少女の哀しみ
前回のあらすじ
ハートの襲撃から、なんとか逃れられた。リチュ達。
彼らは『エキドナ』の制裁を受けながらも、村へと変える事になった。その際に、彼女に、スペードの言う、赤髪のピエロについて聞くが、彼女は、知らなかったようだった。
※今回、キズ―視点で書かれます。
僕は、湯船に浸かりながら「はぁ。」とため息をつく。
「今日は、いつも以上に疲れた。1日で色々ありすぎだよ。」
伸びをして、ふと、自分の胸を見る。
「また、少しだけ大きくなってる…。」
最近、日に日に大きくなってる気がする。このままじゃあ、いつか、ガキンにバレてしまいそう。
正直、彼と付き合いたい僕としては、バレても構わないのだけど、自分から言わないで、ばれたら、今まで隠してたことに彼が、僕に嫌悪感を持ってしまうかも。
「もう、時間がないかも、告白するか、それとも、友達として隠し通すか。」
僕がずっと考えてる選択肢は2つだった。1つは自分が女性だと告白して、ガキンと付き合いたいと言う。2つ目は胸の大きさを、どうにか誤魔化して、そのまま友達として今の関係を壊さないようにするか。
僕はよく考える。
考えているうちに、今まで聞いた言葉を思い出す。
「私だったら。好きな人が幸せになれれば良いなと考えると思います。」
「それに、アタシは男よ♡その方が楽しいから♡」
リチュお姉さんは好きな人が、幸せなのがいいと思うと言った。
ハートって人は、男性なのに、女性の恰好をして、それを恥ずかしがることすらしなかった。
「だったら、僕も、もっと男らしい恰好をして、ガキンに女だってバレない様にして、このまま友達を続けよう。」
実際、ガキンが好きなのは、イーシャちゃんだし、だったら、今までの関係を壊す必要はないと思う。いっそ、ガキンがイーシャちゃんと付き合っちゃえば、僕が女性とバレて、この関係が壊れることがなくなるんじゃないか?
「よし!そうしよう!! さっそく、ガキンにイーシャちゃんに告白するように伝えよう。そのことを、応援するって言って。」
僕は湯船から出て、着替えを済ませ、脱衣所から出ようとした。
その時───
「なーんだ。もう出ちまったのか。せっかくだから、2人で騒ごうと思ってたんだけど。」
───ガキンが脱衣所に入ってきた。
僕達は、帰りが遅くなったことで、お風呂に入る時間を超過してしまい、僕とガキンだけ、最後に入ることになっていた。
だが、ガキンは、この家に戻るさいに、マザムさんに見つからないように隠れて入ったため、彼女の説教が長引いてしまったようだ。
「良いタイミングに来たね。丁度、君に話したいことがあったんだ。」
僕がそう言うと、ガキンは笑顔で返した。
「おう。じゃあ、風呂場で話すか?」
彼の提案に、僕は女性であることがバレると焦った。
「い、いや。僕もうのぼせちゃうよ。ここで、話しさせてよ。」
「それも、そうか。で、なんだ?」
彼の疑問に、僕は答える。
「ずっと、思ってたんだ。ガキンってイーシャちゃんの事、好きなくせに、奥手すぎるって。」
「うるせぇなぁ。」
はは、照れてるガキンは、可愛いなぁ。
「でも、それじゃあ、ダメだよ。彼女可愛いし、ボーっとしてたら、誰かにとられちゃうよ?ガキンの良さってぱっと見じゃ顔ぐらいなんだから。」
「おう!言ってくれるじゃねぇか。おい!」
怒る彼もいつもより、愛おしく感じるのはなんでだろう。
「僕も、手伝うからさ。告白してみようよ。ピンチからも救ったんだし、ワンチャンあるって。」
なんだろう。彼を応援するって決めたのに、段々と悲しみが昇ってくる。
「お、おう。ありがとう。それじゃあ、明日にでも言ってみようかな。せ、成功したら盛大に祝えよ。」
はにかみながらそう言う、ガキンに向かって、僕は笑顔を作って言う。
「うん。勿論だy…。」
最後の「よ。」という言葉を口にするよりも先に、僕の目からは1滴の涙が流れた。
「あっ!」
それに気づいた僕は、すぐにガキンの横を通って走り出す。
「お、おい!急にどうしたんだよ!」
そう叫ぶ、ガキンに振り向きもせず、僕は玄関に向かって走り続けた。
「あれ?キズ―さんどうしました?そんなに、急いでどこか行くんですか?」
途中、リチュお姉さんと出会った。彼女はそう、僕を心配するが、僕はそれに足を止めることはせず、通り過ぎながら答えた。
「ちょ、ちょっと外の風を感じに、外に行く。」
「気を付けてくださいねぇ。」
リチュお姉さんは、僕にそう優しく言ってくれた。
──────────
僕は家の外に出ると、村の外へ行き、森の中で泣いていた。
自分でも、理由は分からない。
もう、彼と付き合うことが出来ない、そう思うと自然と涙が流れる。
僕の声を聞いてか、リチュお姉さんのナイトバード達が、僕に近寄ってきた。
優しげな顔をした1羽は、僕を慰めようと、歌い始める。
目がキリっとして、真面目そうな1羽は、僕の身に怪我が無いかと、体のあちこちを確認し始める。
最後に、トサカが尖った、いっつも喧嘩腰の1羽は、僕の頭に乗って座った。
最後の1羽は、人を癒す気があるのだろうか…。
それは、ともかく、彼らの慰めで、僕は少しだけ落ち着いた。
「よし。ずっとここにいても危険だし、そろそろ帰ろう。」
僕が、そう思って、立ち上がろうとした時、突然、頭の上のナイトバードが、立ち上がり、威嚇するように鳴いた。
僕が驚いていると、男の声が聞こえてきた。
「ああ。ああ。困ったね。悲しげな、泣き声が聞こえてくる。人の悲しみを止めなければ、それこそ、私の役目。私の罰。
罰?HAHA。私が何をした?」
木の陰から、1人のピエロが姿を現した。ダイヤとも、クローバーとも、スペードとも、ハートとも違う彼の髪と唇は、暗闇のせいか、真っ黒に見えて恐怖を感じる。
「見つけた見つけた。泣いてる子。泣かないで、今すぐ私達が、『ナイトメア・サーカス』に連れてってあげるから。」
ピエロは、僕に向かって、手を伸ばす。
すると、頭の上のナイトバードが、ピエロに向かって突撃する。
しかし、その子は突然、ボール球のようなものによって吹き飛ばされる。
僕は急いで、そのピエロから逃げる。
「HAHAHA。走ると危ないよぉ。大切なあの子が、押しつぶされるだろうが!!」
意味不明な事をいいながら、追いかけてくるピエロから、逃げようと、僕は走る速度を上げる。
しかし、そこで、僕は地面の石につまずいて、頭を打ってしまった。
「ほら、走ると危ないって言ったじゃないか。」
ピエロがゆっくりと近づいてくる。
僕はそのまま、意識を失ってしまった。
次回予告
突然行方不明になったしまった、キズ―を探して、リチュ達は森を探索する。
リチュ達を助けるべく、ナイトバード達は、彼女の居場所を教える。
次回 行方不明になった少年




