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スライムさんの生存戦略 〜共闘編〜  作者: HAKU


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孤独の悪魔(前編)

 前回のあらすじ

 ジョーカーとの戦いとなったガキン。ジョーカーの攻撃に苦戦するガキンであったが、彼は、クイーンの、ドラゴンを呼ぶ声に反応し、動きを止めたジョーカーの隙をついて、一撃を与えようとする。

 しかし、それはジョーカーの魔法によって反撃されてしまい、ガキンは体中から血を流すほどの重症になってしまった。


 ※今回は、キズ―視点で描写されます

「所詮、ただの道具の、魔法人形が!それが紛い物だって教えてやる!!」


 キングが、棘の付いた大きなボールを生み出し、それに乗りながらそう言った。


 [へっ!おめぇらはどうなんだか知らねぇが。俺達は紛い物じゃあなく、本物の戦友(とも)だ!]


 『最強の勇者(ヒーロー)』が剣を彼に向けて、そう言う。

 その言葉に、キングは明らかに怒っていた。


「何を言う!! この俺が!ジョーカーの寂しさを紛らわす為に、仲間を模して造られた紛い物というのか!!」


 それを聞いて、『最強の勇者(ヒーロー)』は呆れたように首を振る。


 [そこまでは言ってないけどさぁ。でも、お前がそうやって叫ぶってことは、心のどこかで、認めちゃってるんじゃないか?自分は紛い物だってさ!]


 彼が言葉を言い終える瞬間、「黙れ!!」という、キングの怒声が響き渡り、キングは足元のボールをこちらに向かって蹴ってきた。


 [あぶねぇ!『最強勇者の斬撃(エアスラッシュ)』!!]


 『最強の勇者(ヒーロー)』が、竜巻を起こし、大きなボールを跳ね返す。


 キングはボールと竜巻を舌打ちをしながら、避けつつ、土の魔法で作られた鎖をボールに向かって投げ、くっつけ、こちらに向かって投げ返してきた。

 『最強の勇者(ヒーロー)』は、それを見て、急いで剣を作り出し、竜巻を放ち、ボールを跳ね返す。

 キングも、ボールを何度も投げ返してくる。


「おらおら!一度二度、撃ち返そうと、こっちも投げ返してやるぜ!!」


 キングと『最強の勇者(ヒーロー)』とのラリーが何度も繰り返される。

 最終的に、剣の生成が間に合わなかった、『最強の勇者(ヒーロー)』が、ボールに当たり、風のマナへと還っていった。


「『最強の勇者(ヒーロー)』!!」


 僕の叫ぶ姿を見て、キングが、笑い声をあげる。


「ヒーッヒヒヒ。ざまぁねぇ、ポンコツ人形だな。

 ま、所詮、人間には敵わねぇってこった。」


 その言葉を聞いて、僕はふと思う。

 彼は、自分が魔法人形であることを認めていない。自分は人間なんだと思っている。というより、思っていたいんだ。

 正直、動く魔法人形について、詳しく知らないから断定はできないけれど、おそらく魔法人形の考えや性格なんかは、主人の影響を受けている気がする。

 『最強の勇者(ヒーロー)』は、多分、ガキンに助けてもらいたいっていう、僕の気持ちと、いつまでも彼に頼りっきりじゃいけないっていう僕の気持ちが反映しているのかも。だから、性格などは彼に似ていて、それでも見た目は大人の姿なのかも。彼の言葉から、自分が人形であると自覚しているのも、そのせいかもしれない。

 それに比べて、相手は?キングを作り出したのは、ジョーカーだ。彼のことを詳しく分かろうとすると、難しいけれど、時々現れる言葉から、過去の殺人を後悔している様子だった。それに、彼がキング達と話している時、彼は他では見れないぐらい楽しそうだった。

 彼にとって、少女が死んだという事故の前の日々はとても幸せだったのだろう。それを自分の魔法で再現している?つまり彼らは、事故が起こる前の日々を模した妄想に浸る為に作られた存在?

 ならば、もしかしたら、僕でもキングを倒せるかもしれない。『最強の勇者(ヒーロー)』は今度はいつ出てくるか分からない。だから、この作戦に頼るしかない。


 僕は、キングが引き戻そうとするボールに向かって、手を伸ばす。


「お前!何する気だ!!」


 彼が急いで、ボールを引っ張る。

 しかし、僕のそれが、範囲外になる前に、成功する。


「『火炎付与(バーナー)』!!」


 『火炎付与(バーナー)』。物体に火のマナを付与して、炎を上がらせる魔法。どういうわけか、付与した物自体には、その火の影響を受けないから、直接攻撃に使えず、基本ガキンや、『最強の勇者(ヒーロー)』の武器を強化することにしか使わないが、引き戻される武器なら、相手の物だって攻撃になる。

 最も、今回は攻撃事態に使ってるわけでもないのだけど…。

 キングが、「なんだと!?」と驚き、ボールを蹴りで、受け止める。

 そして彼は、燃えた足を振って火を消した。

 それを見て僕は、ガキンがよくやるようなニヤリとした笑みを見せる。


「貴方。今、なんで火を消したんですか?」


 僕のその言葉に、キングは怒りの表情を向ける。


「ああ!このガキ!イカレてんのか!? 足の火を消さなきゃ燃え尽きて死んじまうだろうが!!」


 僕はその言葉に、より、笑みを強める。


「おかしいですね。燃やされて、それで、そんなに理性的に言葉を返せるなんて。人間なら先に、炎で熱がるはず。それなのに、貴方は熱がることもなく、ただ、死ぬから火を消したと話す。

 そう言えば、貴方は自分の、棘の付いたボールが自分に当たった時も、痛がる様子がありませんでしたね。貴方はやはり、ジョーカーとか言う人の、寂しさを紛らわすために作られた、友達の紛い物、魔法人形なんですね!」


 僕の言葉に、キングは「なんだと!!」と言いつつ、巨大なボールを、自身の真上で回し始めた。


「生意気なガキだ!! 俺が紛い物だと?俺が魔法人形だと?俺は人間だ!俺自身に意思があるし!感情もある!それに奴とは昔から…。」


 彼の言葉が途中で止まった。


「な、なぜだ!何故、あいつの姿を見た記憶がない!どれだけ記憶をたどっても俺の姿が客観的に写ってやがる。」


 彼は頭をおさえ、叫び出す。

 そんな彼に、僕は言う。


「それは、貴方が、人形である証です!制作者である、ジョーカーの思い出を引き継いでいる証拠じゃないですか!」


 それを聞いた彼は、鎖を力強く握りしめる。


「うるせぇ!俺は人間だ!誰がなんと言おうと人間なんだ!」


 僕は、彼に向かって、叫ぶ。


「なら、それを証明してください!!」


 僕の言葉に、彼は鎖のついたボールを真上に投げた。


「なら証明してやる!痛覚があれば、人間なんだろ!!」


 真上に打ち上がったボールは途中で失速し、加速しながら落ちていく。


「俺は人間だ!俺は生きている!! 俺は誰かの代わりじゃねぇ!!! ジョーカーは独りじゃねぇ!!!! 俺は決して独りじゃ…」


 最後の言葉を言い終わる前に、彼はボールの下敷きになってしまった。

 次回予告

 リチュとクイーンとの戦い、怒るクイーンをリチュはどう対処するのか。


 次回 孤独の悪魔(後編)

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