3滴目 知らない女の子たち
「暇ぁ」
「俺もーー」
学校がなくなったニ人は今日も暇。前回はボウリングというとても楽しいことをしたが、今日は違う。たまにはゴロゴロするのもいいが、それ以前に暇すぎて本当にやることがない。学校がないんだもの。そうなると、学校ってダルイと思ってても、意外と暇つぶしだったんだなとかよくわからない理論が出てくる。
そんなことを考えていると、南斗はふと思った。
「なあ修炎、俺の血液型はわかったわけじゃん?でもまだお前の血液型がわからない状態だ」
「うん…いいなぁ」
修炎はこの間の血術が使えなかった事件で結構心が傷ついている。南斗にはできて自分にはできない、と南斗を羨ましがっている。
南斗は気まずいのだが頑張って続ける。
「…それで、修炎もなんとなくだが早めに見つけたほうがいい気がする。モヤモヤも消えるし」
「どうやって見つけるのさ?」
修炎は不安そうに言う。
血液型の調べ方は何通りかあるが、そのうち一通りしか二人は知らない。自分で見つけるやり方のみしか知らないのだ。
「水矢さんが言ってた通り、色々試せばいい」
南斗と修炎は家から一番近い公園に行った。この公園は本当に何もなく、ドッヂボールができるくらいのスペースしかない。遊具とかも一切ない。その割には生えている木が多いので、あまり来る人がいないらしい。
だからこそ、危険を考慮したり広さも兼ねてここにやって来た。
「よし、これで存分に暴れれるぞ」
「…はやくかえりたい」
「早いうちにやれば気が楽になるぞ」
という訳で、レッツスタート。
開始から15分後、南斗は特に何もしないので公園のベンチに寝っ転がっていた。これを考えたのは自分だが、明らかに自分に得がなくて相手にしかない。暇を潰しに来たのに暇になるという自分がアホなのかと疑った。というかアホだと確信した。
このまま何時間も待ち続けるのは御免だと考えていた時、ついにその瞬間は来る。
「血術 ファイヤー
あああああああああ!!!!!氷野くん!!!」
南斗は修炎に呼ばれたのでそっちの方を見てみると、修炎は手のひらから勢いよく炎を出している姿が見えた。赤色ではなくオレンジに近い色の炎はとても大きく、木を一本丸ごと一瞬で燃やし尽くせそうなほどだった。
それを見た南斗驚いた。目を多少大きく開き、輝かせた。
「ていうか熱いわ!!何度だよ!!」
「理系ならKを使いなさい!!」
「いやそこかよ」
修炎は結構な時間出し続けるが、まだめまいなどの貧血の症状が出ていない。何故だろうか。炎として血を使っているはずがいつまで経っても使える。
「氷野くん、銃でさ、炎撃ってみて」
「え、銃で?」
南斗はポケットから氷の銃を取り出し、炎に向かって撃った。
バン
弾は炎の中を通り過ぎ、氷の銃は本体だけが氷という訳ではなく、弾も氷でできているため、炎の中を通過した弾は少し溶けた。
「…血で作ったものでもちゃんと現実の法則とリンクしている…」
「…どういうこと?」
カサカサ
草むらの方から音が聞こえた。
誰かがいるのか?…いや、まさかだが……
修炎は音をもっとよく聞くために炎を出すのをやめる。南斗はすぐさま銃を構えなおして耳を立てた。修炎は音をよく聞こうとするのに集中するあまりに、視覚で得れる情報を遮断していた。
いや、視覚を使っていても意味がない。ダジャレみたいになるが、修炎が襲われたのは背中から。
つまり死角からだ。
「ン”ン”!」
後ろから誰かに首を絞められた。南斗は苦しみながらも腕を振り解こうと努力し、数十秒かけてやっと離れた。いたのは知らない女の人。制服を着ているので学生なのは確か、同い年くらいの子である。
「おい!何すんだよ!!」
「BKOの人ではないですよね?誰ですかあなたは。なぜ血術を!」
「び、びーけーおー??何それ…ていうか血術を知ってるの?」
急に絞めだすので、さすがにテンパってしまう修炎。だが、一向に手をはなす気配もない。
すると、草むらから声が聞こえた。
「らいらい~その人、悪血じゃないっぽいよ~」
「…………………え?」
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさ
「いや、誤解が解けたならいいよ」
さっきまで首を絞めていた女の子は修炎に全力で謝り出した。
いや、初対面で知らない女の子たちに謝られても困る…
だが、BKOというのが何かわからない南斗と修炎は何も言うことはできなくって黙ったままだった。
「とりあえず自己紹介からじゃない?」
「…そうですね」
小さい女の子は首絞めの女の子にそう提案した。
「私は、糸岡私立高等学校の高校二年生……」
「糸岡私高校!?素晴私高校のすぐ近くじゃん!」
糸岡私高校は素晴私高校の最寄りの素晴駅から2つ隣の糸岡駅が最寄りの高校。歩いて15分もしないでついてしまうほどの距離。特に縁とかはないが、糸岡私校のほうが頭はよく結構有名なので修炎は思わず反応してしまったのだ。
「あ、ごめんなさい何でもないです……………」
「……雷川 琴葉です。さっきも言いましたが高校二年生です」
雷川 琴葉。17歳で南斗と修炎と同い年だ。身長は修炎とほぼ同じくらいで、金髪の腰まで長い髪の毛の女の子。さっきから丁寧語で話しているが、自分たちが年上か年下かは関係ない。その小さめの女の子にも丁寧語である。
「あ、うちは有毒 真理ね。同じく糸岡私高二年、よろ~」
有毒 真理。琴葉のクラスメイトで友達である。身長は琴葉よりだいたい10cm低く、紫色のショートヘアの女の子。さっきから喋るたびにチラっと見える八重歯が特徴的な子だ。
二人とも黒色のブレザーに灰色のスカートと、少し配色が似ているので南斗は親近感が湧いた。
「「タイプ!!!!!!!!!!!」」
あやばい、声に出ちゃった。絶対キモがられる、死にたい。
二人は同じことを考えて、同じことを口に出してしまった。
「?血液型のことですか?私は"雷"です」
「うちは"毒"だけど、なんで?」
セーーーーーフ
「……なんとなく。で、そのBKO?ってなに?俺ら知らないのだが」
「Badblood Killer Organizationの略のことだよ。直訳すると悪血キラー組織」
よくわからない名前で開いた口がなかなか塞がらない南斗に対して、修炎はすぐ順応した。
「……僕は笹道 修炎。血液型は多分"炎"か"火"かどっちか。この間こんな髪色になって僕の血液型が変わった?のかな」
「俺は氷野 南斗。修炎のクラスメイト。血液型は"氷"と言われた」
「……言われた?誰にですか?」
「ああ、あの………………」
カサカサ
そう南斗が言いかけたとき、またもや草むらから音が聞こえた。その場にいた四人はすぐ体勢を整え、すぐ戦えるように準備した。
「ああ、人………………食ってやるゥァ!」
「クソ、こんなときに悪血かよ…」
「私たちBKOは名前の通りこーゆー気持ち悪い悪血を殺すのが目的の組織なの」
「ああ?なんだこのガキ…油で窒息案件だなァ…」
またもや公園に誰かがやって来た。言うのは失礼だが、クソブスのクソデブだ。見ているだけで気味が悪くなる。
そう琴葉と真理は思っていたが、南斗と修炎は違うことを考えていた。
―――――油!?―――――
男の意地の悪さがおもわず出てしまう。南斗と修炎はアイコンタクトをしてコクリと頷く。
「へーい油たっぷりのおバカさーんww」
「ん"た"と"コ"ル"ァ"!!」
南斗は迷わず銃を構えた。そして、わざと避けれるくらいの時間を置いた後に撃った。
バン
今度は一発で仕留めれるように頭を目掛けた。
「血術 油壁」 ふにゅん
油の悪血は瞬時に体に大量の油を出した。それと同時に油は氷の弾の勢いを消した。
油は水より密度が小さいので、はちみつのようにとろーりとしている。だから銃弾の勢いを大量の油で止めた。
「油の密度なめんなよクソガキが」
「死角がバレないってのはさっき見て学んだんだよ!」
もちろんこれは南斗がミスをしたわけではない。作戦の一部、まだ攻撃は終わっていない。
「なに!?いつの間に!」
修炎は両手を前に出し、手を広げ、構えた。
「血術 火炎放射!!」