一人で行く
ガタゴトガタゴトと馬車が進んでいく。
私は馬車に乗りながら乗り物酔いに耐えていた。
「これだけはどうしても無理だよ...」
乗り物酔いの気持悪さがあると分かりながら,私はイールに向かうことを選択した。
相手に準備期間を与えてパスを攻めさせてしまうから,動かないという選択は避けた形だ。
イールへ向かう途中にグリードが仕掛けてくる可能性も考慮していたんだけど,特に何も起こらなかった。
それが逆に不気味でもあったが,私は進んでいった。
「はぁはぁ...やっと着いたか」
たった三時間でも乗り物酔いは私に大きなダメージを与えた。
イールの郊外にたどり着いたので私は馬車から降りる。
まだ気持悪さが残るけど,私はイールを眺めた。
「...久々のイールだけど,これは異様だね」
まず人の出入りが少なすぎる。
イールは領都ということもありアリストクラート領で一番大きい街である。商人がよく出入りするし,旅人もやってくる。
門に長蛇の列を作るのが当たり前なのだ。
それに街中から賑やかな声が聞こえてこない。
領都ということもあってイールには約五万人が暮らしていた。
グリードから逃れるために居なくなったのか,静かにせざるを得ないのか。
とにもかくにもイールがいつもと違うのが丸わかりだ。
「クローノ様」
馬車を馬小屋に止めたカバリーロが寄ってきた。
馬車を運転できないのでカバリーロに御者をしてもらったのだ。
「本当にお一人でお屋敷に向かわれるんですね」
「うん。無事に戻ってくるからそんな顔しないでよ」
カバリーロの厳しい表情は崩れない。
「今回の件はクローノ様に何も非が無いんですよ。やっぱり一人で行くのはやめた方が...」
「私は知っていたんだ」
「えっ」
「ポルトにいたとき,偶然,グリードが裏切りの話をしているところに遭遇したんだ。だから責任が無いことは無いんだ」
...私とカバリーロの間に無風が走る。
「それじゃ決着を付けてくるよ」
私はイールのど真ん中にある屋敷に向かって歩き出した。
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