紙のお金
そんなこんなで始まりましたおままごと。
私はアンジュの家の飼い犬。
「わんわん」
「よしよし,クロ君。良い子良い子だね~」
「わんわん」
「はい,餌だよ。食べていいよ」
「わんわん...って何で犬やねん!!」
おままごとの犬ってもっと人数が多いときの役職じゃない?
そんなことを思っていると...
「クロ君,犬は喋っちゃいけないんだよ」
「ご...ごめん」
「だから喋っちゃダメ!!」
そこまで厳密にやらなくてもいいのになぁ。
まぁ,釣りとか私の趣味に付き合わせることも結構あるので,アンジュのやりたいようにやるか。
「わんわん」
「ん,良い子良い子」
現世だけ考えれば自分より年上だけど,前世を入れれば圧倒的に年下の少女に頭を撫でられるってなんか不思議な感じだなぁ。
「さぁ,散歩に行くよ」
「わん」
これはおままごとなのだろうか。
そんなことを考えていたけれど,とりあえず散歩らしいのでハイハイの状態でアンジュについていく。
ハイハイを私がしているの見られたら拙いんじゃないかって気がしたけど,偶然か誰にも会わなかった。
そして,いろんな部屋をめぐり,カマリエラがいる部屋にたどり着いたのである。
「お母さん...じゃなくて店員さん。ペットフードをください」
「わんわん」
カマリエラは休憩していたのだろう。
しかし,こちらの様子を見て急に立ちあがった。
「貴方たち何やってるの」
「おままごと」
「わんわん」
「おままごとで犬って...」
そう呟きながらカマリエラは額に手を当てた。
あれ,もしかしてアンジュが怒られるやつ。
やばいよやばいよ。
貴族の私を犬にしたのはやっぱり拙かったのかな。
「店員さん。ペットフード下さい」
「わんわん」
アンジュはカマリエラが怒っていることに気が付いてないんだろう。
「お金はあるんですね」
「お金...」
子供の私たちが常日頃,お金を持ってないのを知っているはずなのに,こんなことを言うなんて,カマリエラは怒りを通り越して呆れているんだろう。
アンジュがお金を持っているはずがないので,このままお説教モードに入って行くかなと思ったそのとき。
アンジュが紙を丸く切り取り始めた。
そして...
「はい,これお金」
アンジュは紙をお金の代用品としてカマリエラに渡そうとしたのである。
カマリエラは何とも言えない表情をしていた。
「お金っていうのは鉄貨や銅貨とかなの。そもそも紙は貴重なのよ。あなたたちの勉強用に渡しているんだから,遊びで使うのは止めなさい」
もう何から怒っていいか分からなくなったのか複雑な表情をしていたカマリエラだったけれど,とりあえず紙の無駄遣いをやめさせようと思ったのだろう。
というのも紙の生産は西方地方のガルブ侯爵家の秘匿技術とされて, 確かにこの世界では紙はバカ高いのだ。
まぁ,家は王国でも大きい方の貴族なので紙は普段使いできるほどにはあるんだけど。
それにしても紙のお金か。
前世以来見たことないなぁ...
「それじゃん!!紙をお金にすればいいじゃん!!」
パスの問題点を解決する方法を見つけて大喜びで駆け出してく私であった。
「クロ君,犬は喋っちゃいけないんだよ!!」
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