あとがき
お読みいただき、ありがとうございました。連載終了してすでに半年経っていますが、せっかくの自己満ページなのでちょっと振り返ろうかなと思います。
以前拍手お礼にも書いていたのですが、原案というか構想元は中学時代のリレー小説です(それ自体は拙作「緋い少女と天使の塔」が近い雰囲気でした)。かつて自然消滅してしまったあの小説に終わりがあるなら、どんな結末だろうと考えていたのがこのお話です。
クラウドが転生して、現代で礼緋を見つける。大筋だけは決まっていて、詰めていくうちに書きたくなってしまったので、なろうに登録して書き始めました。以前からラノベ紛いのお話はちょこちょこ書いていたのですが、投稿しようと思ったのはこれが初めてです。
山本蔵人は彼女にとって「くらひと」で、彼にとって「黒」、天使のいたあの世界では「クラウド」で、現代で目覚めたときには「(何者でもない)」、そして「蔵人」として自覚する、という構成になっています。
礼緋と緋呂の間でわけわかんなくなる、というのも最初から決まっていて、エピローグは書き終えていたのですが、そこまで話を運ぶのがなかなか難しく、お話を終わらせるって大変なんだなと当然のことを思い知りました。
蔵人があんなに早く緋呂の世界の言葉を覚えてあっさり馴染めたのは、元から緋呂の世界の住人だったからではないかとか、「現実的な解釈」が本当とするなら、蔵人の体に父親による折檻のあとがないのはおかしいとか、いろいろ考えることはできます。結局蔵人はクラウドなのか、というのは、皆さまのご想像にお任せするということで。ただ、作中で蔵人も気がついたとおり、緋呂は礼緋ではありません。作者もときどき混同しそうになっていましたが。
荻原規子の、「樹上のゆりかご」という本があります。読んだことのない人にはさっぱりですが、当時その本を読んだ作者にとってけっこうショックな終わり方でした。夢を夢のままで終わらせてくれない感じが、どうにももやもやしてしまって、以来その本を読み返すことはなかったのですが、最近ちょっとわかるような気がしてきたんです。夢を夢のままにするのは簡単だよなあと。でも現実はそうじゃないよなあと。と言う感じで、本作もああいった曖昧な終わりにしてみました。
余談ですが、作中一番好きなせりふは「分かったら、電話して」です。
こんなところまで読んでいただき、重ね重ねありがとうございます。次話からは書き下ろし短編や拍手お礼の再掲などを置く予定ですので、気が向けばおつきあいください。