Flight:Briefing 空へと繋がるprologue
以前に短編出だしたものを大幅に改変したものになりますが、根本的なところは変わってない
……筈です←
文章中の
():訳・解説等
《》:振りがな等
「」:単数会話
『』:複数会話
〈〉:放送・通信等
【】:固有名詞等
〔〕:心情等
になります。
------Sonic Boarder
西暦2059年5月18日。
この日、そのマルチレイドエアライドが日本の大手重工業メーカー【三菱重工業】によって発表された。
それは異常なほど軽く、従来のエアライドよりも速く、機敏で、汎用性が高かった。
元々エアライドは、イギリス・ドイツ・ベルギーが2021年に共同開発した浮遊するスノーボードのようなものである。
機体の内部にあるボックス内の素粒子を超小型加速器で加速、衝突させて重力子を生成。そして生成されたその重力子より発生する反重力と、地球の重力との反発する。それを超高速で連続させる事で機体を浮遊させているのだ。
但し、加速器の出力はまだ現在の1/5程しかなく、高さは2mまで。重量2.4t、長さ6m、幅3m。乗せられる動力は重さ2kg、長さ30cm、直径20cmの脆弱なモーターだけで、スピードは2.3km/h。ボックスの容積も小さく重力子発生効率も低い。人間は乗せられず、稼働時間に至ってはほんの15分も保たなかった。
日本がソニックボーダーの開発に着手したのは2038年。
エアライドの小型化と合わせて加速器を改良し、課題であった出力と重力子の発生効率を強化。
また、人間をのせて高速飛行するため、重力子生成時に発生する素粒子を機体上部から発散させ流体を受け流す【エレメンタリー・パーティカル・プロテクト・システム】通称:EPPSをを開発し、搭載した。
更に機体の剛性と軽量化を計り、カーボンウェハの貼られたチタン合金と強化プラスチックで造られ、内部はハニカム構造にし、重量を初期のエアライドの1/8にまで抑える事が出来た。
これにより搭載できる動力は更に強力な直径30cm、長さ2m、重量10kgの高出力流体圧縮モーターが2機。ボックスの容積は4倍に増大。バッテリーはリチウム・空気電池、機体上面に蓄電可能なソーラーパネルを増設。どちらも京セラ製である。
ウェイトはモーター20kg、加速器10kg、ボックス容積20kg、バッテリー5.5kg、ソーラーパネル3kgを積んでまだ尚150kgの余裕があった。
人間を軽々と乗せ、滞空時間は46時間58分、高度は15000m、最高速度は当時最速の旅客機【B-797 300ER】と同じM1.5にまで到達。しかもこれだけにとどまらず、機動力を確保するために主翼、水平尾翼に付け加えカナードを追加。更に垂直尾翼を増設し、機体によっては双尾翼になっている。
そして2059年。発表までこぎ着けたのだ。
実に22年の歳月をかけての成果である。
しかし、世界各国----特に国連常任理事国5ヶ国はそれを日本のみの技術とするのを良しとせず、裏で経済・軍事等の一方的な圧力をかけられた日本は幾度となく抗議をした。しかし、結局その圧力に折れた日本は無理矢理に技術提供をさせられた。
その時に出された誓約を簡単にまとめるとこうなる。
―――――――――――
1.日本はソニックボーダーに関する技術を全世界に公開し、提供する事。
1.日本は資金・資材等の援助を各国から受ける代わりに、ソニックボーダーを開発した責務を負い、率先して技術開発に勤しむ事。
1.日本はソニックボーダーに関する革新的な発明をした場合、その情報を日本の有益無益に関わらず公開する事。
そしてそれが他国の革新的発明であった場合も同様である。
…………等々。
これらの日本対して非常に不利な誓約により、日本は完全に半世紀前と同じ立場になってしまった。
そして、この誓約によって世界中でソニックボーダーは生産・開発が繰り返された。
故にそれは、人々の思惑に捕らわれ、兵器として生産され、数々の人間によって血に染まり、世界大戦にまで発展した。
第三次世界大戦の勃発である。
原因はロシアの北朝鮮に対する経済的圧迫。
その背景には、中東に程近い地区の大規模クーデターにより、それを鎮圧するための経費、主に軍事費が嵩んだことが挙げられる。
2045年の地下核実験の強行により友好各国との関係が断ち、支援が途絶した北朝鮮にとって、ロシアからのそれは致命的であった。
統括書記「金 正成」は2065年2月28日、北朝鮮軍を韓国侵攻を指示(これを一般に言う第二次朝鮮南侵と言う)したことに始まり、アメリカ、イギリス、フランス、ロシア、中国等の常任理事国がPKFを出して鎮圧させようとした。
しかし同年3月8日、中東にある複数の独裁軍事国家と国際テロ組織【アルカイダ】を主とした多数テロ組織が、ロシア・中国政府に反感を持つ地区と手を組み【統一人民戦線】なる超巨大武装勢力となって宣戦布告。親米のイスラエルは開戦直後から集中砲火され僅か1週間と待たずして占領されてしまった。次に東ヨーロッパ・北アフリカ・東南アジアの諸国とロシア・中国に侵攻してきた。布告理由に「弱者救済の為」だの「これは聖戦である」などしてこじつけた。
これを理由に中国とロシアは北朝鮮戦線から撤退し、中東戦線へ兵力を集中。
代わりにドイツを筆頭としたEU軍の1/4と遠方から援護でブラジル・アルゼンチン・チリ・メキシコ・キューバ等の南米統合軍が北朝鮮戦線に。
残り3/4のEU軍と南アフリカを主とした北アフリカ奪還軍が中東戦線を戦う事になった。
この時ソニックボーダーは万能兵器として重宝され、独自に進化を遂げて日々戦いの世界に投入されていった。
当時日本はソニックボーダーの量産・新規開発に勤しむしか他は無く、状況は1世紀前の朝鮮戦争に近かったとか。
結局、北朝鮮戦線は北朝鮮滅亡と言う形で同年5月8日に終戦。領地は全て韓国に併合する事で満場一致となった。(世に言う釜山条約の項目の1つに当たる)
その後EU・アフリカ・ロシア・中国の連合軍が押し込めていた中東戦線はアメリカ・イギリス・フランス・南米統合軍の集結により、戦線が完全に崩壊。圧倒的兵力で翌年の1月19日にイスラエルを奪還。
第三次世界大戦が完全終戦となったのはこの日である。
---この戦争による死者は全世界で約8億人。
内約1/2はソニックボーダーに殺された数であるとか。
これを境に世界各国でソニックボーダーの国軍配備を急速に進めたが、日本がそれに待ったをかけた。
---それが25年前のこと。
2072年1月6日。
第三次世界大戦後、我が国の主張から始まった軍縮は、最終的に国連の最終決定となり、ソニックボーダーの軍備保持上限が規定される。(これが神戸軍縮条約である)
それ以上の機体は全ての武装を解除され、民間に売却された。
また、スカイボーダーのパイロット(ライダーとも言う)は、元々軍で即興されており、ライダーの中にはスカイボーダーをうまく扱えない者も多く、時たま死亡事故も発生していた。
そこで日本は技術・能力を正しく(・・・)運用する事を前提に、各国の主要都市にライダーやメカニックを専門的に育成する高等教育機関を設立させることを条約に追加し、その本部を日本の横須賀に置くこととなった。
それから約1年と半年後の2073年6月27日。アメリカでソニックボーダーを使った純粋なレース競技が世界で初めて行われた。
これが全ての火種である。
このレース以降、その競技の人気は高まり続け、第2の人生を謳歌するが如く地上のレース以上の盛り上がりを見せた。全世界に広まったその競技はFIAに新たなカテゴリーを作り上げることになる。
それが【フォーミュラ・エア】である。
フォーミュラ・エアは大きく分けて
・周回レースの【ストリーム】
・ルートレースの【ライナー】
の2つのコースレイアウト。
上から
【S1】
【S2】
【S3】
【S4】
【S5】
【S6】
までの6つのクラス。
・短距離の【スプリント】
・中距離の【ミディアム】
・中長距離の【クラシック】
・長距離の【ステイヤー】
・アクロバットの【アクション】
・タイムアタックの【スピード】
・耐久レースの【エンドレス】
の7つのカテゴリーになっており、その中で最もポピュラーなものがストリームレイアウトのS1クラスでステイヤーカテゴリーだろう。地上レースに例えるなら【F1】と同じだ。
そして2097年12月現在、ソニックボーダーの標準性能は最高高度は35000m、速度はM6.0、滞空時間は長いもので129時間。
競技用ソニックボーダーの機体数は約800万機。フォーミュラ・エアの競技人口は1億人を突破し、世界185ヶ国に国際中継されるまでになった。
------ソニックボーダー年間2098年日本版 初版 冒頭の一部から抜粋。
side少年
西暦2102年
7月6日am8:20
神奈川県横須賀市
それは俺にとって、この上ない娯楽であり、夢だった。
初めて見たのは幼稚園の頃。兎に角それだけしか興味がなかった。
初めて乗ったのは小3の頃。あの感覚は今でも忘れはしない。
それからずっと乗り続け、7年たった今でもまだ続けている。夢はでっかくS1ライダー。
幼稚園の年長組から全く変わっていない。
今通っている学校も、ソニックボーダーのライダーを専門に養成する為に、国が総力を挙げて作った特殊な国立高校。
全国から生徒が集まるその学校の空は、兎に角真っ青に透き通っていて、低い飛行機雲は長く延びている。
桜並木は既に青々と茂り、まもなく梅雨も明ける。
潮の香りが漂う道には青く縁取られた白いYシャツに明るめの灰色のチェックのズボンorスカートが溢れかえっていた。
バッグはオレンジのショルダー、水色リュック、紫のトート、黒のスクール……全く統一感が無い。
かく言う俺がオレンジのショルダーの張本人なんだけどな。
「……ア゛ッヅゥ…」
チャリ通が羨ましく感じるこのごろ。いや、バス通の方がいいな。
いっそ歩くなら寮生でも……
家から徒歩15分の近さを恨む。
学校の立地は米軍横須賀基地と海上自衛隊の敷地に隣接されており、ヘリポート・滑走路も設置され、勿論コントロールタワー--つまり管制塔もある。
バスは横須賀・逗子・久里浜からスクールバスが、学校通用門から徒歩3分の場所に学生寮がある。
チャリ通に制限はないから自分もチャリ通したいと言ったら、親が
「近いんだから自転車なんていらないでしょ。あと自転車より歩く方が体力付いていいじゃない」
とか何とかほざきやがった。
全く、ヒドい親である。
校門まであと200mと迫ったとき、後ろからチャリのベルが鳴いた。
後ろを見るとクロスバイクに乗ったイケメンが1人。腐れ縁で幼なじみでハーレムの主の親友(?)である。
名を詩谷遊也という。
「ようソウマ。朝から随分だるそうじゃねぇか。なんだ?意中の相手に玉砕されたのか?」
「んなもんいるか馬鹿が。むしろお前が爆発しろやリア充め」
「何を失礼な。ってか誰がリア充なんだ?俺が纏めてヤってやんよ」
「字が違うだけで随分グロいことにも、開けちゃいけない扉にもなるからその言い回しはやめろ。そして新月の夜道に気をつけろ鈍感め」
「故意にやった。反省も後悔もしていない。つか鈍感じゃねぇしwww不吉なフラグ立てんなしwww」
「んで、お前のお嫁さんは?」
「今、端末から起こす……」
「おおぅ……」
食い気味の反応に狼狽えてしまった。
クロスバイクから降りて端末からアプリを起動させると……
〈おはよ♪ユウお兄ちゃんっ!〉
「うん、おはよすずか」
「……もう何も言わんよ」
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「二次妹こそ我が嫁だ!!」
『よく言った我が同士ッ!!!!』
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このやりとりを聞くと、中学校入学式直後の自己紹介での残念発言を思い出させる。
んまぁ、面白そうだから現在親友(?)になってんだけどな。
イケメンはイケメンでも中身がヲタ。
ルックス・運動・行動・思考・コミュニケーションetc……
挙げればキリ無いほどの完璧超人だというのに、誠に残念である。まあ、個人の自由ってことで。
そしてたった2人…いや3人しかいない現在に違和感を覚えた。
あと4人足らん。
「カンナ達には?」
「家でリアルな残念妹と共に百合百合してるはずだ」
「それきっと違う」
どうやら、どさくさに紛れて置いてきたらしい。
「困ったもんだ。俺にはすずかたん達がいるというのに、リアル残念妹が何時の間にか寝床に全裸で入っていやがった。俺はすずかたんと結婚するというのに」
「それ以上はやめろ。視線が痛々しく憎々しく……とにかく耐えきれそうにない」
「俺は慣れてるおwww」
「……サヨナラ……ッ!!」
もう……限界です!!
ソウマ は 全力 ダッシュ で 逃げ出した !!
「すずか…お兄ちゃんはお前と結婚したい……」
〈すずかも………クスッお兄ちゃん大好き!!〉
無駄に耳がいい自分を今ほど恨むことはないだろう。
かくして俺、橋雁空磨は、国連認定特別高等専門学校【国連SB操縦技師高等専門学校・日本本部校】に通う高専1年生の16歳である。
To be continue...
駄文をどうもでした。
作者のボロボロのかかしです。
やっぱりオリジナルは難しいですね。
1つ書き上げるのに二次の倍ぐらい掛かっちゃって大変です。
物語本編は次当たりから唐突に始まったりします。
文才さえあればと悔やまれるボロボロのかかしでした。