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第一話 初勝利

ファンタジー要素が出て来るのは中盤以降です。

 空に出現した真っ白な巨人。巨人はネスと名乗る存在であり、人を駆除する。巨人の身長は二十m。体重は不明。宙に浮いているので、重さがあるのかわからない。


 巨人の名はラパン。ネスの世界では六番目に来るものを指す。名前に深い意味はなく、日本で言えば六郎、辺りのネーミングである。


 街の上空二百mから眼下の街をラパンは見ていた。街は日本と呼ばれる国にある。名前は、わからない。興味もない。ただ、人間の存在は感じる。現在地から半径三㎞以内に数千人がまだ生存する。


 ドンと大きな音がする。顔に砲弾が直撃したが、ラパンに怪我はない。砲弾は衝撃を完全に吸収され下に落ちて行く。音がした方向を見れば、戦車が路上にあった。背後からまたドンと音がする。砲弾が当たるがこれもラパンに傷を負わせられない。


 人間の兵器ではネスを傷つけられない。これはラパンも知っており、人間側も理解している。それでも、戦車は道路の隙間から現れ、攻撃を続けてくる。命の気配はないので戦車は無人戦車だ。人間を滅ぼしに現れたラパンにすれば倒す意味はあまりないが、うっとうしい。


 軽く指を向けて、押し付ける動作をとる。ラパンの視界の戦車が潰れた。そうやって、現れる戦車を潰していくが、戦車は退くことなく現れる。まるで蟻だな。『軍隊蟻』だとラパンは心の中で命名した。


 戦車の攻撃が陽動だと、朧気に思っていた。前回もそうだった。戦車を潰して移動していったら、大きな爆弾が仕掛けてあり、爆発した。垂直に一万mの火柱が上がり街を一つ犠牲にした爆弾だった。


 爆弾はラパンの外側を薄く熔かしただけで、たいしたダメージにはなっていなかった。前回に学んだはずだ、人間は馬鹿ではない。同じ作戦を講じたりはしない。


 また何か新しい手を考えてきたに違いない。人類は滅ぼさねばならない。だが、世界に広範囲に場所に散らばる人間は、一万人のネスをもってしても滅ぼすには容易ではない。


 次なる時代を迎えるに当たり、人類は滅ぼさねばならない存在だと、ラパンは教えられていた。面倒でも手間でも、やるしかない。


 ドンと音がする。砲弾がラパンの頭に当たった。今まで、ラパンの体に当たった砲弾は運動エネルギーを失い、落下するだけ。だが、今度の砲弾は違った。ラパンの身体に衝撃が伝わり。身体が揺れた。


 無人戦車の新型の砲弾だった。新型の砲弾はラパンに通じていた。それでも、人間にしてみれば、軽く押された程度、百回や二百回、喰らっても、倒れることはない。次々と新型砲弾が命中する。体を前後左右に揺さぶれた。


 痛くはないが、気持ち悪かった。軍隊蟻に心の中でマークを付けて一気に上から押す。一斉に戦車が潰れて砲弾の雨が止んだ。少しはやるようになったが、この程度か。


 ボンと音がした。見れば、掌に親指くらいの穴が空いていた。ラパンは地上で傷を負った。体から赤い血が流れる。ラパンは初めて負った傷をまじまじと見る。


 傷みは感じない。ラパンは痛みを知らない。ボンとまた音がする。右胸に小さな穴が空く。血が流れる。人間から攻撃を受けている状況は確実だった。新兵器の投入は先ほどの砲弾だけではなかった。


 こちらが本命だろう。敵を探すが、位置がすぐにはわからない。ボンと音がすると、今度は身体の中央に穴が空いていた。傷を確認すれば背後から攻撃を受けていて。攻撃者は移動している。または複数個所から攻撃している。だが、ラパンの目に敵影は見えない。


 ボンと音がする。今度は側頭部に穴が空いた。ラパンの体は人間を模して造られている。血のような物が体内には流れているが、急所は人間と同じではない。なので、心臓や頭は急所ではない。されど、ラパンは初めて危機の感情を抱いた。


 この攻撃は、まずい。理論上は、浴び続ければ、いずれは倒れる。ボンと見えない攻撃が再び当たる。相変わらず敵は見えない。視覚に頼れないなら、聴覚なら、どうか。


 攻撃者を探るために音に集中する。ボンと音がして眼窩に穴ができた。目で映像を捉えているわけでないので、視界が遮られることはない。だが、目への攻撃は今までで一番不快だった。


 音からも攻撃者の位置がわからない。敵は攻撃時に音を出しているのだが、小さすぎてラパンの聴覚では拾えない。原因は、おそらく距離にある。敵は三㎞以上先から狙撃していると思われた。


 ラパンは敵の位置に当たりを付けて重さを増す攻撃を仕掛ける。ラパンの攻撃を受ければ、とたんに重くなり、たいていの兵器は自重に耐えられる壊れる。


 攻撃の範囲にあったビル群は倒壊する。だが、敵からの攻撃は止まない。着実にラパンの体に穴を空けていく。今日まで人類はネスに一方的に攻撃されていた。だが、今日はラパンがやられ放題になっていた。人類はここに来て、ネスへの反撃の手掛かりを得ていた。


 どこだ、どこだ、と探すが攻撃者は見つからない。ただ、ラパンの体の傷が増えるのみ。陽はまだ高いが、視界が少し暗くなってきた。ラパンは身体に限界に向かっているの事態を感じた。ならば、とラパンは攻撃者ではなく、人間の集まった場所を探す。


 人間が集まっている場所を攻撃すれば、攻撃者は人間を守ろうとして移動する。そうすれば、隠れた位置がわかるのではないか、との読みだった。


 人間が集まっているドームを感じ取った。感知は音や光ではない。人間の命から溢れる波長だ。数にして三千人。攻撃者を誘き出すには充分な数だと思もった。


 ドームの真上に亜音速で移動する。攻撃者は、ラパンの動きが速かったためか、追撃してこなかった。ドームの真上に行く。手を下に向けて重くなる攻撃を仕掛けようとした。


 ドームの屋根が強烈に光った。ドームを突き破って全長十二mのロケットが四方から飛び出す。ラパンはロケットを躱したがロケットの下部に光る網があった。網はラパンの体を絡めとった。網をはずぞうとラパンはもがく、その間、二十秒。


 二十秒後に高度二百㎞に達していた。四本のロケットが強烈な光を放って爆発した。光を浴びたラパンの体は十秒で消滅する。時は永世五年、八月十五日、この日、日本軍は初めてネスに勝利した。

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