正門の前で
そして,私たちは屋敷の前にたどり着いた。
屋敷からは楽し気な声と煌々と輝く光が漏れている。
夜なのにこんなにも明るいのは松明をこれでもかと使っているからであり,こんなにも楽しげな声が聞こえるのはグリードたちが飲んで歌ってと遊び惚けているからだ。
イールの街に必要最低限以下の見張りしかいなかった理由がこれだ。
それにこの世界は電気が普及していない。
だから日の出と共に活動を開始して,日の入りと共に活動を停止するのが当たり前だ。
もちろん夜は暗闇が広がり敵も味方も分からなくなってしまう。
つまり夜の戦闘はもってのほかだ。
これもグリードたちが夜に遊び惚ける要因の一つとなっているのだろう。
すぅーっと息を吸い...
「グリーーードーーー!!!」
屋敷全体に届くように私は叫んだ。
その声は私のいる正門から衝撃と共に広がって行き,瞬く間に静けさが空間を支配した。
それはまるで世界が変わったかのようだった。
それはまるで騒がしいクラスの中に訪れる一瞬の静寂のようであった。
グリードたちはまさか私がこんな時間に来るとは思ってなかっただろう。
もちろん静寂のあと,前世の学校であったような皆が笑い出すという現象は全く起こらなかった。
さて,この急な事態にグリードはどのような行動をするのだろう。
私は正門の前で鎮座した。
しばらくして,拘束されたルーボを連れたグリードが現れた。
「一人で現れなかったね,クローノ君。君のせいでルーボ君は処刑だよ。それに部下の兵士たちも」
グリードはそう言うけど,私は知っているのだ。
グリードとルーボが協力関係であるということを。
しかも,ルーボは処刑と言われているのに笑顔なのだ。
その関係性を隠そうともしていないルーボに怖がる演技くらいしろよとも思うほどだった。
「ちょっと待ってくれ」
私はあわてた振りをした。
まるで何も知らないかの如く。
「一人で来なかったことは謝る。でも殺すのは止めてくれ」
「あれは嫌だこれも嫌だって言うのかい。まさに貴族の鏡だな。それとも兄の代わりに自分が処刑されるかい」
「そうだそれがいい。何でお前のせいで俺が死ぬことになるんだ。今すぐ俺と入れ替われ」
ルーボが嫌な笑みを浮かべ,そう言い放った。
ルーボが何故グリードと手を組んでいるのか分からないけど,私を殺したいという目的では一致しているようだ。
凄く嫌な気分になった私はその返答を大声で返した。
「ゴメーン,アニウエー。ジブンマダシヌノハイヤダカラー,アニウエガーシンデクレー」
私の急な片言にルーボもグリードも眉を潜めていた。
そして,意味を理解したのか,ルーボは怒りの表情を浮かべた。
「貴様のせいでこんな状況になってんだろうが!!!自分の兄に「死んでくれ」だと!!ふざけるなッ!!!」
「薄情だね,クローノ君。君のせいで兄が死ぬって言うのに」
私が向こうの意図通りに動かないからかルーボが怒り,グリードは煽ってきた。
「兄上が死ぬのはグリードに負けちゃったからだよね。それを私の責任にしてほしくないなぁ」
私は怒りを向けられようが,煽られようがそんなものに乗るはずがない。
そんな私に...
「なんだと!!貴様,今すぐ入れ替われ!!!」
ルーボがそう言った瞬間,屋敷の方から急激な発光があった。
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