Flight:3 俺らの日常は常にネタとボケ。今日は特別にスパイスを効かせてるけどね。―午前中―
収まりきらなかったので午前午後の2PARTに分けました
2102年
7月7日
AM08:30
日本・横須賀市郊外
SB高専校門前
だるそうな平凡顔のチビと面倒見が良さそうな黒髪サラサラのイケメンがだべりながら歩いていると
「Hey!ジョージは昨日どうだったよ」
そこに残念で茶髪なイケメンがやかましく乱入して平凡チビに話し掛けた。
「ジョージって誰だ?」
「さぁ?」
そして黒髪サラサラにも話し掛けた。
「Wow!マイケルもいたのか!」
「マイケルっていたっけ?」
「俺が知るか」
コレが彼らのいつもで日常。学校の人気者の登校風景だ。
だるそうな平凡顔のチビの名は橋雁空磨。
所属は操縦科。履修は無し。
学年&学科別主席。
茶髪の残念が詩谷遊也。
所属は整備科。履修で操縦科もとっている。
学年5位、学科別・整備2位、操縦5位。
残った黒髪サラサラが右嶋昂希。
所属は管制科。履修は整備科。
学年4位、学科別・管制2位、整備6位。
3人共に部活動は無所属。
常に3人は校門前で揃って登校する。
「何だよつまんねぇなぁ。俺は最高のツッコミを期待してたのによ、マジ空気嫁」
『無茶だろそれ』
「はっ!この俺様に付いていけないとは…低能だな!」
「マジ黙れよジョージ」
「そうだよマイケル。いい精神科医紹介するから。我慢しない方がいい」
「ちょっとまて!チョット待つんだ君たち!」
「でさー、結局ボロボロでさー…」
「その人、よっぽど強いんだな…」
「流石Aランカーだよ」
「だね」
「……フヒヒ、サーセンwww」
そして常にクロスバイクを駐輪場に置きに行く為に遊也のみ別れ、ボケは尽くズタズタに引き裂かれるのだった。
徒歩通の2人はそのまま昇降口へ進み、話は続く。
「……へーその人若いんだ」
「しかも大和撫子をそのまま実体化したような人だった。若干侍みたいだったけどな」
「ほ~…んで、その人に気に入られた、と?」
「そ。平凡顔の俺にだぞ。……絶対釣り合わねぇ」
昨日、上木鈴華に気に入られた事を不満そうに語り、仕舞いには溜め息まで出た。
「あ、あはは…でも上木教官…だっけ?その人はきっとソウマの技術とSBに対する姿勢に惚れたんじゃないか?」
「……そんな平面世界みたいなご都合主義は御免だ」
さも疲れたように、今度は深い溜め息が出る。
「まあまあ、腕は確かなんだし、指導能力もそれだけあるんだから、十分尊敬できるんだろ?」
「あるにはあるが……±0だな」
「手厳しいこって」
「うっせぇ黙れ。……貴様の彼女が羨ましい。ハルちゃんに貴様のお宝本の在処全て吐くぞコラ」
「それは勘弁」
右嶋昂希には彼女がいる。同じ管制科に通う皆上晴奈。
黒髪が映える白い肌と程良く均衡が取れたライン、すっとした鼻、黒く大きい目、薄く色の良い唇。何を着ても“清楚”の一文字しか浮かばないその容姿と、純粋で真っ直ぐな人柄で人気がある。
人曰く。
“あれこそが真の大和撫子ぞ……”
と。
因みに出身は秋田らしく、余り異性を意識しない空磨でさえも初見の時に
「……本物の秋田美人がおった…」
と見惚れてしまった。
最も、彼女自身は昂希に一目惚れしてしまったそうな。
ただ、何かあるとすれば、チョット抜けてるところと、運動オンチなところ。
「ぁ、ハルおはよー!!」
「はよっすハルさん」
そして……
「ねぇ~、コウちゃん……」
「ん?何ハル?」
「さっき……女の人の話してたでしょ……」
「へ?……はっ!?あ、えっ、あ…んと~……ハr「してた…でしょ?」はっ、はいぃぃぃ!!!!」
「……相変わらずだな」
この言動の通り、余りに昂希一筋故、チョット愛が行き過ぎてる事だろう。
「…またハルちん暴走したね」
「愛故だよ。あの愛こそ昂希君を振り向かせたんだから」
「…昂希、俺はお前を忘れない……グスッ」
「おいコラ」
周りの同級生が遠巻きに色々言う。
一名違うリアクションなのは彼だからだろう。
「ちょっ、ユウ!俺まだ死なないから!!不吉な反応しないで!!」
「コウちゃん…私の話聞いてる?」
「も、勿論「じゃあ、何て言ったか解るよね…?」ぇ、ぁ…ぃゃ~その~……「解らなかったら……コウちゃんのカラダに聞いちゃうよ?……この場で」ハル以外の女性の話はもうしません!!!」
晴奈の“肉を喰らう猛獣の目”に対する反射は、ここ数ヶ月に擦り込まれた悲しいモノだった。
「まあ、いつもだな」
「時間定刻、平常運転。大した事無い」
「オォォイィィィィ!!俺を見捨てるなァァァ!!!」
「はぁ~……コウちゃんの声…いっぱい聞けて幸せぇ~……」
傍観だけしてさっさと昇降口に向かう2人とその他大勢に見捨てられギャアギャア騒ぎ立てる昂希と、そんな昂希にうっとりしながら胸板にスリスリする晴奈。
明らかに異常ではあるが、これが彼らの日常で、半年と待たずに普遍化したところを見るに、ほぼ毎日起こっていたのだろう。
哀れ昂希。
君の夫婦生活はずっと晴奈のターンだろう。
「おぉぉいぃぃてぇぇくぅぅなぁぁぁぁぁああ!!!」
「コウちゃんの泣き声かわいぃよ~…にへへ~……」
余談ではあるが、晴奈は学年10位、学科別3位。
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side空磨
同日
AM08:45
1-D教室内
コウとハルは出席直前になんとか着席する事ができ、遅刻にはならなかった。
現在、担任の久米島先生が教壇に立って今日の予定等を伝えている。
………のだが
「今日はっ、一学期のっ、前期っ、終業式、ですっ」
ピョンコピョンコ
「大会にっ、出る、人はっ、20日のっ、後期っ、終業式までっ、登校日っ、に、なっ、ります!」
ピョンコピョンコピョンコ
何つーかまあ、跳ねてる。
教卓の上に見えてた首から上が、一瞬で栗色の頭に変わる。
教卓で作業する分には何ともないらしいが、そこから立って話そうとすると、どうしても頭しか見えなくなる。
そこで先生はそこが厚めのサンダルみたいのを履いてみたり、爪先立ちをしてみたり、台に乗ってみたり……
と、幾度となくチャレンジしたのだがコレと言ったものがなかったらしく、結果的に特注の教壇を作ってもらうことになり、俺のクラスだけ教壇が10cm強高くなっている。
「授業以外は台を使いたくないんです!!」
なる変なこだわりで、少なくとも俺が入学してからずっと、教壇で跳ねている。
しかも約20分ずっと。
それだけのスタミナと筋力が付いたのだろう。
………何コレコワイ。いろんな意味で。
「それっ、ではっ、SHLをっ、終わりにしまっ、すっ!セイちゃんっ、号令っ、お願いっ、しますっ!」
「起立、気を付け、礼」
はっきりとした凛々しい声で号令をしたセイちゃん…もとい、我が1-Dのクラス委員長、甲斐崎聖。
兎に角優等生の一言に尽きる。
真面目でユーモアもあって文武両道。
ダークブラウンの長い髪をポニーテールにし、茶色の大きな目、高い鼻、桃色のふっくらした唇。出るとこ出て引っ込むとこは引っ込んでるナイスバディ。
勿論、彼女自身が学年のアイドルでもあり、人気は恐ろしく高い。
また、父がSBトップチームのオーナー兼監督で、聖も含めて小学校の頃からの顔馴染みである。
因みに所属は操縦科で履修に管制科。
将来の夢は操縦管制官。
因みに学年次席、学科別が操縦2位、管制1位。
「それじゃあ、みんな第1アリーナに行って。時間に遅れたらとってもキツいお仕置きだからね♪」
……あと若干サディストだったか。
「空くん、失礼なこと考えなかった?」
「若干サディストだと思ってた」
「失礼しちゃうな。私は至って普通だよ。空くんこそ、かなりウブだもんね」
「否定はしないが聖はサディストだ」
「ウフフ……」
「ニシシ……」
「………コレって…」
「アレ《・・》、だな」
「アレ《・・》、だね」
『………』
『総員退避ィィィィ!!』
「土下座して謝「謝りなさい!!!」ぐがぼっ…!!!!!」
我慢出来ずに殴りかかったが、結局聖のハイキックが顎に入って吹っ飛んだ。
意識はその場に置いて行かれたのは言わずもがな。
sideout
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AM09:30
校内:アリーナ
「………と言う訳で、今日より本校に赴任して来られた教官をご紹介します」
壇上中央の教頭が軽く会釈をすると、右後方に座っていた1人の麗人がパイプ椅子から立つ。
「上木鈴華教官です。上木教官は元国際Aランカーで、本校の卒業生です。操縦科の全学年の実技・実戦訓練の主任教官をしていただきます」
『ああ神よ!!我らはまだ見放されていなかった!!!』
「サイコーに残念な奴等め……あんな年増の何処が良いというのか」
「最後のセリフで評価はどん底に落ちたよユウ」
「俺が認めるは画面上に同棲する妹たちだけだ。リアル8歳年上はただのババァだ」
「キミには本当に失望したよ」
捌ききれないバカ共はスルーに走るとして、最大のボケとただ1人のツッコミに真っ当な漫才はできないものか、と頭が痛い女子達。
「ところで皆上さん、委員長とエースは?」
丁度晴奈の隣にいた女子生徒がボソボソと聞いてきた。
因みに“エース”とは空磨を指す。
「聖ちゃんとソウマ君?確か聖ちゃんがソウマ君を返り討ちにして保健室に行った筈だよ」
「にしても遅いし……はっ!?じ、じゃあ…もしかして……」////
「……お似合いだし、幼なじみだし……ありそう」/////
『キャッ!!』////
「…なんだ?今度は女子まで色めき立ちやがったぞ」
「……聖さんとソウマがまだ帰ってきてないからね。それでじゃないかな?」
「……保健室でギシアンの妄想か。ギャルゲ的展開は画面の中だけにして欲しいな」
「興醒めするの?」
「そう言うことだ」
「やっぱり君はサイテーだ」
よく訳が解らない状況に陥ってしまったアリーナであった。
が、
それを思わぬ形で崩したのは上木鈴華だった。
「紹介に預かった上木鈴華だ。これから数年間、君たちを一流のライダーを育て上げる。今の3年生は最終学年でエースと同等。2年生でエース以上。エースと同じ代達は“最終学年のエースに常勝”を目指してもらう」
ザワッ……!!
「ちっ、ちょっとそれって……!?」
「無茶あり過ぎだろ!?」
「全身赤に染めても不可能だ!!」
「あ、あはは…僕はもうダメだ」
あまりに大物な発言に騒然とするアリーナ。
「突拍子もない挨拶だね、上木教官」
「なんだ?もう老化が始まったのか?」
なんだかんだ言ってこの2人が一番の大物だったりする。
一方、その頃……
「あなたも一々やりすぎよ」
「そうは言われましても、常に彼からなんで」
「実は好きだったり?」
「しないですね。絶対に」
「う……ぅう~ん…」
「ヤダ可愛い。どうしてあげましょう。聖ちゃん、彼を私にくれない?」
「教育機関に携わる人間が何を言い出しますか。そして私の所持物ですからそれは無理です」
案外保健室も変な雰囲気だった。
そして人を自分の所持物と言い張る聖もそこら辺の常識を爆破する勢いである。
「少しだけで良いから貸してよ~」
「はぁ…因みにその後どうする気で?」
「ペロリと「禁断の関係にはならないで下さいね」…じゃあねっとり「触れるだけでオーバーヒートしちゃいますよ」…なら私の「挑発しても鼻血を出して気絶するだけかと」……チッ」
学校の保険医、またの名を【グラマラス・ドクター】こと不知火灯音は空磨の寝顔を見て悶え、聖はそんな保険医を監視していた。
「彼は重度のヘタレなんで」
「ヘタレ云々以前にウブ過ぎやしない?」
「今まで彼は、“女性はお淑やかで奥ゆかしい人”と言う固定概念に囚われてましたから。因みに母親は例外だそうです」
「そ、そう……エース君も案外、古風な考えを持っているのね」
「私が中学生あたりまでは彼のタイプだったみたいですし、父に植え付けられたのは小5の時ですし」
「へぇ~……」
そこからまた十数分、空磨の昔話に花が咲いたのは補足に留めておくとしよう。
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AM10:30
アリーナ
「……それでは操縦科の教科を取っている生徒以外は、1年生から教室に帰って下さい」
ザワザワ……
「やっと終わったと思ったら……畜生め」
「そんなにツンツンするなよユウ。一種役得と思って我慢ガマン」
「コウの裏切り者め!!」
「僕は一つも悪くない」
長々と今後について説明され、いち早く解放されたかった遊也にとって、それこそ拷問であった。
「それによ、結局ソウマと委員長は出てこなかったし……案外寂しいんだぞコラ」
「しょーがないよ。あの人が、女子が噂してた女性初の国際Aランカーなんだから」
「つか、最近だろ?操縦科を志望する女子が増えたの」
「教官の影響は少なくともあるだろうね」
「やっぱりか……」
「でも、大体の目的は我がエース様の存在だろうね。なんせ“世界一頂点に相応しい人間”世界ベスト10入りしたただ1人の日本人だし」
「……底無しだな、ソウマ」
2人は共に、皮肉が皮肉でなくなってきている事に辛かった。
「今更だよ。それじゃ、先戻るね」
はいよ~…と、覇気のない挨拶を返し、遊也は周りを見る。
知った顔知らない顔がちらほらと目に入るが、その7割は女子に集まっていた。
「ソーマー…早く帰ってこーい……」
アウェイ感たっぷりのアリーナに残る3割の男子。
少なからず、我等がエースの到着を心細く待っていたのは言わずもがな。
「……んだよ…結局終わってんじゃん。あ~、起きて損した」
「この後、操縦科の新任の先生から色々説明あるから、自分のクラスの列に行ってね」
「……災難続きとはこのこたぁなぁ~…はぁ」
「溜め息吐くと幸福「もうスッカラカンだ」…一歩遅かったか」
そしてこの声に操縦科全男子生徒は救われた。
(神様…ありがとう……)
「……何で男子手を組んで天井仰いでんの?」
「…さぁ?」
茂舞子と模憮代は首を傾げた。
空磨はそそくさと遊也の近くに座り、新任教官の説明会が始まるまで、全校集会の内容を聞いた。
「ほぅ…上木教官はそんな事言ってたのか……」
「あぁ…ありゃ狂言だと……ソウマ?どうした俯いて?まだ痛むのか?」
「アァソウだ……ズクンズクン疼いてヤがる」
「あ、あるぇ?ソウマさん?怒ってらっしゃる?」
「まぁ…ナ…」
クツクツと不気味に笑い出した空磨の周囲には、最早“異界”と称しても遜色ないオーラが漂い始めた。
(…エースが壊れた…!?)
(上木教官と何が…!?)
男女共に心が叫んだ疑問。無論、あの遊也ですら冷や汗流しながらそれを思っていた。
「それじゃあ時間だから始めるぞ」
1学年の学年主任の緋賀が舞台に立ち、マイクを持って話し始めた。
「それでは夏期休暇について上木教官から話しがある。心して聞くように」
そしてすぐに鈴華にマイクを渡すと舞台から降りた。
「…先程の通り、君たちにはこれから“エース”クラスになって貰うために、この夏期休業にやって貰うことがある」
「先生方、お願いします」と、操縦科の教師・教官があるA3の紙を配り始めた。
男子列の最初に手渡された空磨がそれに眼を通す。
そこには
【FIA・JAF認定国際ライセンステストエントリーシート:SBライセンスエントリー】
と、A3用紙左上にゴシック体で書かれており、
「君達にはSBの国際ライセンスのセレクションを受けて貰い、合格することだ」
鈴華本人がご丁寧にバッサリと宣言した。
「ちょっ、鈴姉さん!?コレどういうこっちゃ!!」
思わず立ち上がり、鈴華に問う。
「橋雁、“どう”とは?何に答えればいい?」
「何にって…そりゃコッチの台詞だわ!何故せっかくの夏休みにセレクション受けなきゃなんねぇんだ!?」
補足として、“セレクション“とはライセンステストの用語である。
「橋雁、君は国際ライセンステストの選考対象年齢が引き下げられたのは、知ってるな」
「そりゃまあ……ニュースでやってたからな」
遡ること1月前。
FIAはSB国際ライセンステストの選考対象年齢を急遽、18歳から15歳まで引き下げたのだ。それに伴い、JAFも選考対象年齢を引き下げた。
セレクション参加可能なのはS6とS5まの2クラス、全カテゴリーである。
空磨はジュニアでの成績から特例が出され、小6の12月時点でS5セレクション対象に入った。
「君は春にS4を取得しているが、今回から君だけはS2ライセンスエントリーまで可能になった。この機会にどうだ?」
「いやまあ、結局半年後にはS3受けるつもりだったけども……」
「なら半年早まるだけじゃないか」
「……って、そうじゃない!何で他のみんながそれを受けにゃならんのだ!たった1ヶ月でその合格水準まで持っていけるのか!?セレクション参加費用だってバカにならないんだぞ!?」
「1ヶ月あるだろう」
「なっ……!?」
「それに、費用は国が負担する。心配することはない」
「……しかし「クドい」…」
空磨の反論全てを一言でバッサリ切り落とす。
「橋雁。今の君に私の考えを否定する権利は無い」
相馬は不満そうな顔でどっかりと床に座った。
「……と言う訳で、約1ヶ月後に控えるセレクションの為に、君たちには合宿へ行って貰う」
「ちょっ…!!」
「急すぎだろ!?」
「友達と遊びに行く予定が…」
「静かに」
たった一言でアリーナが静まり返る。
「政府はここを卒業するまでに、現在取得出来るライセンスを増やした。つまり、日本政府は出来る限りライセンスを持つライダーを増やしたい考えだ。そして私としては、良い機会だから場馴れして貰おうと考えている。余り深く考えなくてもいい。受けて落ちても何もない。勿論、そのエントリーシートは各自好きにしてくれ」
そしてまたアリーナに生徒の声が響き始めた。
「ただ、エントリーするなら次の終業式までに持ってきてくれ」
「はい!!」
元気のいい返事が返ってきたところで、未だにぶーたれてる空磨に顔を向けた。
「それと橋雁」
「……はい」
「先程私を何と呼んだ?」
「………はい?」
空磨は一度自分の言動を顧みる。
―――――――
「ちょっ、鈴姉さん!?コレどういうこっちゃ!!」
―――――――
そして頭の中でリフレインされる一節。
空磨の顔は青にも赤にも染まっていく。
――――――――
「ちょっ、鈴姉さん!?どういう……」
「ちょっ、鈴姉さん!?………」
「鈴姉さん!?」
―――――――
そう、空磨ははっきりと、大勢の人間の前で、目の前のクールな年上美人教官に、呼んでしまった。
“鈴姉さん”と。
「私の耳には“鈴姉さん”と聞こえて「しまったぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」」
鈴華が言い終える前に、空磨は絶望の叫びがアリーナに響いた。
余りのうるささに、そこにいるほぼ全員が耳を塞いだが、直前に聞こえた美人教官の声はしっかり耳に残っていた。
「公私の区別はつけて欲しかったが……まさか昨日の今日で橋雁が認めてくれるとはな…私は嬉しいぞ。婿殿もとい空磨よ」
彼らの目の前には、可愛い空磨に微笑む憧れの美人教官。
対して自分のやってしまった過ちをギャーギャー叫びながらシャウトする憧れのエース。
祐也以外の男子と一部の女子はその光景を見て発狂した。
“エースめ……許すまじ!!!!!”
と。
「フフ…今日から明後日までは真っ赤な雨ね」
「……甲斐崎さん…」
「……相変わらずのドS発言だ…」
「何か言った?」
『いいえ何も」
午後へ続く……
どうもかかしですm(_ _)m
ご無沙汰しております。
何時の間にやら前回投稿から3月も経っていました~……てへ(オイ
今後も不規則なこうしんになるかとは思いますが、長い目で見ていただけると光栄に思います。
ではではこの辺で
( ~っ~)/