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最悪の状況

 数分待っているとダダダと走る音が聞こえ,いつもの伝令さんがやってきた。


「トルペ!!お前!!」


「コレル...」


「お前...何やったんだよ」


「違うんだ」


 どうやら二人は顔見知りのようだ。


「この人は今,グリードの手先になったと,アリストクラート家を裏切ったと疑われている。これから諸々の事情を聴くことにする。伝令さん,もし話におかしなところがあれば指摘してくれ。あぁ,知り合いを助けると思って嘘をつくのは止めてくれよ」


 私の言葉にコレルは頭を抱えて項垂れた。

 そして顔を上げて,宣言した。


「クローノ様。私は嘘をつかないことを誓います」


 コレルの反応からして,トルペとは相当仲がいい気がする。

 まぁ,話を聞いてからにしよう。


「それではトルペと言ったか...お前の事情を話してくれ。もう一度言っておくが嘘をついたらどうなるか覚えて話してね」


 私が話を促すとトルペは事情を話しだした。


「私はイール陥落後,ルーボ様に着いていきました。カンメッロに逃げ込んだ後,ルーボ様は数日間,部屋に引き籠られたのです。その後部屋から出てくると,「裏切り者を処断しなければならない」とルーボ様が言いまして,我々は止めたのですが,カンメッロからイールへ向かわれまして,我々兵士もついていきました。もちろん...」


「ちょ...ちょっと待て」


 カバリーロがトルペの話を止めた。


「コレル,こいつがルーボ様に着いていったのは本当か?」


「は...はい」


 カバリーロが話を止めたせいで部屋がシーンとしてしまった。

 というか今とんでもないこと聞いちゃった気がするんだけど。


「あの...聞きたくないんだけど...ルーボって今...」


「ルーボ様とルーボ様に付き従った兵士は牢獄に捉えられております」


「!!?」


「ちなみに兵士たちは家族を人質に取られて強制労働を課されて,家族がイールにいない人は...うぅ...」


 トルペは何かを思い出し泣き出した。

 その何かについて,私たちはなんとなく察してしまった。

 つまり,その兵士たちは最悪の状況を迎えてしまったのだろう。


「殺された人がいるのか...グリードに」


 カバリーロがそう言うとトルペは首を縦に振った。


「グリード...許さん」


 カバリーロは元兵士長だ。

 自分の部下だった人を殺されて怒りを爆発させ,顔が凄いことになっている。


「伝令さん,この人は嘘をついたりする人?」


「伝令兵の仲間として親しい間柄ですが,トルペが嘘をつくところは見たことがありません。残念ながら...」


 先程,トルペに嘘つくなって言っておきながら,今の話が嘘であって欲しかったと言う矛盾。

 ここは日本とは違う,乱世の世界だ。

 私はちゃんと認識していると思っていた。

 でも私は耐えられなかった。

 自分の生まれた街で,自分の故郷で虐殺が起こったことを。

 心がグシャグシャになる。


「トルペ,君が嘘をついていない可能性は高いだろう。とりあえず君のことについて話そう」


 心がグシャグシャなのに何故か私の口から出た言葉は冷静だった。

 私は何を言っているんだろう。


「出来ることを一つひとつ進めていこう。これ以上被害を増やさないために」


 私がそう言ったためか,カバリーロも冷静さを取り戻し,トルペの説明が再開された。


「我々はもちろんイールへ行くことを止めたのですが,ルーボ様は止まらずイールへ突撃されました。というのもルーボ様には秘策がありまた。それが街の外から屋敷の中へ行ける隠し通路です。ルーボ様の指示に従い兵士たちはその通路からイールに入って行きました。しかし,何故か隠し通路のことがバレていたようで,あっという間に敵の兵士達に囲まれたんです。あとは先ほど話したように捕らえられ...うぅ...」


 うーん...トルペが言っていることはたぶん本当なんだろうけど,無罪とはっきりわかる証拠が無いんだよね。

 グリードに様付けしたというのが疑われる原因になってるけど,それも脅されているっぽいしなぁ。


「トルペ,君のことは信じたい。でも証拠がない」


 日本なら疑わしきは罰せずなんだけど,私の安全を第一に考えてくれるカバリーロはそれを許してくれなさそうだしねぇ。


「あぁ,そういえばグリード()からこの手紙を渡せと言われてました」


 ...こいつ,ただただドジな奴なんだろうな。

 この流れでよく...

 コレルが頭を抱えているし,カバリーロが...ヤバいよ。


「とりあえず読んでよ」


 カバリーロが怒りを再び爆発させようとしていたので話を逸らすために手紙を読ませることにした。


「クローノ君へ。ルーボは五日後に処刑だ。そして,その次はパスを攻めることを言っておく。それまでに君が一人でイールにきて降伏を宣言すれば,パスを襲うのは止め,そして,ルーボの処刑も取りやめよう。もし君が来なかったり,誰かを連れてきたりしたら,今度はパスがイールと同じ目に合うと思え。賢い君ならどうすればいいか分かるだろう。グリード先生より」


 何て手紙をよこしてくれたんだ。

 ...ヤバい。

 部屋の空気がもっとヤバくなったよ

 どうすんの,これ。


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また,感想等もお待ちしております。感想を頂けると大変うれしいです。

皆様,お読みいただきありがとうございます。

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