孤独の悪魔(後編)
前回のあらすじ
『最強の勇者』を失いつつも、別の作戦でキングを倒そうとするキズー。彼女の言葉で、自身を人形と認められなかったキングは、自らを、巨大なボールで押しつぶしたのだった。
※今回の話はリチュ視点で描写されます。
「マジでマジでマジで!ズタボロのゲドゲドのギタギタにしてあげるわ!」
クイーンさんは、そう言って、地団駄を踏んだ。
そして、彼女は2つの輪っかを取り出して、目の前でくるくると回し始める。
「食らえ!! 『緑色の通常弾』!!」
回転した輪っかに中に、風のマナが吸い込まれる。
そして、彼女はそこから複数のマナを放った。しかし…
「これは…ただの風…ですか?」
私の体には、ただ気持ちの良い風だけが流れていった。
私が不思議に思っていると、彼女はまた、地団駄を踏んだ。
「ちっ!やっぱり、アタイじゃ魔法が使えないのか…?」
その姿を見て、私は思った。
「(彼女は、クローバーさんを模した、魔法人形だと思っていたけれど、違うのだろうか。)」
私のその目を見て、彼女はこちらを輪っかで指さす。
「何よ!その目は!! アンタ、アタイのこと、馬鹿にするつもり?魔法はなくても、こっちには科学があるのよ!!」
そう言うと、ポケットの中から手に収まるような、ちいさな箱を取り出す。
そして、そこから小さな、棒を一本取り出すと、箱と棒を擦り、棒に火をつける。
さらに、箱をポケットにしまい、代わりに何か液体の入った瓶を取り出す。
それを地面にぶちまけると、火のついた棒を持っている方の腕に、輪っかをかけ、それを回しながら、指で火のついた棒を飛ばす。
「食らえ!『赤色の範囲弾』!!」
火のついた棒が、地面に付いた瞬間、蛇が走るように地面に、炎が走る。
それは、勢いよく私の方へと向かってくる。
「(危ない!!)」
そう思った私は、炎を避けるように、後ろへとジャンプするが…
「おぉ〜。」
私は、突然、後ろから飛んできた大きな竜巻に当たり、その勢いで、炎の中へと潜り込んでしまう。
「(熱い、熱い、熱い、火を消さなきゃ!!)」
最早、人の言葉を放す余裕など無いほど、私は焦りながら、床に転がっていた。
「ぷふ~ふ!床に油を塗って、マッチの炎で、地面に火を起こす。どう?これこそ、クイーン様の科学…、もとい、魔法の力よ!」
クイーンさんが、何か言っているが、それに聞き耳を立てる余裕すらなかった。
しかし、私は、少したってから、解決策を思いつき、天井に向かって、ある魔法を放った。
「『痛いの痛いの飛んでいけ』!!」
私の、天井に向けた手のひらから、ポーションが飛び出し、それはしばらくすると、私の方へと、落ちてくる。
水によって、体に付いた火を消し、ポーションの効果で、やけどを治した私は、立ち上がり、クイーンさんの方を見る。
「へぇ。やるじゃない。じゃあ、次はこれでも食らいな!」
クイーンさんが、悔しそうな顔で、そう言った後、再び、輪っかを回転させる。
そして、輪っかの片方を飛ばす。
さらに、彼女は、その輪っかがよく飛ぶためにだろうか、風の魔法をかけた。
しかも、先程の火の棒を今度は、投げた輪っかに向かって投げた。
「食らえ!『赤色の強化弾』!!」
輪っかに、棒の火が移り、炎の輪っかとなって、私の方へと飛んでくる。
私はそれを、今度は、スライムの姿になって、避け、クイーンさんの元へと近づいた。
「(彼女の科学と言うものは、なかなか時間がかかる。それなら、一気に近づいて、先手を取る!)」
私は、クイーンさんの腕目掛けて、体を伸ばす。
「くそ!放せ!雑魚スライム!!」
クイーンさんが、自分の左腕を引いて、右手に持った輪っかで、私を叩いて、どうにか逃げようとする。
しかし、ブラックドラゴンや、オークを捕まえたことのある私の体は、そう簡単には離さない。
そして、あまりにも柔らかい私の体に、打撃は効かない。
「はぁ!!」
私は、人間の体に戻り、クイーンさんを投げ飛ばす。
相手は仮にも魔法人形。壊れない限り、攻撃をし続ける。
彼女は、山積みとなった、樽にぶつかった。
下にあった樽が、クイーンさんの体で、抜けたことで、上にあった多くの樽が、クイーンさんの体に向かって落下し始める。
彼女は、輪っかを通した右腕を前に出し、叫ぶ。
「『黄金色の反射弾』!!」
しかし、何も起こることは無く、樽は彼女を押しつぶしたのだった。
次回予告
ガキンとジョーカーとの戦いに、いよいよ終止符が打たれる。3人は、はたして、ジョーカーの魔の手から逃れられるのか。
次回最終話 痛いの痛いの飛んでいけ




