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かぐら骨董店の祓い屋は弓を引く  作者: 野林緑里
奪われた瞳と放たれた銃弾
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再会①

 愛美が何か喚きながら、55階の壁を言霊でぶっ壊しているのを見送りながら、朝矢たちを乗せた山男は壁を伝いながら最上階へと走る。


「うわうわ」


「あはははは」


「うるせえ」


 背中の上では、とにかく悲鳴をあげるもの。無邪気に笑うもの。苛立っているもの。

 三者三様の反応を示している。

 そんなこと気にしている余裕もなく、最上階の最も霧の濃い場所へと向かっていく。


 最上階は窓ガラスばかりで外からも中が見えてくる。

 だれかいる様子はない。


「ついたぞ」


「ああ」


 ようやく動きがとまったことに弦音はほっとする。


「ここは結界が弱いようだ。突き破る」


「ああ」


 朝矢の合図で山男はビルの中へと飛び込んでいった。

 すり抜けるではなくガラスが粉々に割れる。

 どういうことなのだろうかと弦音は朝矢を見た。


「あとだ」


 朝矢はその一言で片づけた。

 ガラスを突き破り中へ入ると、人の気配は全くない。月明りに照らされてどこまでも続く廊下だけが見えている。

 なにもない。

 けれど、奇妙な気配のみが漂っている。

 気持ち悪い。

 弦音は全身が凍るような思いにとらわれて、思わず口をふさいだ。


「ツンツン。ビビっている場合じゃないよお。いまからラスボス倒しにいくんだよ」


 ラスボス?

 そういうことになっているのか。

 弦音は後悔した。

 なぜこんなところに来てしまったのだろうか。一度家に帰った時にそのままいればよかった。

 なにもかも忘れて、いつものように朝が迎えられたはずではないだろうか。

 しかし、後悔しても仕方がない。


「あれ?なんかあっちでドンパチが聞こえるよ」


 そう言われてみれば、金属音が聞こえてくる。月の光に当たって、きらりと光が見えている。


「いくぞ」


 朝矢が駆け出した。


「あっ有川さん」


 弦音も駆け出そうとしたとき、突然ナツキが弦音の足を引っかけた。


「うわっ」


 そのまま倒れこむ。


「なにするんだよ」


「ごめん。ごめん。ダメだよお。なにも持たないでいくなんて、無駄死にするだけだよ」


「死……」


 とんでもないことをいう子供だ。


「ほらほら、立って、立って」


いわれるがまま立ち上がると、ナツキは手のひらを見せた。


「はい。道具」


「え?」


 なにもないではないか。ただ手のひらをみせているだけだ。


「よーくみてよ。ツンツン」


 そう言われてもう一度ナツキの手を見ると、いつの間にか野球ボールが浮かび上ってきた。


「とって」


「あ……ああ……」


 弦音は野球ボールを受け取る。


「これがとりあえずの君の武器」


「はい?」


 野球ボールが一個。これをどうしろというのだろうか。


「イメージだよ。イメージ。いつもイメージしてよ。ボールを持つイメージしたら、いくらでもボールがでるから、あとは相手向かって投げるだけ」


 ナツキは投げる素振りを見せた。


「簡単だよね。さてといこう。そろそろ闘いがはじまるよ」


 ナツキが駆け出した。

 弦音は手に持ったボールに視線をむけるとすぐに彼らを追いかけた。




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