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第四話 人型汎用兵器

 新しい力は貰っていないが、再度の出撃を決めた。勝てなくても良い。人間側の新兵器に対する情報が必要だ。やりようによっては、今のままでも勝てるかもしれない。


 回廊を歩いていると末弟のコナン(ネスでは九番目の意味)とあった。

コナンはラパンと同じ人型だった。違いは両手が長い。コナンの手は切り離し自由であり、同じような複数の手を同時に出現させられる。コナンの顔は狐面に近く目は爛々と赤い。


 コナンが明るい調子で声を掛けてきた。

「お父様が新たな力をくれるまで待機で良いはず。兄さんは出撃するのですか?」


「人間側の新兵器の情報が少ない。戦えば負けるだろうが、得られるものもある。滅びがない我らにとって一敗や二敗は問題ではない」


 コナンは数秒、考えてから口を出した。

「僕も出撃しましょう。二箇所で出現した場合の対応を知りたい」


 人間側の新兵器は現段階では数が揃っていないと見るのが適切だった。配備されている場所も限られていると見ていい。未配備の場所もある。


 コナンめ、俺を囮にして成果を上げる気だな。コナンの戦闘能力は、現時点ではラパンよりも低い。だが、末弟のコナンは、要領がよい。少ない労力で他の兄弟たちと匹敵する戦果をあげていた。


 コナンの申し出も断ってもいいが、人間側が同時に二箇所で対応できるか、ラパンも知りたいところである。ラパンの今回の目的が人間側の戦力を計ることであれば、申し出を断る必要もない。


 ネスが人間を滅ぼせばいいのであって、誰がどれだけ人間を殺したかは気にする必要がない。

「僕は前回、不覚を取った場所に行く。コナンは好きな場所に行け、同時侵攻を掛ける」


 コナンは喜んだ。

「そう来なくては、そういうサバサバしたところは好きですよ。兄上」


 次元門を潜って前回の出撃場所にラパンは出た。出現と同時に策を講じた。重くする力を体から外の方向に向かって全身から放射する。重力による鎧だった。鎧が作用する空間ではラパンの体から物体は逸れる。


 消耗を押さえるために有効距離は、ほどほどにしておく。前回の見えない攻撃が質量を伴う貫通攻撃だった場合、重力の鎧で弾道が外れて当たらない。


 ラパンは敵が出て来るまでの間に人間を減らすと決めた。生命の波長がある場所に重くなる攻撃を打ち込む。攻撃を受けた建物が次々と潰れる。この街には人がいないのか、はたまた避難が速やかなのか、あまり人命に損害は出ていない。


 一撃で十数人も始末できればいいほどであり、とても非効率だった。体を守りながらの攻撃なので重くなる攻撃はあまり威力が上がらない。


 日本には、まだ八千万人も人間がいる。このペースで戦っていけば完全に他の地域より人間の駆除が遅れる。


 ラパンはここで妙な事実に気が付いた。警報が鳴っていない。あまり気にしていなかったが、ネスが出現すると他の街では警報が鳴っていた気がする。だが、この街では警報が響かない。そういえば、前回も警報がなかった。もしかして、この街には何かあるのか?


 無人戦車団の軍隊蟻が出現して砲撃を開始してきた。今度は重力の鎧により全弾がラパンから逸れる。掠りもしない。ラパンの守りは砲弾には充分に有効だった。遠くで何かが光った。


 ラパンの体の中央に六十インチの砲弾が命中した。威力は無人戦車と比較にならない。ラパンの体が衝撃でくの字に曲がった。また、新たなる兵器だ。無人戦車の砲弾を改造したものと見ていい。


 質量を増やし、速度を上げ、発射する。単純なやり方だが、ラパンの重くなる力と衝撃吸収能力を合わせてもダメージを消しきれなかった。前面に力を集中する。重くなる攻撃を利用した、空間を展開して盾にする守り。重力の盾だ。


 次弾は重力盾に曲げられて、足元を飛んでいく。重力盾を解除して二十五階建てのビルの後ろに身を隠す。三発目が飛んできた。砲手はラパンの位置が正確にわかるのか砲弾はビルに命中する。砲弾の威力は強く、ビルを貫通して、へし折った。


 ラパンは相手の位置に当たりを付けた。ビルを軽くして敵に飛ばした。ビルが数㎞先に飛ぶ。目算では命中したはず。だが、敵は四発目を撃ってきた。


 敵は移動している。地球の重力を遮断してラパンは上空に飛び上がった。千m上空から見ると敵の正体がわかった。敵の正体は巨大な大砲だった。砲はレールの上を移動する巨大な兵器であり、数は四機あった。列車砲を注視すると『Mjollnir ミョルニル』の文字が見えた。


 うち一つに急降下攻撃を仕掛けて踏む。列車砲が踏み潰されて消えた。追撃がないので列車砲は連射できない。背後に敵意を感じて、後方に盾を展開する。盾によって曲がった攻撃が近くの丘に命中して丘が吹き飛ぶ。


 命中すれば、体に確実を損傷した。本命はこっちか? 本物のミョルニルは一機のみ。残り三機の内、二機は囮だ。ミョルニルから放つ砲弾の速度は囮の列車砲と比べものにならないほど速いが、だが、質量が小さいのか逸らすことができた。


 再び千ⅿ飛び上がってみるが、戦場には二機しか列車砲が残っていない。本物のミョルニルは撃ったらすぐに地下に潜ったか? それとも、高度にカムフラージュされているのか?


 どこから攻撃されるかわからないので、全方位に盾を展開した。疲れるが、仕方ない。この街は厄介だ。いたるところに兵器が潜ませてある。


 まだ、あの見えない貫通攻撃をしてくる敵は現れない。全方位に盾を長時間は展開するには無理だ。


 なら、誘き出すまで、地上に再び降りて攻撃を開始する。だが、この時点で命の波長はかなり少なくなっていた。ラパンが殺したわけではない。この短時間に遠くまで逃げる方法はない。とすると、地下か。


 この街には大きな地下施設と隠し通路がある。人間は隠し通路を使い武器を輸送して運用している。これほどの大がかりな基地施設は一年や二年ではできない。とすると、ここはもっと前から作られた対ネス用の拠点か兵器工場だ。この街を落とせば、人間に大打撃を与えられる。


 身体の表面が軽く波打った。攻撃を受けた。だが、今度は無傷。見えない貫通攻撃だと悟った。見えない貫通攻撃が重力盾で威力を殺せた。相手の見えない攻撃は質力を伴う貫通攻撃だと確信した。速くはあっても重くはない。


 ラパンは空中に浮かび回転する。出鱈目に重くなる攻撃を放った。視界で何かが弾けるのが見えた。なんだと思って現場に行く。


 相手は人型の金属製の機械だった。高さにして三・五m、重さにして四十t。人型機械兵器は頭が半分、吹き飛んでいた。中には消えゆく命の波長があった。


 人が操縦するタイプの兵器か? 機械の横には長さ四mの特製ライフルが落ちている。どうやら、この人型兵器が隠れて見えない貫通攻撃をしていたと見ていい。気になったので視界をフォーカスするとJP14の文字が目に入った。


 兵器の型番だろうか。このJP14は厄介だ。小型の上に兵装の種類によっては各種作戦が可能だ。このJP14との戦いがこれから本格するのか。


 空を飛ぶ点が見えた。視界を拡大すると三角形の飛行機だった。全長は十二mと大きくない。戦闘攻撃機よりミサイルが発射される。通常のミサイルならネスには意味をなさない。だが、前回はロケットに搭載されていた新型ミサイルにやられた。


 避けてもいいが、ミサイルは追尾してくる可能性があった。また、このJP14を現状のまま持って帰りたいとの希望もある。叩き落とすと決めた。


 重くなるミサイルにかけて撃ち落とそうとした時に、足元のJP14が爆発した。自爆だった。自爆でできた隙に、ミサイルがラパンの重力盾で急減速する。ミサイルは光を放ち、爆発した。


 周囲にあった半径百mの物体がラパンを除いて消失した。物体を消失させるミサイル。ラパンには致命傷にはならなかったが、脚と腕が捥げかかった。腕や脚の怪我より、JP14が塵と消えたことのほうが痛かった。


 肩と目に穴が空く。ミサイルの光は重力盾を消す効果があった。重力盾が消えた隙に見えない貫通攻撃をされた。人間はラパンにできた隙を見逃さない。ここら辺が潮時か。収穫は充分とは言えないがあった。重力盾を再度しっかりと展開して次元門よりラパンは帰還した。

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