女の野望」 国会議員編
「総理! 総理! 総理!」
以前に確か、そんな風に叫んだ意気盛んな女性国会議員がいた。
それが後に事務所問題でヘマをして総理に対して、アイアムソーリとは皮肉なもの。
さて一方の新人議員なる羽柴音音〔はしばねね〕嬢は大阪80区から見事トップ当選を果たして意気揚々と赤い絨毯を踏んだ。
まだ年令も若く35歳で独身。しかも容姿端麗と来た。それはもう人気はうなぎ登り。
巷では、実力よりも顔で選ばれたのではと陰口も舞うが。
「先生、おはよう御座います。どうぞ、お部屋までご案内します」
音音はキョロキョロと周りを見渡したが、そのような人物は見当らなかった。
「先生、ご冗談を……音音せんせい。貴女ですよ」
「あら…そうなの。なんか恥ずかしいわ。処で貴方は?」
「はい、今回秘書を勤めさせて頂きます。臨時秘書の山内千代子と申します」
「はて? 何処かで聞いたような名前ね」
「いいえ、良くある名前で御座います。それより先生こそ天下を取りそうな、お名前で御座ますわ」
「あらあ、貴女いい事を言うわね。気に言ったわ。正式に秘書を勤めてくれないかしら貴女ならウマも合いそうだし」
「はい! それは真に有り難き幸せに御座りまする」
「え? 千代さん…なんか武家言葉みたいよ」
「あっ申し訳御座いません。父も時代劇が好きなもので、つい言葉が」
「あ! 思い出したわ。山之内一豊の妻も千代と言ったわね」
「そう言う先生こそ、太閤殿下の姓も羽柴、そして奥様もネネ」
「あらまぁ考えもしなかったわ、ほっほほ」
「先生、これも何かの縁、是非天下をお取り下さいませ」
「ネネに千代ねえ…ほんと天下も悪くないわね。ほっほほ」
新人議員とは言え、今や第一秘書となった山内千代子の活躍もあり国会では大いに幅を利かせて行き、翌年には大臣の椅子を近いと、巷で言われるようになって行った。
そんな折、羽柴音音は不自由党の幹事長に声を掛けられた。
「羽柴くん、最近は目覚ましい働きではないか。総理も感心しておられたぞ」
「あらまぁ、それは光栄ですわ。それなら大泉総理に挨拶して置こうかしら」
「おう、それはいい。君のような美人なら歓迎するだろう。何しろ総理も一人身だしな」
音音はここでピカッと光るものを感じた。
人と同じ事をしていては平凡な議員のままで終わる。
ここがチャンスとばかり早速、第一秘書の千代子に相談を持ちかけた。
すると千代子も、それはいいと相槌を打ってくれた。
つまり総理に新人議員として今後どような活動して行けば良いかと、口実を付けて近づく事した。
だが総理も忙しい身、なかなか時間が空かない。待つ事ひと月やっとそのチャンスが巡って来た。
それは総理の誕生パーティに招かれる事になった日の事である。
大泉総理は来客達に向かって、挨拶した後で自分のテーブルに戻って来た。
チャンスとばかり音音は、お酌をしに総理のテーブルに駆け寄る。
「総理、おめでとう御座います。どうぞ一杯」
「おう君は確か…大阪80区でトップ当選した羽柴くんかな」
「まぁ、ありがとう御座います。私の名前を覚えていてくれるなんて光栄で御座います」
「ハッハハハ。きみ〜それは忘れんよ。君みたいな美人なら」
「まぁ、お上手ですこと。私はまだ独身ですのよ。本気にしますわよ」
「いやいや、お世辞じゃない本当の事を言ったまでだ」
「まぁ嬉しい。お褒めついで総理に御相談に乗って頂けますか」
「ハハー有難き幸せで御座いまする」
「? なんかね。武家言葉みたいな事を言うね君は」
「あっつい、うちの秘書の癖が移りました」
「君の秘書の名前はなんと言うのかね」
「はい、それが山内千代子で御座います」
「なに! あの山之内一豊の妻千代と同じか、そして君はねね。これはこれは、君は間違いなく大物に成れるぞ」
それから大泉総理に気に入れられて、音音は二年後には環境副大臣となった。
しかしそればかりではなかった。
そして大泉総理の肝いりで、1年後に女性初の防衛大臣に就任した。
「先生、おめでとう御座います。いよいよ目標が……」
「ありがとう千代子さん。今度ね総理と相談して自衛隊から軍隊ヘと格上げにするつもりよ。今度議会が通ればね。私の野望は予定通りよ」
音音は何を考えているのか、本当に天下を狙っているのか?
羽柴音音! まさか400年の時を越えて天下取りを狙うのか? いやまさか世界を?
「本案は自衛隊を軍隊とする事が可決致しました」
このニュースは世界のトップニュースとして各国に伝わって云った。
一方、宙国と冠国は、このニュースに対していち早く反応した。
宙国 「この決定は我が国、宙国とアジアに挑戦するものだ」
冠国 「日本はアジアを、また征服するつもりか断固抗議する」
そして総理と音音は予想通りの反応に、想定通り即座に二人揃って全世界に声明を発表した。
「我が国は、いかなる国を侵略するものでもなく、アジア強いては世界平和の為の軍隊である。近隣諸国に脅威を与えるものでは決してない。更に世界に信頼される軍隊にする為に我が国は原子力空母10隻、原子力潜水艦30隻を配置、及びこの度、成功した衛星からは、いかなる地上の建造物を破壊出来るレザー光線を、15基装備出来た事を付け加えて置く」
これには、アジア諸国を始め各国は声も出なかった。
世界最高水準を行く、日本の科学技術の武装は脅威を与え大国、冠国及びヘシア迄も今までのような強い態度から一転して、日本国との友好関係一を維持しアジアと世界平和の為に共に努力するものであると、声明を発表した。
これに喜んだのが、強気で有名な東京都知事、綿原新太郎であった。
女でありながら強気の姿勢が、世界を黙らせる事が出来た。
外交とは、あくまでもハッタリであり強い者が正義であると。
弱腰外交の日本は、羽柴音音の力により生まれ変わった。
そして次期総理と噂されるようになっていった。
「先生、おめでとう御座います。これで天下も近づいて来ましたですね。そうですよ天下は日本だけでは淋しいです。先生、次の目標は世界制覇ですか?」
「やっぱり流石は山内千代子さんね。貴女となら世界征服も夢ではないわ。ほっほほ」
「ええ、平成のヒトラーになりましょうよ先生。ほっほほ」
こちら外野席
だ! 誰かあ、この暴走女二人を止めてくれ〜〜〜
了
女の野望は怖いですよ。皆さん気をつけましょう。




