第2話:『目覚めし復讐者』
第2話:『目覚めし復讐者』
夜の街。
廃ビルから逃げ出した犯罪者たちの一人が、暗い路地に転げ込む。
肩で息をしながら、スマホを取り出す――
だが、その手から、金属の爪が伸びた掌が奪い去った。
「逃げ足は速いが、脚はは遅いな」
男が見上げた先に、コートの影が立つ。
右腕が光り、KUROの眼が冷たく光る。
「……く、来るな! 俺はただ命令されただけで……!」
KUROは無言でその男に接近し、膝を突かせる。
「命令で殺した? なら、おまえの命も“命令”で終わる」
赤い光が右腕に集束する――が、その瞬間、
「――やめておけ。彼は“裁かれるべき対象”じゃない」
低く、電子の歪みを帯びた声が響く。
暗闇から現れたのは、スーツを着た仮面の男。
その胸元には、“Ω”の紋章。
かつてKUROを地獄に突き落とした、謎の犯罪集団の一員だった。
「おまえたち……!」
「まさか蘇るとはな、プロトタイプKURO。おまえは失敗作だったはずだ」
KUROは唇を吊り上げた。
「失敗作でも、“おまえたち”を壊すには十分だ」
KUROの体が駆動音とともに突進。
右腕から飛び出す、黒い光の刃。
敵の仮面が避け、銃を構える――
交差する火花、ぶつかり合う人工神経の戦火。
しかし、KUROの脳裏にはよぎる声があった。
――《彼女の笑顔》
――《親友の絶叫》
――《焼かれた家》
怒りが、その心臓を加速させる。
「この街に法が通じないなら――俺が通す」
「おまえ達に法は必要ねぇ! かわりに俺が裁く!」
爆発する電撃、轟く衝撃波。
廃ビルの壁が崩れ、敵の姿が煙に包まれる。
だが、仮面の男の声はまだ響いていた。
「……やはり、おまえの“心”はまだ人間だ。そこが“弱点”になるぞ、KURO」
夜が明ける。
KUROはビルの影で、煙草を一本咥える(喉は合成声帯、煙を吸う意味はない)。
「弱点? それでも……俺は“俺の正義”を貫く」
火がつけられ、煙が空に昇る。
KUROの戦いは始まったばかりだった―