表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
かぐら骨董店の祓い屋は弓を引く  作者: 野林緑里
奪われた瞳と放たれた銃弾
PR
90/341

人形たちの嘆き②

 エレベータへと滑り込むと、下へと下がるボタンを押す。即座に稼働し、最上階から下へと降りていく機械音が響いている。

 エレベーターに乗れば安全というわけではない。尚孝たちを追いかけているのは、人ではなく、一般的なは妖怪と呼ばれている存在だった。

 妖怪でまとめられる存在は、霊力の少ない人間には見ることも触れることもできないモノ。しかし、妖怪たちはその気になれば触れることができる。

 ということは、人間に気づかれずに傷つけることさえも可能なのだ。

 しかも彼らは人間の作ったものを容易にすり抜けてくれる。

 霊力があり視ることのできる人間ならば、回避できるのだろうか、あいにく尚孝も彼の腕を掴んで怯えている洋子もそれがない。

 ただなにかが来るということだけは感じていた。尚孝の手には銃が握られていた。

 捕まったときには持っていなかった。

 月草峰子に取り上げられていたのだ。それを渡したのはユキと呼ばれた男とともにいた少女だった。


 ユキが化け物カマキリと戦っている最中、少女が尚孝の傷口に触れた。

 すると、背中にボアっと熱が帯びていくのを感じた。同時に痛みが消え、血が止まる。


「応急処置よ。これで痛みは治まっているわ。けど、傷がふさがっているわけじゃない」


「君たちは・・・・・」


 息が楽になっている。

 尚孝が触れ返ると、最初に彼女の手に拳銃が握られていることに気づいた。


「取り戻してきたの。気休めだろうけど、持っていないよりましでしょ」


 尚孝は少女を見る。彼女は微笑む。

 いったい彼女はなにを考えているのだろうか。

 彼女たちは決して味方というわけではない。

 かといって敵とは違う。

 組織に属しながらも、組織とはかけ離れた場所で暗躍しているのではないか。


 尚孝が猜疑の眼を向ける。


「疑う暇はないわよ。私たちはあなたを助ける。早く逃げて……。彼らがまるまで時間を稼ぐわ」


 信頼していいのかはわからなかった。


 けれど、いま尚孝がやるべきことは、洋子を逃がすことだ。


 尚孝は拳銃を受けとると洋子の手を握り走り出した。





 そして、いま現在に至る。


 エレベーターの数字が小さくなっていく。


 最初は95の数字だったのがすでに50まで下がっている。一階まであと半分ほど。

 なにも起こらずに無事つけることを祈るしかない。

 尚孝たちは数字を見ながら息を飲む。


 49、48、47、46、45、44


 44


 44


 何度もその数字が点灯し始める。


 ピーン


 突然エレベータの扉が開いた。


「刑事さん」


 洋子が彼にしがみつく。

 扉の向こう側は暗闇。

 ただの闇が広がっている。

 尚孝はすぐに打てるように拳銃を握り締めたまま、開閉ボタンを押した。

 閉まらない。

 何度押しても閉まる気配はない。


「くそっ」


 尚孝は舌打ちをする。


「刑事さん」


 洋子が不安な顔で尚孝をみる。


『逃がさない……。さあ、地獄へどうぞ』


 どこからかアナウンスの声。

 峰子の声だと気づいた瞬間、尚孝と洋子は誰かに背中を押されて、エレベーターから強引に押し出された。

 振り返るとすでにエレベータの扉がしまり。下へと降りていく。

 尚孝はボタンを押すがまったく反応がない。


「刑事さん?」


『ふふふ。逃がさないわ。踊りなさい。血のダンスを……』


 女の声が不気味に響く。

 

 尚孝は拳銃を構え、注意深く周囲を見回した。

 そこは闇。

 どこまでも闇が続いているにすぎなかった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ