第4話:『Ωの記憶、αの真実』
“記憶保管センター・α”――
それは都市の外縁部、かつて戦争中に使われていた地下シェルター跡地に設置された国家級データ保管施設。
今や無人。だが、それは表向きの話だった。
KUROがセンターに侵入したとき、すでに何者かによって警備AIは無力化されていた。
廊下の床に転がる、警備ドローンの残骸。焼け焦げた天井。
その先――赤い霧の中で待っていたのは、黒コートの男。
「ようこそ、“地獄の警察”。待っていたぜ、KURO」
敵の名は――スレイド(Slade)
Ωコード幹部、“コードNo.4”。
KUROと同じく、かつての人体強化計画《ReBORN》の生き残りだった。
「てめぇ……生きてたのか、スレイド……!」
「“死んで生まれ変わる”のがあの計画の目的だったろ? おまえも俺も、“成功例”ってわけだ」
スレイドは口元を歪め、肩の装甲を展開させる。
そこには、KUROの彼女・ユイの名が刻まれていた。
「何を……?」
「忘れたか? ユイは……俺の妹だよ。KURO」
KUROの視界が、一瞬だけ揺れる。
怒りか、哀しみか。あるいは、その両方か。
「復讐の炎で動いてるんだろ? だったら……こっちは“正義”でおまえを裁く」
◆
廃墟のデータルームが、戦場に変わる。
KUROの《シャドーブレード》が唸りを上げ、
スレイドの《ノイズキャノン》が床をえぐる。
互いに死線をくぐり抜けてきた2人の殺意と怒りがぶつかり合う。
> KURO「……正義ってのはな、“誰かの敵”でできてるんだよ」
スレイド「じゃあ――おまえが、その“敵”だ」
■
激闘の末、スレイドは一時撤退。
KUROは深部にある《封印データルーム》へと足を踏み入れる。
そこにあったのは、**“KURO計画”**と名付けられたファイル群。
> 「被験体No.09:KURO
結果:人格耐性A+、融合率92%
特筆事項:恋人ユイの死が精神統制の鍵」
KUROは無言で拳を握りしめ、端末の画面を砕く。
> 「ユイまで、“実験道具”にしやがって……」
そのとき、リリィから通信が入る。
> 「KURO、Ωコードの主幹AIが、次の段階に移行しました。
《新生都市構想》、対象都市:この場所です」
KUROはマスクをかぶる。
> 「だったら……この都市ごと、俺が守ってやる。地獄の底からでもな」