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0滴目 「血も涙もない」世界は美しい

この物語は完全にフィクションとは言えません

……ピ…ピピピピ…ピピ

ピッ


「んん…朝かよ…ってもうこんな時間じゃねぇか!!!!」



彼は氷野こおりの 南斗みなと。ごく普通にいる一般の17歳の高校二年生。


朝の目覚ましを止めた今、時刻は7時45分。家から駅まで10分かかり、ちょうど8時の電車に乗らないと遅刻が確定してしまうので、終わったといっても過言ではない。


だがそんなことでは諦めないのが南斗、どんな状況でも遅刻は絶対にしたくない主義である彼はとりあえずベッドから跳ね上がり、制服に着替える。白いワイシャツ、紺色のブレザーとネクタイ、灰色のスラックスを身に着け、カレーパンを(かじ)りながら玄関を出て最寄りの天照(あまてらす)駅へ直行するのであった。





ハァ…ハァ…危ねぇ。ギリギリ電車には乗れた…ずっと走ってたから息が…深呼吸深呼吸。よーしこれでとりあえず一安心。学校の成績が悪いから単位は落とせないんだよな絶対。



プルルルル…



やべっサイレントモードにし忘れた。一回出て後でかけ直すよう言っとこ。



「もしもし」

「氷野くん…まずいよ……」

「え、遅刻確定?」

「いや……そうじゃなくって……」



珍しいな。こいつがそんなに驚いているというか動揺してるのは久しぶりな希ガス。

いったい何があったというんだよ…



「学校が消えた」


「………は?」(とても大きい声)




学校の最寄りの素晴(すばら)駅に着いた途端、南斗は猛スピードで学校に向かって走った。電話越しの相手がよくわからないことを言い出すので南斗も単位関係なく焦る。微妙にある寝癖を揺らしながらさっさと学校へ走っていく。



ハァ…ハァ…クソ、どういうことだよ学校がなくなるって。頭イったのかよ。そこ曲がったら学校…なはず……………………


あれ


なんか違う


校舎が見えない。



南斗が通う素晴私立(すばらしりつ)高等学校(こうとうがっこう)、略して素晴私高校(すばらしこうこう)は5階建ての学校であり、駅から近いので校舎は既に見えている…はずだったが、南斗の視界には校舎は映ってなかった。



もう通って2年目だぞ?間違えるはずない…けど…なんで見えねえんだ?



かつて校門だったところに来た南斗は奇妙な光景を見た。かつて学校だったところはなにもない。平野だ。あまりの唐突で壮大な出来事に何も言うことができなかった。



「あ、修炎」

「遅いぞ氷野くん」



南斗と話しているのは笹道ささみち 修炎しゅうえん。南斗のクラスメイトであり、この学校の最初の南斗の友達。南斗と同じ部活であるのもあり、一番南斗と仲がいい存在。校門付近で髪の毛をいじりながら南斗のほうに近づいてきた。



「…で、どういう状況なん?なんで学校ないの?」

「なんで僕が知ってるんだよ」



すでに生徒と教員は学校に来ていて、この状況に不安感を抱いていた。それはそうだ。なんて言ったって、突然学校が消えるなんて夢でも見ないことが現実で起こっているのだから。



「でも見た感じ学校のイベントではないようだ…な………」



カンッッカランッコロコロコロ

シュウゥゥゥゥ……………………



「なんだこれ、煙出て…ウッ!」

「どうした!?」

「ゲホゲホゴホホ………めっちゃ(くせ)ぇ!なにこれ!?」



そんなことを言っているとだんだん煙の出る勢いは大きくなり気づけば辺り一帯は煙だらけ。薄赤色の煙はまるで、死人の"血"のような臭いだった。あまりの臭いのキツさに思わず南斗と修炎は口に手を当てて嗚咽おえつしてしまう。



「…収まったか?ひとまず」

「そうみたいだ…な!?」



南斗はまたもや奇妙なものを見た。



「おい、髪の毛の色…どうした。めっちゃ赤いぞ」

「そういう氷野くんは水色じゃないか」



周りの人は煙が収まり次第、騒ぎ始めた。理由の一つは、ここにいるほぼ全員が髪色が変わってしまったからだ。そしてもう一つはとある一人によってだ。みんなの目線は一点に、いや一人に集まる。



「誰だあの人?」  「学校で見ねえ人だ」  「不思議な人、でもなんかかっこいいかも♡」



「やあやあ君たち、煙はもう全員吸ったかい?君たちはおめでたく()()()()()()に選ばれた特別な存在なのだよ」



周りがまた騒ぎ始める。



「第二…ウェーブ?なんだそれ」

「よくぞ聞いてくれたそこに君!いま吸ってっもらった煙には血液型を変える物質がはいっているんだ。君たちはもう血液型は変わっているのだ!」



……何を言ってるんだ?こいつは。



「あ、申し遅れた。私は福瀬 民都(ふくせ みんと)という名前だ。よろしくね」



スパーン



自己紹介をした瞬間、その人の頭は奇妙な音と共に床に転がっていった。頭はないが自立している青スーツ姿の体がそこにあった。一体何があったか少ししか見えなかったので、理解はすぐにはできなかった。



「なかなか痛いですねぇ水矢さん♡」

「黙れ国の裏切り者。お前は()()()()についた時点で殺される運命だ」

血術(けつじゅつ) 即回復(キュアル)



福瀬の頭から体が生える。目に見えないスピードで。自立していた紫のベスト姿はそのままなのに体が再生した。



なにが起きた!?なんだ血術って!?誰なんだこいつら!?



「いやー油断してたよ。っていって戦いたいが血がねえ。降参。参りましたよ。早く殺してくださいよ」

「……………………チッ」  



グサッ…



頭を刺された福瀬は瞬で消えた。あまりの異常な光景に南斗は思わず質問してしまった。



「あの、なんなんですか?」

「ああ、すまないね。君たちはまだ何も知らないのか」



普通の会社員みたいな人が頭を斬った人だ。自分たちと同じで髪の色が黒ではなく青色をしている。



「俺は水矢(みずや)。さっき見てもらった通り、俺たちは血を消費して、血を悪用して世界征服を試みる悪血(バッドブラッド)たちを殺す。()()()()()は"水"だ」



…………………??



「ちょっとすみません何を言ってるんスカ?」

「まあ要するに、君たちは自分だけの血液型を持っているから悪血バッドブラッドを殺すのを協力してほしいのだよ」



なんだぁそれ。漫画でよくある突然主人公が特別になって世界を救うみたいなやつ。そうだとしたら導入が雑すぎないか?協力してほしいとか、じゃあ金をくれよ金欠で困ってるんだ。



「とりあえず、僕含めみんなの頭もカラフルになったことだし聞くだけ聞こうよ。金もらえるかもしれない

「そうだな、聞いてみるか」



修炎の提案にまんまと釣られる南斗に思わず提案者も溜息をついてしまう。



「…まあいい、とりあえず自己紹介から。改めて俺は水矢 双汰(みずや そうた)。22歳で会社員だったが2年前職場がこの学校みたいに消えた。血液型もその時変わった。福瀬とは同期だったのだが()()()()に行っちゃってな」



これまた雑いな。情報不足過ぎて何も言えない。



「あっち側っていうのは?」

「まだ正確にはわからないが、この国のある組織が血を活発化させる薬を作ってる。それを使っちゃった側だ。

使ったら悪血バッドブラッドになる、一生な」

「ほぇ~大変そうですね」



軽い返事をする南斗に対して水矢という男は少し困った顔で微笑み返した。



「いつかわかる。悪血バッドブラッドがどれほど怖いかを」



水矢はその場を去り、どこかに行ってしまった。


学校に来ていた人は今日、不思議な体験をした。突然学校が消え、その挙句髪色を勝手に変えられた。知らない人が現れ、血液型がなんちゃらと一発では理解できない文章を言われ、さらに困惑された。



しかしこの出会いこそが、世界が救われるきっかけとなったのだ。




これから自分に謎の不幸が巡ってくる冷酷な世界が待っている。何が原因であろうと容赦しない、「血も涙もない」世界は美しい。

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