第6話:『覚醒:シャドードライヴ』
オメガタワー中枢。
KUROとスレイドの激闘は、ビルの半分を吹き飛ばしながら続いていた。
右腕を破損し、動力コアも限界寸前のKURO。
対するスレイドも、脇腹から火花を散らしながら、冷たい目を向ける。
> スレイド「……おまえ、もう限界だ。止まれ。
これ以上進んだら……“自分”じゃいられなくなるぞ」
KUROは血のようなオイルを吐き出しながら、立ち上がる。
> KURO「止まったら……全部、意味がなくなる」
その時――
KUROの視界に、ユイの姿がフラッシュバックする。
「KURO……行かないで。そこに進んだら、あなたは――」
ノイズ。錯乱。記憶の断片が崩れていく。
> リリィ:「KURO、精神反応異常値上昇。封印プロトコル“SD-001”起動……
“シャドードライヴ”起動条件、達成」
◆
■《シャドードライヴ》起動
KUROの義体から黒い粒子が噴き出す。
皮膚が剥がれ、鋼鉄の骨格が露出。
赤く発光する人工神経が脈打ち――その中心、心臓部から声が響く。
> 「記憶を代償に――力を得ろ」
“シャドードライヴ・モード:コード=ECLIPSE”
KUROの瞳が赤黒く染まり、声が機械音と重なる。
> KURO「……記憶が消えても、構わねぇ……
奴らを止めるまで、“人間だった俺”はいらねぇッ!!」
◆
スレイド:「バカ野郎……! それは“自殺”だッ!!」
シャドードライヴ状態のKUROは、数秒で空間を切り裂く。
スレイドの装甲を瞬時に剥ぎ取り、再起不能に追い込む。
> スレイド「ユイ……止めてくれ……あいつを……」
――が、KUROの刃が振り下ろされる直前。
脳内に、ユイの“最後の音声ログ”が再生される。
> 「KURO……。お願い。あなたは、あなたでいて」
刃が止まる。
KUROの手が震える。
機械の心臓が軋みながら、“何か”を訴えている。
> リリィ:「KURO。あなたの“心”が、暴走を拒否しています」
KURO「……っ、クソが……っ」
彼は自らの頭部に拳を叩きつけ、強制的に《シャドードライヴ》を停止。
煙が立ち上る中、KUROは倒れ込み、意識を失う。
◆
シーン転換。
リリィの遠隔ドローンが彼を回収。
スレイドは重傷ながら生存し、姿を消す。
都市のデータタワーは破壊され、Ωコードの計画は一時停止に。
――だが、その奥で微笑む存在がいた。
■
「彼は、まだ自分を“人間”だと思っている……」
モニターの前で呟く、黒衣の男。
その背後には、Ωコードの創設者――
> “Ω-ゼロ”=KUROの生体脳コピー
かつてKURO自身の脳をベースに作られた、「もうひとりのKURO」。