってSENだっておれの十倍近くはあるよ。
攻撃力のSTRに至ってはケタが二つ違うよ。
文字化けがどうでも良くなる程の衝撃だった。
これが勇者補正か。
それとも私が弱っちいだけなのでしょうか。
おれはもう、一周回って凪の海のように穏やかな心境になった。
「む、無表情になる程か?」
「ん? ああ、そうじゃなくて」
文字化けとかが頭から消し飛ぶ程のインパクトを持ったカードをもう一回見て、表示を消す。
それから、これはおれのステータス・アイで見た自分の数値なんだけどね、と前置きして。
河原の地面を石で引っ掻いて、おれのステータスを書き記した。
「…………」
しばらく無言の時間が過ぎてから。
「これは……本当か?」
「うん」
「冗談ではなく?」
「そうだったらどんなに良いか……」
異世界に来てから冗談みたいなアクシデントには多々巻き込まれているが、残念ながらこればっかりはジョークでは無い。悲しいことに。
「カード……ではキミのステータスは見えなかったから聞くのだが、見間違いでは、無いんだな?」
「無い、ね」
おれの確認する限りでは、数値にも『称号』や『適正』もこれで間違いは無かったハズだ。
間違えるにしても数値の桁数をミスることなんて余程のうっかりさんでもなければしない。
……つまりおれなら危ないのだが、今回ばっかりはワイズマンを簡易表示させつつ見てるからミスは無い。
「これで数値も適正も称号も間違いないし、『元囚人』の称号の所為でまともな武器も持てない状態なんだ。
それと肝心の『勇者』の称号も、おれには付いてない」
だからさ、となるべく気楽な感じで言う。
そもそもおれはもう納得……はしてないけど、ここまでなんとか切り抜けられてるんだし。
マイバディことシャベルでも、ジャガイモの魔物程度なら対等にやり合える事が判ってる。
最初から無かったと思えばそんな補正、特段必要なモノでも無いのだ。
まあ、ちょっとだけ語歌堂さんの別次元の能力値を見たら羨ましい気もするけど。
真・農場無双したのも納得だった。
「昨日儀式の時におれが言った、『勇者は元から三人しかいなかった』っていうのも実は間違ってないんだよねー、なーんて……」
言ってはみたが、肝心の聞く相手は地面、おれの書いたしょっぱいステータス欄をじっと見ていた。
そのため、おれの言った言葉は草原に吹く風にのまれて、すぐに消えてしまう。
語歌堂さんが考え込む姿勢で黙ってしまったので、おれも釣られて口を閉じた。
すると横の川のせせらぎが嫌に大きな音となって耳に入ってくる。
…………どうしよう、凄くいたたまれない感じになった。
こうなる事も考えていなかったワケじゃないけど、まさかここまで語歌堂さんが黙っちゃうなんて……。
ちらっと顔見たらすっと細く通った眉なんて恐ろしく漢字の八の字に似ちゃってるし。
真面目な人がその表情をするとかなり怖い。
どうしよう。
……踊る?
……ここはもう踊っちゃって有耶無耶にする?
「リベリオール書記官があの後説明していたのだが」
ふと、語歌堂さんが呟くように言った。
俯いたままの姿勢。
おれは立ち上がりかけたのを瞬時に戻って座り直す。
危なかった。
危うく血迷う所だった。
もう少しで一人草原でふしぎなおどりを発動する所だった。
「私達が異世界に居る期間は、1年だ」
「え?」
いきなり何の話だ?
降って湧いたような突然の新情報に思わず声を上げた。
しかし、語歌堂さんに手で制止される。
「『侵攻』の話はキミも聞いていたな?
あれが収まるのは今から、正確には昨日から数えておよそ1年後らしい」
私達が勇者として呼ばれた魔法陣が起動するのが『侵攻』の前触れにもなっているらしい、とも彼女は言った。
「そして、1年後に全てが終わった後、この世界に残るか、起動した魔法陣を使って元の世界に戻るかは自由だそうだ」
元の世界に、帰る。
そうか。
おれはあまり意識していなかったが。
こちらの世界に喚ばれたからには、元の世界に還る手段もあるのか。
その手段である魔法陣が再び機能するまでの期間が、1年。
逆に言えばその時まで戻ることは出来ない。勇者は魔物と戦い続けなければならない。
少し気になったので聞いてみた。
「ちなみに1年って、それだけの期間、語歌堂さんは平気なの?」
「平気とは?」
「ああ、家に帰りたくはならないのかってこと」
「む? まあ、貴重な体験が出来たと思って諦めるさ」
なんという潔さ。
体育会系は皆こうも豪胆なのだろうか。
もしくはただ単にゲームのいやなんでもない。
「っと、それは別に良いんだ」
話が逸れてたみたいだ。
「だから、な」
説明を終えた語歌堂さんが仕切り直す。
気付けばあちらは石の上で脚を組んでいた。
なんでそんなに胡座が似合うんだ。
「キミは宮殿に戻るべきだ」
「……え?」
「さっきの戦いを見た時も思ったのだが、話を聞いて確信した」
どうしてさっきの話からそう繋がるんだ?
戸惑うおれを他所に話が進む。
「明宮君は危なっかし過ぎるんだ」
「あ、危なっかしい……?」
「そうだ。やはり宮殿に戻って他の仲間や、騎士達と一緒に行動した方が良い。
なんなら、……なんなら私だってさっきの戦闘の様にキミ一人位ならかばう事だって」
「…………」
漸く彼女の言わんとすることが飲み込めた。
だが、しかし。
こったの口から咄嗟に出たのは、自分でも予想外な言葉だった。
「いや、ありがたいお誘いだけど遠慮しておくよ」
勝手に開いた口が言葉を発する。
反射的に相手の提案を拒否してしまったのだ。
しかも混じり気なしの善意の提案を。
おれはこんなに考え無しなヤツだっただろうか?
……いや、それも違う気がする。
多分、
「たぶん、今のおれが宮殿に戻っても、きっと皆迷惑するだけだと思う」
「別に、そんなことは」
あるだろう、恐らく。
これが理由の一つ。
姫様の件で居辛いのもあるが、それより皇子の事だ。
おれを追い出した皇子はこの事実を知れば、それを放っておくなんてことは考えられない。
最悪、勇者そのものの存在が怪しくなってしまえば、おれ以外の語歌堂さんや優也、平野君にまで矛先が向く。
他の人を巻き込むのだけは避けたい。
自分だけなら構わないけど、他の人までおれの不運の被害に遭うのは見て居られない。
フランさんの時も考えた事だ。
……でもこれを他の人に言っちゃうと、なにカッコ付けてるんだ、とか思われそうだから言えない。やめて恥ずかしい。
なので他に思い付いた理由を挙げることにした。
「後は、おれはおれで、別のアプローチで『侵攻』とか魔物とかに備えてみようと思うんだ。ほら、それそれ」
語歌堂の持つプレートを指差す。
「おれはギルドに入ったし、そっちの方で頑張ってみるよ。
だから、語歌堂さんは語歌堂さんで今は頑張って欲しい」
優也と平野君のことも、まあ余裕があったら面倒見てあげて、と付け足しておく。
出来る限り勇者は全員でまとまって行動したほうが良いだろう。
まだこちらの世界に慣れていないうちは、特に。
「し、しかし」
「過去の『侵攻』でも冒険者の力を借りたって言ってたし、丁度良いじゃん?」
「む……」
「取り敢えず今はそれで様子を見ない?」
取り敢えず、という言葉が効いたのかどうかは定かではないが、語歌堂さんから反対のは無かった。
少なくとも、表面上は。
「……判った。今はそれに従おう」
あっすげえ不承不承な感じだ、コレ!!
早く立ち去っちまおう!
「じゃあ、おれは街に先に戻ってるよ。
あまり一緒に居るのをゴネリー隊長とかに知られたらまずいから、別行動にしよう」
「……うむ」
石の上に座って腕組みをしたまま返事をされる。
いろいろと思う所があるようだ。
「さっきはモンスターから助けてくれてありがとうね」
荷物をまとめつつ、言う。
まあ例によって荷物なんてそんなに無いから、支度はすぐに終わった。
さて、食堂に戻ってお祖父さんに報告しないと。
もう農場に行って帰ってくるだけなら遅い時間だ。
「それじゃあ、またどこかで!」
おれは腰のツルハシがしっかり固定されているのを確認して、走りだした。
さっきは止むに止まれぬ事情があったため使ったが、今回は『ダッシュ』は使わなくても良いだろう。
パン食べたばっかりの食後だし。
そうしておれは駆け足で草原を踏みしめつつ――――――。
ヒュッ。
さくっと足元に軽い音がして、
「ぐへあっ!!」
地面に叩き付けられた。
「いや、今のは止めない流れだよね!?」
思いっきり顔ぶつけた!
鼻が凄く痛い!
「すっすまん、……立ち去って行くのをみたらつい!」
つい、で強力な拘束スキルを使わないで欲しい。
「お、起き上がれるか!?
ほら、手を貸すから立って……」
「いや先に足元の矢を抜いて!
この態勢で手を引っ張られても身体がエビ反りになっていたたた痛いから!!」
いろいろと台無しだった。
お読みいただき有難うございました!
次回投稿はあし……明後日を予定しております!




