釣り道具
釣りをしようとなったものの,釣りってどうやるんだろう。
なんてったって,私,前世でも釣りをやったことないんだよね。
釣り竿と針と餌がいることは分かるけど,それ以外は何をしていいのやら。
「カマリエラ,釣りやりたい」
困ったときはカマリエラに聞く。
これが一番なんだよね。
「釣りですか?」
「クロ君がお魚食べたいから,今日は釣りをするの」
「釣りの道具とかってある?」
「道具は竹と糸と針があればいいのですが,漁民がいないので針が無いと思います。ちょっと待っててください」
そう言って,カマリエラは部屋から出ていった。
多分,針の代わりになるものを探してくれるのだと思う。
魚が食べたいという欲望丸出しな気持ちで釣りをしたいと言ってしまって,なんか申し訳ない気がする。
十分ぐらいアンジュとしりとりをして遊んでいると一人の男を連れてカマリエラが帰ってきた。
「どうも,クローノ様」
急にちょっとポッチャリぎみの兵士が部屋に入ってきたので,私とアンジュは「?」となる。
というか文官とかお世話係は話す機会があるし,街づくりの作業員は私が指示だしとかで話しかけるので,これらの人は顔も名前も知ってるけど,兵隊さんって今まであんまり関わりが無かったので...
「この人,誰?」
無意識に失礼なこと言ってしまった。
「この人は兵士のズレルです」
カマリエラが答えてくれた。
あれ,なんかカマリエラ怒ってない。
もしかして,兵隊さんの名前を憶えてなかったから?
あ...ズレルはだいぶ落ち込んでる。
なんというか,心の中で「ごめんなさい」と言っておく。
貴族を謝らせたってことになったら,別の問題が発生してしまうし。
「ズレルが釣りを教えてくれるの?」
話題を逸らそうとして言ったのだが,さらにカマリエラの表情が険しくなっていく。
地雷でも踏んでしまったんだろうか。
「違います!!ズレルが針を釣り道具を持っていたから,連れてきただけです!!」
「あぁ,釣り道具を持っているのね...?なんで兵士なのに釣り道具なんて持ってるの?」
そこからカマリエラの事情説明が始まった。
結果を言うとカマリエラは私に怒っていたのではなく,ズレルに怒っていたようで。
というのも,支給された食料では足りないからと,ズレルは休み時間を使って釣りをしていたようだ。
誤解のないように説明しておくと,兵隊さんたちへの食糧は十分多く支給されている。
少しポッチャリのズレルにとっては支給される食事が足りなかったということらしい。
領都では街中で買い食いをしていたけど,パスの街では店が無いけど海があるからと釣り道具を持参してたようだ。
「ふーん,なるほどねぇ。でもなんでカマリエラはそんなに怒っているの。休み時間は自由時間でしょ」
別に休み時間に何をしようが勝手だと思うんだけど。
そんな風に思っていたら...
「僕,団長の頃からカバリーロさんには痩せるように命令されたんです。だから買い食いとか禁止されてて,でもつい食べてしまって...で買い食いができないようにと,パスに連れてこられたんです」
ズレルが怒られている理由がなんとなく分かった。
「釣りをしていることはさすがにバレないと思ったのに,カマリエラさんが針を探してることを聞いて,うっかり釣り道具を持ってきたことを言ってしまったんです」
「うっかりですか?」
「ひっ!!」
カマリエラがズレルを睨んでいる。
超美人のカマリエラが般若の顔になってて,不思議だ。
どうやったらこんなにも顔が変わるんだろう。
正直,怖い。
「まぁ,何はともあれ釣り道具を貸してくれるってことだよね」
「違います,クローノ様。彼はこの釣り道具をプレゼントしてくれるそうですよ」
「えっ!!」
「なんですか,ズレル」
「いえ...なんでもないです」
あー,これはヤバいね。
とてつもない空気になってるんで,目の前に出された釣り道具を持って,部屋から出ていきたいなぁ。
というかそもそも,ここ私の部屋ですし,お説教は別の部屋でお願いしたい。
そんなことを考えていると...
「ありがとう,ズレルさん。クロ君,海へ行こう!!」
アンジュは天使なのかもしれない。
アンジュは天使なのかもしれない。
大事なこと?なので二回言っておきました。
だって,あの物凄い空気を一変させたんだから。
ということで,アンジュの言葉によって,私たちは海へ向かうことになった。
ちなみにカマリエラは私たちについてきてくれるので,ズレルが「解放されるんだ」と安心していたけど,すぐにカバリーロがきて,回収されてたんだよね。
回収されていくときのズレルの顔は...
頑張れ,ズレル。
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