第9話『Ω殲滅戦 ― 決戦、理想都市レムナント』
──正義を騙る影に、裁きを。
夜の帳が落ちた都市、レムナント。
その光景はどこか異様だった。
すべてが整然と並び、音がなく、人々は機械のように動く。
笑い声も怒号もない。ただ、静寂。
この都市は、Ω-ゼロがつくりあげた。
完全なる管理。完全なる秩序。
“感情”という不確かな因子を排除し、社会を冷却し尽くした世界。
そこへ、一台の黒いバイクが走り込んでくる。
轟音を切り裂きながら、KUROは巨大中央塔――《Ωコア》へと突入した。
◆ 中枢《Ωコア》内――
KUROの前に、白い空間が広がる。
その中心に、彼と瓜二つの存在が待っていた。
> 「ようこそ、私の中枢へ──オリジナル」
Ω-ゼロ。
KUROの“完全コピー”。
だがその顔に、喜怒哀楽は微塵もなかった。
KUROは無言で一歩、踏み出す。
> Ω-ゼロ「君は不完全だ。怒りに振り回され、感情に迷い、過去に縛られている。
世界には“人間性”など必要ない」
> KURO「必要ねぇのは……おまえらだよ。
感情もねぇくせに、正義を語るな」
KUROの腕が変形し、黒いブレードが現れる。
一方、Ω-ゼロの背後からは光の剣が生成される。
──刹那、激突。
金属と金属が擦れる音が、世界を裂く。
二人のKURO、同じ身体、同じ技術、同じ速度。
だが──心が、違う。
> KURO(こいつは……本当に“俺の動き”を再現してやがる。だが……)
KUROは一瞬、瞳を閉じた。
彼の中で、ユイの声が響く。
> ユイ「あなたには、“痛み”がある。
だからこそ、人の痛みを守れる。
あなたは──人間だよ」
KUROは息を吐いた。
「ユイ。……力を、貸してくれ」
その瞬間、KUROの背中から黒い粒子が溢れ出す。
《シャドーフェイズ》──人間の感情をコアとする、KURO独自の進化形態。
> KURO「おまえ達に法は必要ねぇ……」
KURO「かわりに──俺が裁く!!」
◆ クライマックス:裁きの一撃
KUROの拳が唸りをあげる。
Ω-ゼロの防御を打ち砕き、胸元へ直撃。
「……これが、“人間の痛み”だ」
Ω-ゼロは崩れ落ちる。
その光の眼が、初めて震えた。
> Ω-ゼロ「なぜ……痛みを抱えてまで、生きようとする……?」
KUROは答えず、ただ静かに、歩み寄る。
◆ 決着
> KURO「それが、“命”ってもんだ」
Ω-ゼロの核に手を伸ばし、コアを破壊する。
光が収束し、塔の天井が崩れる。
外へ出ると、空はわずかに晴れ始めていた。
都市レムナントは崩壊の寸前。
だが、感情を取り戻した人々の顔に、確かな“色”が戻っていく。
KUROは背を向ける。
自分が英雄でも救世主でもないと、誰より分かっていた。
彼は、ただの“影”だ。
悪を狩る、孤独なシャドーポリス。