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3.攻略キャラクターですが、多分ゲームのジャンルを勘違いしています。

 父に再婚相手を紹介されて、過去の記憶がよみがえった。今のこの世界、前世で妹が熱中していたゲームに酷似している。


 ゲームのタイトルも覚えていないし、内容もほとんど知らない。

 ただ『早乙女愛彦』という登場人物の顔が俺に似ているというので、『愛彦様』について散々語られたのだ。眼鏡のフレームが似てるくらいで、自分はあんな暗そうな男ではないと思ったが、うっかり反論しようものなら何倍にもなって返ってくるので黙って聞いていた。

 再婚相手の女性は『愛』さん。父親が『誠』なので、その頃映画化された古い漫画のパクりじゃないか、と思ったから再婚のくだりもよく覚えている。


 そう、今の俺の名前は、早乙女愛彦。


 前世の妹情報によると、愛彦は目の前にいるこのチビ『未来の義妹、愛生』に刺されて生死をさ迷うことになるらしい。確か、初対面の時に一目惚れされてしまったのに、全然気付かないまま妹として優しく接したため恋に狂わせた……という展開だった筈だ。「お前は俺に惚れるなよ?」と、前世妹にふざけて言ったら「兄貴は愛彦様と違って残念過ぎるから、絶対、惚れんわ」と残念と絶対を強調されたが……。


 まぁ、誤解(恋慕)されないようチビとは親しくしなければいいってことだよな?


 それにしても、せっかく可愛い顔してるのに、何で男みたいな服を着ているんだろ。勿体ない。






*****






「一哉、これ、ファイルしといて。」

「ほーい。」


 夏休み明けに徳橋会長に渡された三枚の『家庭調査票』のコピー。そのうちの一枚はよく知った奴のものだった。

 『早乙女愛彦』

 どうやら親が再婚したらしい。普通のダチなら「聞いてねぇぞ!」と文句を言ってやるところだが、ま、アイツだしな。弟もできたようだ。

『早乙女愛生』

 書かれた弟の名前を改めて見た時、記憶がよみがえった。『早乙女愛彦』『早乙女愛生』これって前世の彼女が夢中になっていたゲームの登場人物じゃないか?



 体調が悪いとデートをキャンセルされ、心配して見舞いに行くと、泣きはらした顔の彼女がいた。「愛彦様が、愛彦様が…」刺されたと泣き続けるがヨシヒコサマとやらが誰かわからない。『様』を付けてるあたり、ジャニーズかなんかのアイドルかも、とスマホで検索してみた。ブログやツイッターで嘆いている連中が少なからずいたが、ただのゲームの話らしい。

 ヨシヒコ違いかと確認したら、コレで正解だった。

 しかもオレより愛彦様を愛しているなどと気持ち悪いことまで言うので、即行別れた。漫画やゲームが好きなだとは知ってたが…これがオタクか?とゾッとした。趣味に入れ込むのを全否定するつもりはないが、程度ってものがあるだろう。



 あ? でも弟?

 犯人は妹じゃなかったか?


 他人事わかれたおんななので記憶は曖昧だ。ていうか、前世の記憶って、何? なんでストンと納得してんだよ、オレ!




「何見てんの?」


 オレの手が止まっていたので、徳橋会長が覗きこんできた。


「あー、早乙女ね。アイツの母親とかになったら『貴女はお茶のひとつも満足に淹れられないんですか?』とか、細けーことで一々文句言われそうだよなぁ。」

「いや、一々文句言うほど興味を持たないっしょ。」

「………なるほど。」




 何にせよ、愛彦がこの愛生くんと仲良くできてたら、刺されてどうこうって話にはならないんじゃね? さっさとファイルを閉じて愛彦を探してみることにした。敵を知るには、まず味方から(違) 帰ってなきゃいいけど。

 さっきまでいた、さっき何処其処で見かけた、と目撃情報はたくさんあるが、実物が捕まらない。結局30分かけて高校の敷地にある図書館まで来てしまった。館内は私語厳禁なので、パソコンで蔵書検索をしていた愛彦を外に連れ出す。


「どうしました。 何か急用でも?」

「……いや、急用はない」


 『さっきまで』『ついさっき』という言葉につられて探しまくってしまったが、弟のことなど明日でも明後日でもいつでもいいことだった。事件が起きるのは大学受験間近、五年も先の話だ。何やってんだか。愛彦も怪訝そうな顔をしてる。


「あー、そうそう。お前、弟ができたって?」

「誰にも言っていないのに、何故愛崎くんが知っているのですか?」

「あ……」


 ヤバい。

 本来『家庭調査票』は生徒会にあるべきものではない。個人情報保護のためと生徒会に名簿すら回して来なくなった学園に反発して、歴代生徒会が暗躍(先輩談)してコピーを入手しているのだ。生徒会役員でも一部しか知らないことだ。


「い、いろいろ伝手があるんだよ!」

「伝手、ですか。」

「まーまー、それより弟、可愛い? 仲良くやってる?」

「愛崎くんには関係のないことです。」


 強引に話を進めてみたが、予想通りの対応だ。でも案外押しに弱いのはわかっているので押しきりゃいい。


「関係ないかも知れないけど、友達の家庭環境が激変したんだから気になるだろ。心配しちゃ悪いか?」

「……友達?」

「え?そこ? 反応するとこ、そこ? オレら、一学期、毎日一緒に弁当食ったよな?」

「僕がいると女子が寄って来ないので、単なる女子避けの壁かと思っていました。」

「……………………」


 確かに、何故かオレと弁当を食いたいという女子が殺到した。タイミング的にそれを避けるように愛彦を誘った。けどけど……。


「受験の時に知り合って、入学説明会で再会してお互いの合格喜んで、偶然同じクラスになって…」

「すみません。僕に友人ができるという発想がなかったです。」

「…何、それ!」



 結構親しいつもりだったんだけど。







 

終わりませんでした。

一話あたりの長さのバランスのため、ここで切ります。


お気に入り登録して貰うって、嬉しいですね。

ありがとうございます。



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