プロローグ : 首都センティリアの景色
土日を経て連載再開! 頑張っていきます!
城門の横の通用門を通り抜け、おれは外に出た。
伸びをする。
……両脇に立ってた門番がこっちを非常に不審物を見るような目で見てきたが、気にしない。
でもようやく、これで自由なのだ。
皇宮にいた時はパワハラを受けて無理やり服を脱がせられるハメ(主観的視点)になったりもした。
でも、ここからは自由だ。
つまり、誰にも邪魔されずに、ゆっくり脱げるということ。
なんで最初に脱ぐ事を考えてんだろうね!!
まあなんだかんだで異世界に来て初めて外を見るんだから、否が応にもテンションが上がってしまうのは仕方ないだろう。
だって、一国の首都ですよ首都! しかも宮殿があったって事は城下町だ。
城下町。なんと心惹かれる響きだろうか。
ただ、もちろん不安もある。
寧ろ不安要素の方が多い。
おれは地球から呼び出されたくせに、自分から進んで退場した半端もの。
感覚で言えば、会社の経営不振によってリストラに巻き込まれたサラリーマンの方々に近いだろうか。
でも、彼らの方がもっと働きたいのに嫌々辞めるしか無かったのかもしれないし、おれは退職金も貰ってない。
というかまだ働いてすらない。そもそも勇者ってお給料でるの?
そうすると、何に例えれば良いんだろう。
バイトの面接で受かったのに、働く初日に来なかった人みたいな感じだろうか。
途端におバカっぽくなった!!
つまりだ。お金も入るアテも無ければ、泣きついて泊まらせてもらえる親戚もこの世界には居ない。
ついでに朝から何も食べてない。アカリ特製の弁当だって元の世界のバッグに入ったままだ。
これがまた地味にダメージがでかい。唐揚げ弁当だと聞いていたのに……。ううう……。
あああ……。
ま、まあ、要は衣食住唐揚げ弁当が今のおれには保証されていないってこと。
また、この世界で言うところのステータス、能力もおれはきっとかなり低いだろう。
そこらの芋虫レベルである。
なんでおまえそんな状態で安全な宮殿からのそのそ出て来ちゃったんだよ、とか言われそうなくらいだが、宮殿がおれにとって安全でなくなってしまったのだから仕方ない。皇子様がみてる。
そんなワケでおれは、かなり丸腰に近い状態で異世界に放り出されてしまったのだ。
完全に丸腰である、と言わない理由は簡単で、服を着ているからである。
ジーンズが無ければ即死だった。もちろん社会的な意味で。
この世界にわいせつ罪があるかは判らないけど。膝のとこが焦げてるけど。
わいせつ罪と言えば、結局あれから件のお姫様に会うチャンスは無かったなあ。
グストさんに頼みはしたし彼ならちゃんと約束は守ってくれると思うが、それでも直接あって謝った方が良いのは間違いない。
でももう宮殿には戻れないし、戻るとまたおれの両手にステキな腕輪が付いてしまうだろう。
そして再度離れに連れて行かれ、牢屋にぶち込まれて「やあ。ようこそ、おっさんハウスへ」となるのは勘弁していただきたい。
更に最悪のケースだと、あの皇子の命令によっておれの首が身体からフライアウェイする事になってしまう。
あともう一つの漠然とした不安は、宮殿で聞いた『侵攻』のこと。
都市が滅び国が消えるほどのモンスターの襲撃を意味している、というのは判りはしたが、具体的な想像がまるっきりつかない。それ故にじわりとした危機感がある。
話を聞いてしまった以上、また、この異世界に来てしまった以上は『侵攻』とは無縁ではいられないかもしれない。
前述の問題がもし片付いたら、という条件は付くけれども『侵攻』への備えも必要になってくる可能性は大いにある。
と、今までの回想とこれからの事をぼんやり考えて歩いていると。
風が吹いた。
自然に目線が上にいく。
「うわ……!!」
そこは高い丘だった。
突き抜けるように青々とした空。
それが覆いかぶさるようにして、センティリアル都市へと広がっている。
都市は丘から見下ろすと全容が一望でき、碁盤の目のように規則正しく整列した街並みであることが判る。
中でもタテに何本か通った道は大通りとでも呼ぶべき大きさで、ここからでもその通りに沢山の人々が居るのが見て取れた。
その通りが、おれが今出てきた宮殿の方からずっと、軽く数キロほど真っ直ぐ繋がり遠く端の方にある巨大な城壁へと至るのだ。城壁は都市を囲むように丸く形造られている。
丘の宮殿を端として卵型の頂点にし、そこから反対側の平地に向かって拡がっていく城塞都市。
それがセンティリアル帝国の首都、センティリアだったのだ。
おれは、一つ頷いた。
風でいつもよりも更にぼさぼさになった髪をかき上げる。
そして歩き出す。
丘のふもとに、その小高い丘をぐるりと廻るように、更に城壁があるのが見えた。
あれを抜ければもう、センティリアの都市に着くのだろう。
って。
まだ宮殿の敷地だったんじゃん!!
おれは誰に見られたワケでも無いのに恥ずかしい気持ちになりながら、丘の斜面の道を降りて行ったのであった。
そちらにもしっかり役目を果たしていた職務熱心な門番に見咎められ、挙げ句城の中から何か持ち出してないかで押し問答になり、身体中をじっくりまさぐられてしまったのはまた別の話。
次回から本格的に話が進みます!




