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4.魔法使いになれなかった男

 僕は生まれた時から前世の記憶がある。



 それに気づいた直後は、これはもしかして、中世ヨーロッパ風の異世界で赤ん坊のうちから魔力を練り上げて天才魔法使いになったりするパターン? などと妄想してしまった。視界に入る天井や壁は板張りだし、両親や祖父母はバタ臭い顔だったからね。

 祖父が回し始めたビデオカメラで、科学の世界らしいとわかりがっかりするまでの10分かそこらの夢だったけど。更に祖母が出してきたプレゼントがもっと世界を限定してくれた。アソパソマンのぬいぐるみ! 寝たままの僕によく見えるように目の前に持って来て、歌までりんりん熱唱してくれた。

 会話が日本語に聞こえるチート能力なわけじゃなく、普通に日本語話してたんだね、パパ、ママ、ジジ、ババ! 顔が濃いのはハーフだったりクォーターだったりするからなんだけど、それが解るのはもっと後になってからだ。




 そんなわけで、結論から言えば『異世界転生魔法チート』ではなく、『乙女ゲーム転生攻略キャラ』な立場だった。しかも、描いたの自分(!)だし。


 キャラクターデザインやメインスチルの原画は、人気の絵師さんが手がけているけど、それをゲーム用にCGにしたのが僕。ゲーム雑誌用にも色々描いた。

 商業用じゃない絵も描かされた。スタッフのおねー様方のリクエストで、キャラクターの○○と私♪とか、○○と●●の絡みとか、○○の幼少期とか。

 私♪に見えるようにするのが大変だった。中には0.1tありそうなデ…ぽっちゃりさんもいる。ヒロイン体型にすると別人だと文句を言われ、リアルに似せて肉を描くと下手と罵られる。ホモ絵の方が描くのが楽ってどーよ?



 『よ~く知った顔と名前』が『自分』だとわかった時から、僕の試練は始まった。よりによってアンポンタンナルシスト渡邊由愛わたなべゆあだなんて!

 ナルシーなのは自粛すりゃいいだけだし、アホなのも前世の記憶でフォローできた。問題は絵心が0な事だ。設定で迷画伯とされているだけあって、ひどい。仕事にするくらいお絵描きが好きだった僕なのに、全然描けない。丸を丸く描くことから始めた。

 知識は脳内のことだから前世のそれを生かすことができるけど、技能はそうはいかないようだと僕なりに理論づけしてみた。サンプルがひとつなのでタマタマなのかも知れないけど。

 ちなみに前世で悲惨だった運動神経は人並みになっていた! リレーに選ばれるほどではないが、たまに徒競走でトップになれる。素晴らしい。





 そして、12年経った。

 ゲームな人生は嫌だったので舞台に上がらなければいい、と中学受験は避けようとした。ところが、叔母の策略で受験する羽目になってしまう。ゲームでは美しいもの好きなのて趣のある煉瓦造りの学舎に惹かれて自分の意思で受験し、奇跡的に受かったという設定なのに、なんでここで叔母なんてのが出てくるんだろう。補正ってやつか?


 叔母は父の妹で、僕とは6歳しか離れていない。年の離れた末っ子としてプリンセスのようにちやほやされていたのに、天使ぼくの誕生でその座を奪われた。

 その仕返しとばかりに、地味に嫌がらせを仕掛けてくるのだ。子供のやることだから、程々に引っ掛かってみたり何気なくスルーしたりと、彼女が逆ギレしない程度に相手をしていたが、まだ鬱憤は晴れないらしい。


 塾にも行かず、下手くそなマンガ絵ばかり描いている甥っ子が、自分の母校を受験して見事失敗する姿を見て、笑ってやろうという魂胆がみえみえの提案をしてきたのだった。娘の僻み根性に全く気づいてない祖父母を、ちゃっかり味方に付けてから言ってくるのが小賢しい。




 もっとレベルの高い学校も受けて、そっちに行ってやる!








随分、投稿が遅れてしまいました。


色々書きたくなったので、もう少し続きます。

流石に、今後は三ヶ月待たせたりはしませんので、よろしければお付き合い下さい。


以前の投稿部分を少し修正しましたが、内容の変化はありません。

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